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エレカシとハナウタとわたし(後編)

わたしが二十数年来愛してやまないロックバンドが、エレファントカシマシです。今年デビュー35周年を迎えました。ということで、昨日のつづきです。

最初に泣いたのは、観客の歓声があがった瞬間でした。
ソロ歌手としての宮本浩次コンサートは、まるまる声が上げられなかった期間だったから、どんなに待ち望んだことか、と。
それは、これまでにない感情で、それだけで価値あるライブでした。

とくに印象にのこった

デビュー35周年の厳選した名曲のオンパレードで、どれもこれも思いが強いですが、いまの自分に特にリンクした曲をピックアップします。

『昔の侍』(1997)

宮本さんの書く日本語の歌詞の美しさを、あらためて感じました。

ああ 紅き空 登り来る朝日よ
ああ さよならさ
我らが青き日々よ

『昔の侍』歌詞:宮本浩次

先日読書会で『武士道』や『菊と刀』を紹介してもらったこともあって、侍をテーマに歌ったエレカシの名曲あるんだよ、って伝えたくなりました。

『風と共に』(2018)

宮本さんが50歳のときに書いて、NHK「みんなのうた」に使われてうれしかったな、とはご本人のMCから。

聴きながら、当時も涙したことを思い出しました。

傷つくことを恐れて 立ち止まったり逡巡したり
風よ どうか私に 相応しい光へ導いてくれ

『風と共に』歌詞:宮本浩次

エレカシ30周年イヤーの47都道府県ツアーをしてたときに出た曲。いま思うと、迷いながらソロ活動も考えてきた時期と重なっていて、スポットライトに照らされた宮本さんこそが、この曲を体現したんだな、と。

行こう チケットなんかいらない 行き先は自由

いまは自分が勇気をもらえる歌です。

『新しい季節へキミと』(2008)

いつもゲストでストリングスチームが入っていますが、それは2009年4月に行われた「桜の花舞い上がる武道館」コンサートからだった、と振り返っていました。

それを聞いたら、そこにいたことも思い出して、感慨もひとしお。大好きだったこの曲は、自分たちの結婚式のムービーに使用させてもらっていました。ハッキリ言って、ぴったりでしょう?

春夏秋冬彩る光を心に全部集めたら
ここから始まりのグラデーション
新しい季節へキミと

結婚生活14年、初心忘るべからずです。

東京をうたってる

ライブの最中ふと、宮本さんの曲にはいつも東京が感じられることに思い至り、そこに共鳴してる自分がいると気づきました。

エレカシに出会ったきっかけの歌『so many people』の
「高速道路 朝日をあびて ダイナミックな町は」から想像するのは首都高からの眺め以外知らないし、そもそも「ソーメニーピープル」の町は東京でした。

『リッスントゥザミュージック』の「ふたり並んで腰かけていた井の頭公園で」。小学生のときからよく行っていた井の頭公園の、池のほとりのベンチが浮かぶわけです。曲の途中で宮本さんが鳴らす口笛も、公園でのそれのようで、今回もその音色がとても美しくて、不器用な思いを歌う曲に、とてもよく似合います。

『彼女は買い物の帰り道』では、麻生久美子さんのMVが印象的過ぎて、下北沢の今はなき、あの踏み切りとともに、ずっと刻まれているんです。東京を歌ってくれて、本当にありがとうという気持ちです。

ヒット曲『今宵の月のように』で歌われる、「真夏の夜空 ひとり見上げた」や「見慣れてる町の空に 輝く月一つ」が、やっぱり東京のうっすら明るい夜空の月を想像しています。もちろん月だけに、どこの町からも見上げられる普遍性があるのは大前提でね。

東京都北区赤羽の出身のエレカシ。東京を大きく括りはするけど、今回のライブであらためて、エレカシと同時代の東京に生きられて幸せだな、と思ったのでした。

こぶしを突き上げる

腕が筋肉痛です。五十肩を治しておいてよかったと思いました。
そう、自然とこぶしを突き上げてしまうのが、エレカシのライブなのです。ソロの宮本さんとは、やはりちょっと違う、エレカシならではのノリがあります。

宮本さんはライブでいつも観客を「エブリバディ」と呼ぶから、エレカシファンの通称は「エビバデ」になっています。いわゆるファンネームとは違って、自然発生的なところが面白いですよね。

そんなエビバデとともに、自然とこぶしが上がってしまう気持ちよさが、ライブの醍醐味です。
デビューアルバム1曲目の『ファイティングマン』は、ライブでその最たるものでもあるのですが、当時の映像を見るとちょっと印象が違います。

近寄りがたく、独りよがりでもあったと言われたデビュー当時からしたら信じられない光景かもしれません。きっとファンと共に作り上げられ、育っていった曲なのだと思います。
わたしがファンになった2000年当時も、ライブは緊張感あったもんな……下手に声かけると宮本さんに怒られる人が続出するという。人って変われるんだな、って宮本さんから教われます。

人は嬉しいと、自然とガッツポーズになるそうです。きょうのWBC決勝戦でも、選手たちのこぶしが上がる姿、たくさん見ることができましたよね。テレビのこちら側でも上げてました。
このポーズは、大きなプラスの感情によって、アドレナリンを活発にする効果があるそうです。
その逆も然りで、元気を出したかったら、ガッツポーズをすればよい、と聞いたことがあります。

音楽にのって自然と手が上がるだけでなく、エビバデのみんなは曲に合わせてこぶしに力を込めています。そりゃあ元気になるわけですね。

わたしにとって、今年の3月21日のライブは、格別でした。
『ハナウタ』を聴けたことはもちろん、これからの勇気、パワーをもらったことは間違いありませんし、エレカシはいつでも立ち戻りたい拠りどころです。

このライブの模様は5月にWOWOWでオンエア予定です。

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長谷部 美子|行政書士オフィス ハナウタ
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