見出し画像

『お友達人事』ってどうなのよ?って話。

企業の人事ではトップやマネージャーが変わると新任のトップやマネージャーと仲の良い人たちが突如重要なポジションに就くことがあります。実績が豊富な人が就くのであれば皆納得するのでしょうが、ときには以前重用されていた人や他に実績のある人を差し置いて「なぜこの人が?」という人が就任する場合があるため、この現象を「お気に入り人事」とか「お友達人事」と揶揄されることもあります(苦笑)。

「派閥人事」とかもよく聞かれる言葉で(実際のところはどうなのかわからないですが)「トップと同じ大学の出身だから」とか「トップと同じ部門にいた人だから」という話もチラホラ聞くことがあります(苦笑)。

単なる人の好き嫌いで会社の人事が行われているなら公私混同で問題でしょうが、人材起用とはそもそも『トップ(マネージャー)が考える戦略をもっとも適切に遂行してくれる(成功に導いてくれる)人物が起用される』と考えれば、トップと仲の良い人材が起用されるのは必ずしも悪いとはいえないと思います。どんなにスキルがあったとしてもトップとの相性が悪ければ遂行に支障がでかねないので、トップのことを何もかも知り尽くしている人物を起用するというのは理にかなっているというもの。
※相性の悪い人も活かせてこそ人材活用の醍醐味ではありますけどね。
それが外部からの見え方には「自分と仲のいい人ばかりを起用して」という『お友達人事』ととらえられてしまうということなのでしょう。

ただ、その場合は通常よりも高めの成功を収めないと周囲は納得しないでしょうから、ある意味厳しい人選をしてしまったといえるかもしれません。オーガニックな成長程度であれば「別に変える必要なかったんじゃないの?」となってしまうでしょうし、その人選によって業績が下がろうものなら通常以上のバッシングがくることは覚悟した方がいいでしょう。このため『結果』がなによりも重要になってきます。


『お友達人事』は必ずしも悪くはないと思うのですが、その際にはその人材に対して正当な評価ができるか?という点が大事になります。起用した人物が求められる役割を実現できなかった際にどのような対応をされるか、ということは周囲はしっかり見ないといけません。

求められる役割を実行できなかった(期待に応えられなかった)のであればそれは実力不足の人材を起用してしまったということになるので他の人材を起用しなければいけません。ここを関係が深いからといって不問でなぁなぁにしてしまうようであればそれは「好き嫌いで人事を決めた」「実力が関係ないお友達人事だ」と言われても仕方ないでしょう。そしてその人材を起用した自らの責任(任命責任)もしっかりとる。そういったやるべきことをやらなければトップやマネージャーの信頼は落ちていき、社員を統率することはできなくなっていきます。


では、しっかりとした人材起用の理由があれば『お友達人事』を強烈に遂行しても良いのか?先述のように自身及び起用した人材の結果に対する責任をきちんと果たせるならばそれでも良いとは思いますが、注意すべきは(たとえそれが理にかなっていたとしても)『お友達人事』の度が過ぎると、自分とは疎遠な優秀な人材が去っていく可能性があるということは気を付けたいところです。

上の立場に立つ人ほど人からの見られ方というのは大事で「いまのトップとは疎遠だから自分にとってこの居場所は将来性がない」と思われてしまうと優秀な人材は去っていってしまう可能性があります。たとえ自分とは相性が良くなかったり、関わりが薄かったとしても優秀な人材であるならばそれなりのポジションにつけて厚遇する必要はあるでしょう。

そうしなければ上層部の思考が似たような人ばかりが集まって多様性がなくなり組織が硬直化していきます。また、人事権をもつトップやマネージャーに対して意見をいうことが憚られていき、YESマンしか残らなくなるという弊害も起きやすくなります。そうなれば企業は衰退することでしょう。


僕の場合の例をひとつ。
僕が前職で代表になった際に会社の社員構成は「以前からずっと一緒に仕事をしてきた仲間たち」と「代表になってから関係をもった仲間たち」の大きく2種類に分かれていました。個人的には前者の仲間たちは長い期間一緒に苦楽を共にした仲間たちなので阿吽の呼吸で仕事ができる間柄。さきほどの『お友達人事』の観点でいえば、こちらの仲間たちを重用して円滑に業務を遂行することもできたわけですがそれはしませんでした。むしろこれを機会にあえてちょっと距離をおいたところがあります。普通に考えれば、古い付き合いの仲間とばかり会話をしていては新しい仲間たちからすれば正直おもしろくないですよね(苦笑)。

会社の代表というポジションである以上、所属している社員はみな平等であるし、新たに関わりをもった仲間たちのことをまだよくわかっていないので良い人材がいれば起用していきたいという気持ちから新しい仲間たちとの会話を増やしました。そのおかげか退職者もさほど出ずに社員全体のスキルや性格がある程度把握でき、そのうえで会社の方向性を考えて公平に適材適所の人材配置をすることができました。
※その結果、社名変更をしてリスタートするという決断もできました。

上記は『お友達人事』をやらなかったために成功した例になりますが、先述のとおり(僕はやりませんが)『お友達人事』『お気に入り人事』は必ずしも悪いとは思いません。大事なのは『成功するためにどのような選択がベストなのか』ということ。その選択が『お友達人事』なのであればそれは間違いではないと思うのです。ただ、その際には公私混同にならないようにしっかりと成果を見極めることが大事。ここをブラさずにいれれば自信をもって『お友達人事』をやればいいと思います。

いいなと思ったら応援しよう!