『会社の方向性』と『自分のやりたいこと』を合わせる。
昨今、『パーパス』やら『MVV(ミッション/ビジョン/バリュー)』という言葉をよく聞くようになりましたが、これらはいわゆる『その会社の存在意義』であったり『その会社がどこに向かっているか/何を目指しているか』を明文化(宣言)したものですね。
いままでそういったものを設定していなかった企業は「このブームに乗り遅れまい」として突如策定しだしたりしていますが、実際に遂行し続けるのは大変なことです。自分たちで掲げた『旗』を本気で実現するために実行している企業は実際にどれほどの数があるのか?と少々疑問はありますけど、社員からすれば「この会社は見せかけだけの会社なんだな」とわかる指標にもなるので、それはそれで良いのかもと思ったり(苦笑)。
以前と比べると、近年の若い方たちは自分が働く企業を選択する際に、事業内容や待遇の他に『パーパス』『ビジョン』を気にする方が随分多くなったと思います。社会貢献の意識が強くなっている現代では、自らの活動が社会のなにに役立つことに繋がっているのかを意識しだしている人が多くなったということなのでしょう。
思い起こせば、僕の若かりし頃は自分に対しての「仕事の内容」「待遇」くらいしか企業選定の要素は考えていなかったな~と。僕は前の会社(D2C)に入社するまでは小さいWEB制作会社を転々としていたのですが、そういった会社ではそもそも経営理念などありませんでしたし、あったとしてもホームページをみて初めて知るという程度の浸透ぶり。・・とはいえ、僕自身もそんなの気にしたこともなかったので経営理念なんてただのテキストとしてしか見ていませんでした。
しかし、ある程度いろいろなことを経験してきた今の自分が思うに、目の前の仕事や日々の生活のことが中心という成長過程の若者であればそれでも良いと思いますが、ある程度経験を積んで次の自分のキャリアを考える段階や年齢であれば、所属している会社の方向性は気にした方が良いと思います。
※あまり転職を繰り返したくないと思っている方であればなおさら。
自分の経験談になりますが、はじめて会社の『ビジョン』を気にしたのは前職で部長という役職に就いてからだった思います(遅いですよね・・)。マネージャーというのは当然ですが自らの成績ではなく部全体の業績に責任をもつポジションです。その職責を遂行しているうえで、ちょっとした迷路に迷い込んでしまったときがありました。
毎年のように設定される数字の目標に対して、例え達成できたとしても翌年にはさらに上の目標を課されるうえに数字の実績はゼロにリセットされてまた最初から一年間を過ごしていくという繰り返しに「自分はなんのために仕事をしているんだろう?」と思っちゃったんですね。「これだけ実績を積み上げても自分たちにとって何か次につながるモノがあるのか?このサイクルには永遠に終わりがないんじゃないの?」と。
この迷路はマネージャーでなくても現場の方でも迷い込むものだと思います。いま思えばこの迷路は『自分がどの道を進んでいるのかわからない』うえに『自身のゴール設定』がなかったが故に湧き出た思いだったんじゃないかな、と感じます。
この迷路に迷い込んだ時はあたまに『転職』の文字が点灯しだします。
※・・とはいえ、転職したところでなにも解決していないのでまた同じことの繰り返しになると思いますが。
僕の場合はそこで思いとどまれたのはまさに会社のビジョンがあったからでした。当時会社のビジョンとしてすでに『統合デジタルマーケティングパートナーとなる』と掲げられていましたが、事業が部門によって分かれていたり、社員も職能が分かれていることもあってこのビジョンを自分事化できている人は正直少なかったと思います。
※「統合って言われても自分がやっているのは●●事業の●●業務だし」と。
そういう僕も言葉としては認識していたものの、それが自分とどのように関わってくるものなのかが正しく理解できていませんでした。ただ、迷路に迷い込んでしまった自分は転職することを想定しながらも「この会社のビジョンってそもそもどういうことを言っているんだっけ?」「この会社における自分ってどんな役割なんだっけ?」と改めて考えてみることにしました。
そこで出てきた答えは『統合マーケティングパートナーは一部門や一個人でやるものではなく、ひとりひとりの活動はたとえ限定された領域の活動であったとしてもビジョンを体現するための重要なピースであり、社員全員の活動を俯瞰してみると会社全体で統合マーケティングパートナーになっている状態のことを言っている』ということでした。
※もともとこういうことを言っていたんだと思いますが、自分で理解するまでに時間がかかっちゃいました(苦笑)
そしてその中での自分及び自部門の役割は『統合マーケティングパートナーの中の(メディア販売・運用で確立された部門は他にあったので)メディアを除く領域の課題解決方法を企画~実行までできる部隊であり、そこを牽引するのが自分の役割である』と理解しました。
ちょうどその当時、優秀なクリエイターたちが大きな会社から独立していく流れがスタンダードとなっている状況に僕は個人的に課題を感じていました。クリエイターの方たちに話を聞くと独立したくてしたわけではなく、大きな会社のなかで自分の理想の活動をするのに窮屈だと感じることが増えてきたから独立せざるを得なかったという人が多かったため、これは会社と個人の目指す方向性に乖離があるところから生まれている現象なのだなと思いました。ここが改善されればもっとすごい会社ができるのだろうに、と。
上記の課題を踏まえて、会社のビジョンと自分の役割を理解したときにはじめて『会社の方向性』と『自分のやりたいこと』が合致しました。自分はクリエイターの方たちが安心して働き続けられる環境を創る役割になろう。そのために組織を大きくしていく必要があるので定量・定性ともに追い続けよう。そこを自分のGoalとして設定しよう、と。
数字はもちろん大事なのですが、自分たちが何者なのか/なにを成すべきために存在しているのか?がわからずに数字だけを追いかけるのは苦痛でしかないので、まずはそこを大事にしようと。そのうえでどれくらいの規模をやるべきか、どれくらいの影響を出すべきか、という目安が数字なのだという順番で考えるようになってからはモチベーションを持ち直すことができ、その後のD2Cdotにつながっていく使命みたいなものが出来上がりました。
自身が代表となったD2Cdotではさらにモチベーション高く活動することができました。それは自ら考えたビジョンを責任をもって遂行することができる環境になったから、ということが大きいと思います。これは一部門長だったときとは全く異なる感情でした。自分で立てたビジョンであれば、それをどう実現するか考えていくのも自分。成功も失敗もすべて自分で責任をとれるという環境は自分にとってとても相性の良い環境だったと思います。また、それを共に実現していく仲間にも恵まれました。
このときの成功体験があったので「もう一度あのような体験を自分もしたいし、みんなにも体験してもらいたい」と思って、現在のモチベーションの源泉とすることができています。
僕は掲げたパーパスやビジョンに共感した人たちが集まった組織(集合体)は最強だと考えます。そしてパーパス、ビジョンは簡単に実現できるものではなく、継続して追い続けて手に入れるもの。それも数年ではなく数十年かかるもの(もしくは永続的に追い続けるもの)だと思います。だからこそ企業側もコロコロと一度設定したパーパス、ビジョンを変えてはいけないと思うし、真剣にそれを実現するために追い続けてほしいと思います。自らが掲げた『旗』を簡単に変えてしまっては、そこに集った人たちはなにを信じてついていけばいいのかわからなくなってしまいます。
企業側は自分たちが何の目的でどこに向かっているかを宣言し、それに共感してくれる仲間を募り、パーパス・ビジョンを実現するために軸をブラさずに継続し続ける。
働き手側は共感できる企業を選定して入社するものの、企業側が社員ひとりひとりに合わせて軸を寄せてくることはないだろうから、自ら企業の方向性と自分の方向性を合わせるように調整していく。それができないのであればその会社は自分にとっては「合わない会社」である可能性が高いので、転職/独立の選択肢も視野に入れる。
互いにこうした『寄り添い合い』とある程度の『割り切り』をもって付き合うことができれば、幸せな関係で続けられるのではないか、と思います。
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