大事な物
人それぞれ大事な物は違うと思う。
でも、他の人の大事な物も大事に出来たらいいな。って私は思う。
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子供の頃、私は両親からよく怒られて、親は怖い存在だったので、愛されていないと思っていました。
いつも孤独で、私の気持ちを分かってくれるのは、その時私が大事にしていたぬいぐるみだけ。
物心をついた時には、いつも1人でぬいぐるみと色んな会話している子供でした。怒られた事も、寂しいって事も、楽しい事も、何でも話して、いつも一緒。
私の事を何でも知ってる心から信頼出来る大切な唯一の味方。
だからどこへ行く時も一緒。
学校へは連れて行けないけど、家の中では遊ぶ時も食事をする時も寝る時も、家族でお出掛けする時も、どこでも一緒。
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そんなある日、当時大事にしていたキタキツネのぬいぐるみのチロンノップちゃんと一緒に、子供向けの乗り物やトランポリンがあるファミリーパークにお出掛けしました。
たくさん遊んで、喉が渇いて、ベンチに座って水筒を出してお茶を飲みました。
水筒をリュックにしまうと、もう閉園時間だから帰るよと門を出ました。
そこで私は大切なチロンノップちゃんが居ない事に気付いて、両親が持っててくれてるのか聞きましたが居ませんでした。
慌てて記憶を辿ったら、水筒を出す時にベンチに一緒に座らせた事を思い出しました。
『ベンチに置き忘れたかも。』って親に伝えて、ファミリーパークの周りのフェンスをグルっと周ってベンチの見える所に行くと、ベンチの下にコロンと転がっているチロンノップちゃんが見えました。
『チロンノップちゃんが居たよ!!』って親に伝えましたが、もう入れないから「バイバイしなさい。」って言われました。
まだ幼稚園生だった私は泣きました。両親が怖かったので大声で泣く事は出来なかったけど、たくさん泣きました。「それでもあなたが忘れてきたんだから、さよならしなさい。」って。
その時の私には何も出来ず、ただ泣きながら『チロンノップちゃんごめんね。バイバイ』って言いました。
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でもその時の記憶はまだ鮮明に残っていて、大人になった今なら分かります。チロンノップちゃんを助けに行く方法があった事を。
あの時閉園したばかりで、まだスタッフさんは中で閉園の片付けをしていました。受付のスタッフに声を掛ければ、落し物のぬいぐるみくらいは拾いに行かせてくれたと思います。
なのにあの日私は家に帰ってからも、毎晩一緒に抱いて寝るチロンノップちゃんが居なくて泣きながら寝ました。
私が水筒に気を取られていなければ、もっと私がチロンノップちゃんを忘れずにいてあげてたらって何度も自分を責めました。
でも大人の私たちだって、置き忘れる事ありますよね?それを幼稚園生が自分を責めるって悲しいな。って今でも思います。
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その後も小学生の時に、遠くまでお出掛けして遊び疲れて初めて乗った帰りの新幹線で、手に抱いていたネコのぬいぐるみのチッピちゃんを私が寝てしまって、車内に落としてしまった事もありました。
その日の夜もたくさん泣きました。
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それも今になって思えば、駅には落し物センターがありますよね。当時私が住んで居た所からは新幹線が止まる大宮駅も上野駅もそんなに遠くないし、そこが終点なら、その2つの駅に問い合わせればいいだけ。
毎日どこにでも一緒に連れて行くぬいぐるみなのに、どんなに大切なぬいぐるみなのか、両親には全く伝わっていなかったのでしょうか?
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私の娘もぬいぐるみが好きで、ピカチュウのぬいぐるみをすごく大事にしていました。
娘が2歳の頃だったので、ベビーカーの中にピカチュウも一緒に居たのですが、電車を乗り換えて娘を見たらピカチュウが居なくなっていました。
慌てて探しましたが見つからず、今来た道を戻りながら駅の忘れ物センターにも寄りながら、乗り換える前の電車まで戻って探して、ピカチュウを持っていた記憶のある場所まで辿りましたが、結局見つかりませんでした。
娘はずっと『ピカチュウ』って言いながら泣くので、小さい頃の私をどうしても思い出してしまい、出来る限りの事をしたいと私は思いました。
でも色々探したのに他に出来ることはなく、同じピカチュウを買うことにしました。
おもちゃ屋さんやポケモンストアーを周り東京と横浜の店舗にまで探しに行きましたが、同じタイプのピカチュウはもう販売されていませんでした。
それでネットで探したら、ヤフオクにありました。
買った時の約3倍の価格になっていました。もちろん高いとは思いましたが、私はそのくらい出してでも叶えてあげたいと思いました。
親バカと思う人もいるかもしれませんが、私は小さい頃の自分が悲しかった気持ちと同じ想いを娘にもさせたくないと思いました。
何かを大切に思う気持ちは素敵だと思うから。
でももちろん、失くしても簡単に手に入るとは思って欲しくないので、買う前にしっかり娘と話しました。
2歳だったしまだよく分からなかったかもしれないけど『大切なピカチュウを落として泣いた時の悲しい気持ちを忘れないでね。また失くしたらもう買えないかもしれないから、次はもう本当に会えないよ。』って。
送られてくるまでの約1週間、いつも一緒に居たピカチュウが居ない寂しさと、またピカチュウに会えるワクワクと、どっちの気持ちも忘れないように『もうすぐピカチュウに会えるね』って何度も話しました。
届いた時の娘の泣いて喜ぶ笑顔と「ママありがとう♡」の言葉は今でも忘れられません。
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その後も4歳くらいにまたピカチュウを失くしてしまい、また大泣きするのですが、落としたピカチュウでも拾って行ってしまう人がいるのか、やっぱり見つからず購入を検討することに。
でもその時はたまたま同じタイプのピカチュウがリニューアルされて普通に販売されていたので、普通にポケモンストアーで購入出来ました。
そしてそのピカチュウには、もしまた落としても直ぐに気付くようにと鈴を付けました。
8歳になった今でも3代目ピカチュウとは一緒にお出掛けしたり、毎晩一緒に寝ています。
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1つをずっと大事にする気持ちは、小さい頃からちゃんと身に付くし、大事な物を一緒に大事に思う事は素敵な事だと私は思います。
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寂しい想いをした人は、人に寄り添う気持ちも大きくなるのかもしれないな。
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