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終わらないミネストローネのターンが今、はじまる
料理は、どちらかといえばする方だと思う。角煮、天ぷら、唐揚げ、チャーハン。レシピは都度確認するが一通りは作れる。鹿肉をキロで買ってワイン煮にしたり、牛すじをこれまたキロで買ってカレーにしたりする。
さて、鬱との兼ね合いなのかは全く謎なのだが、私には「特定の料理しか作れなくなる時期」が存在する。それがいつ始まるかは分からない。ある日から唐突に、「これ以外の料理を作りたくない」、或いは「この料理が冷蔵庫にないことが耐えられない」モードになってしまうのだ。
最初にこの状態に陥ったときは、ミネストローネだった。ある日何気なくYoutubeを眺めていたら目に留まった動画。20キロ痩せるミネストローネ。簡単そうだし美味しそう。早速材料を買いに行き、作った。なお分量は守っていないし、トマトピューレではなくトマト缶を使った。
野菜とブロックベーコンのうまみがスープに溶け出している。とても美味しい。一回作れば五食分くらいにはなるので、作り置きとしても便利だ。
というわけで五日間ミネストローネを食べた。食べると当然、ミネストローネが無くなる。また何か料理をこさえねばならない。
そこで普段なら違う料理を作るのだが、このときの私は「ミネストローネがなくなるのが嫌」だった。加えて、「違う手順で料理をするのが嫌」でもあった。これについては説明が難しいのだが、何故かミネストローネの作り方が(一回しか作ってないのに)ルーチン化されて、そこから外れるのが嫌になってしまったのだ。
そして私は二回目のミネストローネを作った。
そして私は三回目のミネストローネを作った。
そして私は四回目のミネストローネを作った。
結局、私は四ヶ月ほどミネストローネを作り続けた。その間、飽きるということは全く無かった。冷蔵庫に常にミネストローネがあることで安心感を覚えていた。
ミネストローネ生活を止めた理由はよく覚えていない。ただなんとなく、ふとしたときに別の料理を作り始めていた。
それまでも「五日連続でチャーハン」とか「一週間連続でリゾット」とかはあったが、ここまで長いのは初めてだった。
次はスコーンだった。冬が始まり、スコーンが作りやすい気候になった頃だったと思う。少し前に読んだ漫画にスコーンが出てきたのを思い出して、作中のレシピを参考に焼いた。
これに加えて、十分立ての生クリーム(ジャムが甘いので砂糖は少しで良い)もたっぷり付けて食べた。美味しい。紅茶を合わせると幸せの味がする。
スコーンも一回焼けば数日分になる。そして数日経つと、スコーンが無くなる。すると、やはり「スコーンが無くなるのが嫌」になるのだ。気が付けば次のスコーンを焼いている。
確かスコーンは一、二ヶ月焼き続けた。ジャムはイチゴにしたりラズベリーにしたりと変化したが、スコーン本体はずっと同じレシピだ。不思議と飽きることはなかったが、けれどなんとなく、ある日を境に焼くのを止めた。
そんなスコーンにパウンドケーキが続いた。
これも二ヶ月程度。無くなる度に17cm型で二本焼いていた。具材はチョコを入れたりナッツを入れたり、ドライフルーツをラム酒に漬けたりと色々やった。毎日冷蔵庫を開ければパウンドケーキがある生活、なかなかに良かった。
今年の夏はトマトカレーのターンだった。ポークカレーにトマト缶を一缶入れるのだ。暑い夏にトマトの酸味が嬉しい。カレーは比較的短く、三週間で終わった。
で、今だ。なんとミネストローネに戻ってきてしまった。久々に食べたくなって、作り始めたのが運の尽き(?)、すっかりミネストローネの気持ちになってしまった。まあヘルシーだし野菜は摂れるし、悪いことはなにもないのだが。それに作るべきものが決まっているというのは、結構気楽なものなのだ。これからしばらくは何を作るか考えなくて良い。
いずれにせよ夏の後半戦はミネストローネと共に生きることになりそうだ。
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