かっこいい人の話をします
知っている学問のなかでいちばん好きで興味があったから、哲学科しか受験しなかった。
哲学って形而上のことばっかで現実世界において有用性がないよね〜みたいなこと 言われがちだけど そうですかね?
大学の先生は、哲学の基本たる「常識を疑うこと」こそが生きるうえで役に立つと言っていたけれど、哲学ってべつに常識を疑うことを習慣化するだけのものじゃないしな……
と思っているとき、やはり思い出すのは、内田樹「街場のメディア論」。わたしは、この文章を、高校倫理のテキストで初めて見て、カミュはなんて切実かつ誠実に哲学と向き合った人だったんだ……!と思った。「頻出じゃないから「不条理」「異邦人」のキーワードだけ覚えておけばいいか」程度の存在だった資料集上のカミュが、尊敬の対象になった。そのあと、そこで引用されていた「シーシュポスの神話」を買って、1文目からずがーんと衝撃を受けた。それは、こうだった。
「真に重要な哲学上の問題はひとつしかない。自殺ということだ。」
そ、そうかも、、、!
哲学ってブルジョワジーたちの戯れみたいに思われがちだし、歴史を振り返ってみても、実際にそういう側面はあるのかもしれないと思う。わたしは少なからずそこに負い目を感じていた。けれど、そんななかで、カミュは堂々と、切実に、まっすぐに生きていた。魂のうちの問いを重ねながら。
それは、冒頭での哲学の有用性についての問い、あるいは人文学のすべてにとって、希望になりうるかもしれない。