心の病気になった僕の親友
親友が心の病気になった。
重度の適応障害。
本人が好きだった仕事を辞めざるを得なくなった。
彼は、頑張りすぎるくらいの頑張り屋。
常に周りのことを考え、自分よりもチームを優先し、人に優しく自分に厳しく、誰からも愛される人間だった。
僕が何かに迷ったり、悩んだりした時にいつも真っ先に相談していた人。
その度に、僕の心が全て読めているんじゃないかと思うくらい分かっていて、そのときに欲しい言葉をくれていた。
一緒に前の職場で働いていた時も、楽しいときに一緒に楽しむのは当たり前だが、しんどい時は共に解決策を考えてくれ、影からみんなの背中を支え、僕がへなちょこの時は1番に叱ってくれた人。
そんな彼は自分の挑戦をするために前の職場を辞め、新しく就いた職場でも変わらず皆から愛され、生き生きと仕事をしているように感じていた。
だが、ちょうど僕がキャンパー作りで実家に帰っていたタイミングで、彼のSNSで病気が発症したこと、好きな仕事を辞めたことを知った。
すぐに電話をした。
が、携帯の向こうの声はやせ我慢というものか、なんとか僕に病気の重さ、彼自身が今抱えている不安を感じさせまいと頑張って明るく話そうとしているのが伝わってきた。
「大丈夫だよ!」と何度も言っていたが、大丈夫なわけないやん。
それが声だけで分かってしまうくらいの仲なので、尚更、辛かった。
電話で最後に、「キャンパーすぐに仕上げるから、終わったら宮崎おいで。しばらく一緒にのんびりしようや。」と伝えた。
それからの時間はとにかく彼のことが気がかりで、1日でも早く完成させようと必死だった。
なんとかキャンパーを作り上げ、僕が宮崎に戻った初日に合流した。
久しぶりに会った彼は、キャンパー完成祝いのワインを片手にいつもと変わらない笑顔で歩み寄ってきた。
お、思ったより元気やん。と正直思ったが、それは気心知れた僕と2人きりだったから。
その日にちょうど行ってみたかったイベントがあったので、新しいものを見せたいと思い、彼を連れ出した。が、これは僕の失敗だった。
そこで僕は、彼は病気なんだと初めて実感した。
僕にとっては久しぶりに会う人たちとの楽しい時間でも、彼にとっては初めましてのことばかりで、本人はものすごくアウェーだと感じただろう。
人と話すのが大好きだったはずなのに、表情がみるみる強張っていった。
病気の彼に、さらに心に負担をかけてしまった。
気がつくと彼は会場の外にいた。
申し訳ないことをしてしまった。本当にごめん。
自分の中で反省をした後、とにかく彼の心の赴くままに、好きなときに好きなことをやろうと決めた。
海に入り、山に登り、温泉につかり、映画や本を楽しみ、季節の野菜やフルーツを買って、食べたいものをお腹いっぱい作って食べた。
本人は早寝早起きをしたがっていたが、なかなか最初の頃は寝付きが良くなく、夜中に何度も目が覚めてたらしい。
僕が早朝サーフィンを終えて、家でコーヒーを淹れている時くらいに目が覚めていた。けど、寝坊しても何も責めることはない。
朝ご飯の匂いで起きるなんて、ええ朝やん!!
起きれただけで充分充分。
時たま、お隣に住むおばあちゃんと一緒にランチやコーヒーを楽しんだりもした。
本人はあんまり得意じゃなかったサーフィンも、1人でうねりからテイクオフ出来るまで上手くなった!(これは本当にすごい!)
ロングライドをした後の、彼の嬉しそうな表情は忘れられんなぁ〜。
美味しい海鮮丼を求めて、車ではなく、わざわざ海沿いや山間を走るローカル電車に乗ったりもした。カップルかよ。
1日、1日と僕らは好きなことをとことんやって、日が暮れた頃には疲れ果てて眠りにつく。そんな毎日が過ぎていった。
すると、彼の表情が変わっていった。
来た時にあった顔の強張りや眉間のシワがなくなり、よく笑うようになった。
むしろ病気前よりも笑っているんじゃないのかくらい、くだらないことでバカ笑いした。ちょっとうるさかったかもね。お隣さん、ごめんなさい。
以前のように、僕の相談事に対して的確な助言をくれ、いい具合の力加減で背中を押してくれた。
夜中に目が覚めることはほとんどなくなり、朝までぐっすり眠れるようになった。
彼自身、回復に向かう自分を好きになっているようだった。
ある晩、彼から今後にやりたい事ができたと話してくれた。
それは、同じように心の病気で苦しむ人達に、こんな自分でもここまで回復できる。だから、みんな大丈夫だということを、何かカタチにして伝えたいとのことだった。
彼が歩み始める姿を見て、僕は嬉しかった。本当に。
僕らは昔からよく「人に優しく」するように教えられてきた。
「自分に優しく」していると自分勝手な奴や、わがままな奴と評されるからなのか。無意識に僕も周りの人の気持ちを汲み取ろうとするようになっていた。
だけど、そこばかりに注力し過ぎて自分の気持ちを押し殺さないといけない時があった。
周りばっかり大事にしていると、自分を大事にすることが蔑ろになり、心の声に耳を傾けなくなる。
他人への期待を持ってしまうと、いざ思い通りにならなかった時、せっかくしてあげたのに、というような苛立ちとがっかりした感情が生まれてしまう。
もちろん人に優しくすることはすごく大切なこと。だけど、周りの幸せのために自分の幸せを犠牲にするのは、もうやめていいんじゃないだろうか。
だって、人それぞれ幸せの基準は違う。
若くして事業が成功して好きなものを好きなだけ買えることも幸せだし、家族とコタツに入ってお茶を飲むのも幸せのひとつで、昼寝をたくさんして1日中ゴロゴロしていても幸せだ。
人に優しく、自分にも優しく。
そのために、まずは自分の心を大切にすること。
少し日に焼けた親友は、明日帰る。
この事を気づかせてくれてありがとう。
生きてるだけで、満点やで。
親友が書いた記事です。ぜひご一読ください。
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