吉田孝之
えかきが日々感じたことや、過去の記憶、出会った人の思い出話を徒然に書きつづる。不定期連載の自画像的随筆。
映画音楽ほか
Watercolor on Paper
短編小説集
見ることのパラメーター 第2回を読み返すと、なんだか要領を得ていないので、 書き直すことにした。 ***** さて、道具の話に入る前に、 世の中で開かれているデッサン講座や美大受験のデッサン講習会などでは何が行われているのかをみてみたい。 デッサン講座体験会の初日、期待と不安を胸に教室に入ると、 あなたの席の前には、以下のような物が置かれている。 白くて低い台、その上にコンクリートブロック、そのブロックの上にリンゴが一個。そしてそれらの手前にはワインの空き瓶が転が
高校に入学してすぐ美術部に入った。 新入生では私のほかに男女5、6人が入部した。 美術部に集まった学生のうちの何人かは、 できれば美術大学に行きたいと言った。 芸大、多摩美、武蔵美、造形、女子美。 一年生のころから決めていた人もいれば、 途中から美大を目指す人もいた。 私は中学時代から、絵の塾の先生が卒業したのと同じ美大に行きたいと思い、 石膏デッサンと油絵を始めた。 しかし先生曰く、「いまごろこれじゃあダメだ」。 自分ではそこそこ描けているつもりでいたが、 ビーナスのデッサ
かすかに残っている記憶をたどると、あれはたぶん3、4歳ごろのことだ。 赤いクレヨンでりんごを描いていたら、そばで見ていた母親が、 「もっといろいろな色を使って描くんだよ」 と言った。母親はほかの色を赤いりんごの絵に重ねて描いてみせた。 そうなのか、と幼い自分は言うとおりに別のクレヨンを手に持った。 うろ覚えの記憶はそこまで。 私の絵の出発点には母がいた、と長年思っていた。 以前その思い出を母に話したら、「それはヤイコじゃないの?」という。 赤以外の色を使うことを私に教えてくれ
絵を描きたくなるとき「絵を描きたいのだけれど、なにから始めればいいんですか?」という質問をときどき受ける。そういうとき、たいていの人は漠然と、描きたいものや画材を想定はしている。風景を、花を、人物を、描いてみたい。画材はぼんやりと、水彩、パステル、鉛筆、油絵、アクリルなどのうちどれかにアタリをつけている。このほかに望むのは、「描くきっかけ」くらいだろう。どこかの絵画サークルに入るか、先生について習うか、独学か。 さて、描きたいものを想定してはいるが、その前にみなさん、ある「
職場で仕事をしていると、同僚のM君がやってきて「神社に行きましょう」という。なんのことか分からずに、「彼女でもつくりたいの?」と聞き返した。会社から歩いて3分ほどのところに、縁結びで女性に人気の東京大神宮がある。時計を見ると時刻は2時半。それで気がついた。二人で大神宮に向かう。 境内にはやはり若い女性の姿が多い。本殿に参拝したあと、時刻がくるのを待った。私は一昨年昨年とも3月11日は、社内で腰掛けたまま一人目をつぶって黙祷した。今年もそのつもりでいた。東日本大震災と原発事
木曜日の夜、浜離宮朝日ホールで「高橋悠治ピアノ・リサイタル」を聴く。 この人の演奏を生で聴くのは今回で二度目。最初に聴いたのは新宿ピットインでのライブだった。富樫雅彦の追悼ライブで、山下洋輔などさまざまなジャズミュージシャンが順に演奏した最後のほうに高橋悠治が登場し、その音を聴いて驚いた記憶がある。もちろんジャズ畑の人ではないし、ジャズミュージシャンとは経歴も異なるが、フリーなどいろいろなジャズミュージシャンとのセッションに参加してきた人。浮いていたのではない。彼のプレイは
先日、米国のオバマ大統領がすべてのアメリカ人に向けて、コンピュータープログラミングを推奨するメッセージが公開された。その内容の一部は、以下のようなものだ。 「我が国が最先端をゆく国であり続けたいのであれば、私達の生活を変えてくれるような、ツールや技術を習得した、あなたたちのような若い人が必要なのです。 だから、私はあなたたちにやってほしい! 新しいゲームを買うだけではなく、つくってみよう! 最新のアプリをダウンロードだけではなく、創造してみよう! スマホで遊ぶだけではなく