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フランスの旅(10・11)美しき港町オンフルール、そして古都カーンへ

フランスの旅、10日目の出来事は以前投稿したこのnoteのとおり。

ほかに記述することもないので、11日目の話に移る。

この日は移動日で、2泊したル・アーブルを離れる。外はまた大雨だった。

ル・アーブル駅10時30分発のNomadバス122番線で、オンフルールへ向かう。

122番線のバスに乗る

オンフルールはセーヌ河を挟んでル・アーブルの対岸にある町。美しいノルマンディー橋を渡り、30分ほどで到着した。

ノルマンディー橋を渡る

ぼくは旅行会社時代、海外ツアー情報誌の編集をしていたため、世界各地の主なツアーのざっくりとした概要を把握していた。どんな行程で、どんな街を訪れるのか、ツアーの目玉は何なのか、など。

なかでもフランス・ノルマンディー地方へのツアーは、憧れていた旅のひとつだった。何度か記事でツアーを紹介するなかで、このオンフルールの写真を見て、なんと素晴らしい町なんだろうと思った。そういうわけで、8〜9年前から「いつか訪ねたい」と心に抱いていた。

今夜宿泊するカーン行きのバスは14時13分発だから、このオンフルールで過ごせるのはわずか3時間。早速街の中心部に向かうのだが、どこもかしこも古い石畳で、スーツケースを転がすのがしんどい。バス停の近くでコインロッカーを探すべきだったなと後悔した。

それでも、多数のヨットが停泊する旧港に辿り着くと、何度も写真で見た、あの景色が目の前に広がった。昨日のエトルタ同様、生の迫力はやっぱりすごかった。水辺の向こうに、縦に細長い家々が、一切の隙間をつくらずギュッと肩を寄せ合っている。この風景が、多くの画家を虜にした。

憧れていたオンフルールの風景
旧港の近く。左の小道を進んでいくとブーダン美術館がある

そこから緩やかな登り坂になった小道を進んでいくと、ウジェーヌ・ブーダン美術館に到着した。ブーダンは、印象派の知られざる父である。

まだ「印象派」という言葉が生まれる前、若き日のモネは、ル・アーブルに住んでいた。彼は小さい頃から絵を描くことが好きだった。そして18歳のときに描いた絵が、当時ル・アーブルで活躍していたブーダンの目に留まった。

ブーダン美術館

モネの才能を見出したブーダンは、彼に油絵を教え、オンフルールをはじめ、いろいろな場所へと誘った。徐々に変化は生まれつつあったが、まだ当時は屋外で絵を描くことがあまり一般的ではなかったようだ。しかしブーダンは、自然をよく観察し、外光の中で絵を描くことを教えた。光と大気の描写を得意としたブーダンは、同時代の画家カミーユ・コローから「空の王者」と呼ばれていた。モネも美しい空を描くが、それはブーダンの影響もあるだろう。青年モネにとって最高の師だったに違いない。

ブーダン

ブーダン美術館には、ブーダンのほか、オンフルールにゆかりのある画家たちの絵が展示されていた。正直ブーダンの作品については、ル・アーブルのアンドレ・マルロー美術館の方がよっぽど展示数が多かったし、また質も良かった。

けれどもこの美術館でぼくは、アンリ・ド・サン=デリ(Henri de Saint-Delis)という画家の作品と出会うことができた。

アンリ・ド・サン=デリ

彼の名前で検索しても、日本語のページはほとんど出てこない。そのくらい日本人にとっては馴染みの薄い画家だが、鮮やかかつ、パキッとした絵は観ていて心地良い。印象派のぼやけた筆使いをたくさん観たあとだからなおさらそう感じるのかもしれないけど。記念に彼のポストカードを1枚買った。

アンリ・ド・サン=デリ
アンリ・ド・サン=デリ
アンリ・ド・サン=デリ
美術館の窓からノルマンディー橋が見えた
クールベの絵も素晴らしかった

オンフールは、『ジムノペディ』で有名な作曲家サティの故郷でもあり、ブーダン美術館の近くに「サティの家」があった。残念ながら時間の関係で見学は諦めたが、外観だけ写真を撮った。家の前の通りには音符が描かれていた。

サティの家

ランチは「Il Parasole」というイタリアンレストランでナポリピザを食べた。具材はトマト、アンチョビ、モッツァレラチーズ、オレガノ。シンプルだけどおいしかった。

おいしかったピザ

でも隣の人たちが食べていた、大きな鍋いっぱいのムール貝もおいしそうで、羨ましかった。ベルギーでよく見た料理だ。わかっていたら、あれを食べたかったな。

最後にもう一度、旧港の写真を満足いくまで撮り、オンフルールを後にした。

たくさんのヨットが停泊している

カーン行きのバスに乗り込むと、チケットが機械に反応しないトラブルが起きた。

「ダメ、うまくいかない」
「え、だってちゃんと今朝、カーン行きの切符として買いましたよ」
「反応しないね(「お手上げ」の顔)」

カード式のチケットは料金がプリペイドされていて、いくら入っているのかは機械を通さないとわからない仕組み。でも反応しないからって、また新たに切符を買わなきゃいけないのはおかしい。

ぼくは今朝のレシートを見せて、ちゃんとカーン行きの料金を支払っていることを証明した。そしたら、無事乗せてもらえた。危ないところだった。レシートがなかったら二重に買っていたかもしれない。

バスは1時間でカーンに到着。これまで聞いたこともない街だったが、ノルマンディー地方では東のルーアンに対し、西のカーンと、それくらい主要な都市のようだ。ここからいろんな方面へ電車が出ている。

ノルマンディーの主要都市カーン

雨の中15分ほど歩き、ホテルにチェックイン。小さなホテルで、エレベーターがない。3階の部屋はすなわち日本での4階にあたるから、スーツケースを持って上がるのがしんどかった。部屋に入ってベットに倒れ込んだ。

シンプルなホテルの部屋

もう夕方16時だけど、日が暮れるまでには少し時間があるから散策に出かけた。いちばんの名所であるカーン城の展望台からは、街を一望できた。大きな教会もたくさんあり、立派な街だとわかった。

カーン城
カーン城からの眺め

溜まっていた原稿を書きたかったので、お城近くの「Arbuste Café」というお店へ。ここが良いカフェで、多くのお客さんで賑わっていた。

Arbuste Café

パソコンで作業する学生もいて、そういえばカーンは大学のある街だったなと思い出した。1.9ユーロでおいしいアメリカーノを飲めた。珍しくコーヒー豆も売っていたし、器具もあったから、きっとドリップコーヒーも注文できたのだと思う。メニュー表にあった「Slow Coffee」がそうなのだろうか。4.5ユーロするから、おそらくそうだと思う。

"まともな"アメリカーノ

飲食店で賑わう通りを歩くと、土曜日だからか、多くの人たちがテラス席でビールを飲んでいた。なんだかすごくおいしそうなお店だったから、フラッと入ってみた。そしたら、これぞクラフトビール屋の理想系とも言えるようなパブだった。メニュー表も、ビールサーバーも、たまらない。

クラフトビール好きにはたまらないパブ

フランスのSOIFという会社の「HOPPY ROAD」というペールエールを注文。小さいサイズで4.2ユーロだった。これがとてもおいしかった。

ペールエールで休憩

夕飯は、来る途中に通りかかった「Holy Moly」というハンバーガー屋さんが繁盛していたので、そこへ行ってみることに。さすがにハンバーグの質がバーガーキングとは全然違う。値段は同じだけど、より満足した。でもハンバーガー以上に感動したのは、フライドポテトだった。じゃがいもの味がしっかりと残っていて、人生で食べたフライドポテトでいちばんおいしく感じた。なんでこんなにおいしいんだろうなあ。

ポテトが抜群においしかった

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中村洋太
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