東北一周自転車旅(26)秋田県湯沢市〜山形県新庄市〜天童市
東北一周自転車旅
第26ステージ
秋田県湯沢市→山形県新庄市〜山形県天童市(50km・新庄まで鉄道利用)
今日は山形県の天童へ向かうつもりなのだけど、三連休なのを忘れていて、昨夜慌てて宿をチェックするもビジネスホテルはすべて満室だった。民宿もいっぱいで、「最悪ネットカフェに泊まるしかないかな」と半分諦めかけていた。
しかし今朝、試しにもう一度チェックすると、「ホテルルートイン天童」に空きが出ていた。AgodaやExpediaなどの予約サイトでは相変わらず「満室です」と表示されるのだけど、公式サイトでは空きがあった。当日キャンセルがあったみたいだ。予約サイトからの方が料金は安いのだけど、こういうときは公式サイトが便利なのだと学んだ。宿が取れてひと安心。泊まるところが当日になっても決まっていないというのは、なかなか落ち着かないものだ。
昨晩スーパーで買ったくるみ餅やパンを食べ、朝9時過ぎに宿を出た。今朝も大雨で萎えていると、宿のおばちゃんが車に自転車を積んで駅まで運んでくれることになった。非常にありがたかった。猫と遊んでから出発する。
湯沢駅からJR奥羽本線で、山形県の大石田駅(尾花沢市)まで乗るつもりだった。しかし大石田へ行くには、途中の新庄駅で40分近くも乗り継ぎの電車を待つ必要があるため、時間がもったいなく感じた。「だったら、距離は50kmあるけど新庄駅から天童まで走ってしまおう」と考え、新庄で降りることにした。
駅前で自転車を組み立てていると、アジア系の観光客のおじさんがぼくの作業を興味深そうに見つめていたので、微笑みかけて、「Where are you from?」と聞いた。
「台湾」
「おー! ファンタオ!」と、ぼくは自分と自転車を順に指差しながら言った。
すると台湾人のおじさんは、
「ファンタオ!?」と嬉しそうな表情になった。
ファンタオ(環島)とは、「台湾一周」を意味する言葉である。2017年11月に、ぼくは自転車での台湾一周、つまり「ファンタオ」を達成した。
片言の日本語を話せる添乗員の若いお姉さんが、そのことをおじさんに通訳してくれた。
するとおじさんが添乗員さんに何か言い、添乗員さんがまた通訳してくれた。
「この方は、ファンタオを7回やりました」
「7回も!?」
それはすごい。実際に、自転車に乗っている写真も見せてくれた。それで、ぼくの自転車を興味深そうに眺めていたんだな。
「台北の方ですか?」
「カオシュン(高雄)」
「高雄ですか。ぼく、高雄の鳳山商工でスピーチしましたよ」
自転車で台湾一周している際、鳳山商工という高校で日本語を教える先生からDMが届き、「うちの学校で特別授業をしてくれませんか?」と突然依頼されたのだ。
そのときの写真を見せると、さらに喜んでくれた。そして別れ際に、ファンタオの大先輩と記念撮影。良い出会いだった。
12時ちょうど、「新庄で降りて良かったな」と良い気分でスタートするも、走り始めた途端にものすごい豪雨。
「それでも行くぜ〜!」と意気揚々に出発するが、あまりの雨量にわずか1分で靴の中がグショグショに濡れ、「やっぱり電車で尾花沢まで行けば良かった〜!」と心が折れかけた。こんな雨の中50km走ると思うと絶望的だった。
しかし、数分雨宿りしていると幸いにも雨が上がり、青空も見えた。「今だー!」と再び勢いよく走り出した。
天気は急変しやすく、またいつ土砂降りになるかわからない。一刻も早く天童に着きたかったので、コンビニ休憩は最低限に留め、必死に走り続けた。
平坦なルートだったことも幸いし、2時間半で50kmを駆け抜けた。秋田と湯沢で2日間休んだから、身体のコンディションも良かった。そして「ホテルルートイン天童」に到着すると同時に、再び土砂降りになった。ギリギリセーフ。これは気分が良かった。
今年7月に八ヶ岳に登るために買ったミズノのレインウェアも大活躍している。あの登山がなかったら多分買っていなかったから、「すべてはつながっているな」と実感する。
チェックインしてから大浴場で汗を流し、洗濯もした。まだ日が暮れるまでには時間があるから、少し観光することに。
天童は温泉街で、ホテル周辺には温泉旅館がたくさんあった。そして将棋の街でもある。将棋の駒の生産量で長年日本一だからだ。市街地には「ホテル王将」など、将棋関係の名前が多い。また、様々な看板や標識が将棋の駒の形をしていておもしろい。
天童駅に行くと、駅の一階は「将棋交流室」と「将棋資料館」になっていた。さすがである。
仙台でお茶をした高校の後輩はづきちゃんから、「天童の『腰掛庵』というお店のわらび餅が、とろけるようにおいしいです。もし機会があれば寄って召し上がってみてください!」と連絡をもらったので、その腰掛庵に行ってみた。
しかし、店の前には「本日完売」の看板が。マジか・・・。その場に立ち尽くしてガッカリしていると、中から店員さんが出てきて「すみません、今日は売り切れてしまって〜」とわざわざ言いに来てくれた。
「明日は何時からやっていますか?」
「朝の9時半です。もしよろしければ、お取り置きしましょうか?」
「本当ですか? どうしてもわらび餅が食べてみたくて」
「ありがとうございます。よろしければ、中にお入りください」
と店に入れてくれた。すると、わらび餅以外にもいくつか商品があり、どれもおいしそうだった。「柚子わらび」と季節限定の「栗名月」も併せて取り置きしてもらった。
「じゃあ明日10時頃にまた来ます」と帰ろうとすると、「これ、『わらびまんじゅう』なんですが、ひとつ残っていたので良かったらお召し上がりください」とプレゼントしてくれた。ツイてる。
「本日完売」と見て、すぐに立ち去らなくて良かった。保証はしないけど、そういうときはしばらくその場で呆然としていると良いことがあるかもしれない。
さらに、その店の裏手にある「舞鶴山」に登った。傾斜が急で、自転車ではかなり大変だったけど、頑張って登った。
そこには展望台と、天童名物「人間将棋」の舞台があった。毎年4月に開催される「天童桜まつり」では、この大きな盤上で、鎧甲に身を包んだ武者たちが将棋の駒に扮し、プロ棋士が対局する。
夕食は、ホテル近くの「ABC食堂」にて、ロースかつ&生姜焼き定食。ボリュームがあっておいしかった。
その後は天童のスタバで日記を書いていた。この旅も終わりが近づいてきた。
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