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より良い人生のために

無意識にスマホをチェックする癖、そしてそのたびに、各種SNSを順繰りに開いてしまう癖に、いい加減嫌気が差してきた。

最近、全然本が読めていない。新しい本を買ったり、図書館で借りてきたりはよくしているのに、ほとんど読めずに返却することが増えた。『天才たちの日課』という本も、返却日まで全然読めずにいた。返す直前、「結局どんな本だったんだろう?」とパラパラっとめくったときに、村上春樹の習慣について紹介されている2ページがあった。

長編小説を書いているとき、村上は午前四時に起き、五、六時間ぶっとおしで仕事をする。午後はランニングをするか、水泳をするかして(両方するときもある)、雑用を片づけ、本を読んで音楽をきき、九時に寝る。「この日課を毎日、変えることなく繰り返します」二〇〇四年の『パリス・レビュー』で村上はそう語っている。「繰り返すこと自体が重要になってくるんです。一種の催眠状態というか、自分に催眠術をかけて、より深い精神状態にもっていく」

村上によると、長編小説を仕上げるのに必要な期間ずっとそれを続けるには、精神的な鍛練だけでは足りないという。 「体力が、芸術的感性と同じくらい必要です」。村上は一九八一年にプロの作家としてデビューした。それまで東京で数年間、小さなジャズクラブを経営していた村上は、そのとき初めて、作家らしくすわってばかりの生活をしていると、急激に体重が増えることに気づいた。また、当時は一日にタバコを六十本も吸っていた。そこでまもなく生活習慣を根本的に変えることを決意した。妻とともに田舎へ引越して、タバコはやめ、酒の量も減らし、野菜と魚中心の食事にした。毎日のランニングも始め、それは二十五年以上続いている。

みずから作りあげたこの習慣の唯一の欠点は、二〇〇八年に本人があるエッセイのなかで認めているように、人づきあいが悪くなることだ。「何度も誘いを断っていると、人は気を悪くする」と村上は書いている。しかし、自分の人生で欠かすことのできない関係は、読者との関係だと彼は考えた。「読者は僕がどんなライフスタイルを選ぼうが気にしない。僕の新しい作品が前の作品よりよくなっているかぎりは。だったらそれが、作家としての僕の義務であり、もっとも優先すべき課題だろう」

『天才たちの日課』より

ちくしょう! 素晴らし過ぎてぐうの音もでない。とくに最後の言葉が響いた。

「読者は僕がどんなライフスタイルを選ぼうが気にしない。僕の新しい作品が前の作品よりよくなっているかぎりは。だったらそれが、作家としての僕の義務であり、もっとも優先すべき課題だろう」

例えばぼくがXでタイムラインを眺めたり、誰かとささやかなやりとりをしたり、トレンドをチェックしたりしている時間は、ぼくの創作にとって不可欠なものだろうか? そんなことはないだろう。むしろその時間があったら、もっと本を読んだり、何かきちんとした文章を書いたりした方が良いのではないか。とびきりの五感を働かせよう。生活のなかに。2024年があっという間に(ほぼ)終わってしまったように、人生もあっという間に終わってしまう。死ぬ間際に、「ずっとSNSを眺めていた人生でした」なんて振り返りたくない。

年末年始は、習慣を改めるのに良い時期だ。ぼくは今朝、スマホからXとFacebookとnoteのアプリを削除した。いずれもPCでチェックすればいい。その方がまだネットに接続している時間をカットできるだろう。インスタだけはまだ残してあるけど、しばらく様子見。もしかしたら削除したアプリもまたダウンロードしちゃうかもしれないけど、何もしないよりは、試してみる方がいい。とにかく、物理的にも精神的にも、マクロ的にもミクロ的にも、動き続けてみよう。変化は動くことから始まる。より良い人生のために。

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中村洋太
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