東北一周自転車旅(2)埼玉県草加市→栃木県宇都宮市〜那須塩原市
東北一周自転車旅
第2ステージ
埼玉県草加市→栃木県宇都宮市〜那須塩原市(56km)
朝7時に起きたはいいものの、あまりの筋肉痛で驚いた。肩や首、足、あとは普段あまり使わない腰まわりの筋肉がジンジンしている。昨日走り終えたときは余裕だなと思ったけど、やっぱり疲れていたようだ。
宿で朝食を取り、チェックアウト。荷物をフロントに預けて、今朝は草加の古谷施術院で身体のメンテナンスをしてもらった。このために草加に泊まったのである。いつもはもちろん電車で行くのだけど、今回は時間的な余裕がなかったから、もう自転車で草加へ行って、そのまま旅をスタートさせてしまうことにした。
今日もいつものように古谷先生と副院長の勝俣さんに入念にケアをしていただいた。先日ブダペストで世界陸上が開催されたが、勝俣さんは2名の選手のトレーナーとしてブダペストへ行っていた。現地での裏話もおもしろかったし、事前に伝えていた観光や乗り継ぎ時のアドバイスが少し役に立ったそうで良かった。
治療後、勝俣さんが旅のご支援までしてくださった。本当にありがとうございます!
今日はまず、草加から宇都宮まで輪行する。つまり自転車を分解して、袋に入れて、電車に乗るのだ。久しぶりだからうまく作業できるか不安だったけど、なんとか無事、電車に乗れた。東北では青森の下北半島を除いて基本的には自分の足で行きたいけど、天候やタイムリミットのこともあるので、状況を見ながら必要に応じて輪行したいと思っている。
車内でホッとしてTwitterを開くと、以前ぼくの講義(トラベルライター向けの)を受講してくださったユミユミさんからDMが届いていた。なんとこの近くにお住まいだそうで、「わが家の辺りを今日通過するのかな…と思い、応援したくて支援を送らせていただきました。子どもたちにも、中村さんみたいな素敵な大人の姿をどんどん見せていきたいなと思っています。よい旅になりますように。応援しています」とあった。自転車で下の道を走っていたら、直接ピンポンして御礼を伝えに行きたかった。お子さんが描いた素敵な絵も送ってくれた。ありがとうございました!
宇都宮線の車内では、朝ドラ「らんまん」を3話分一気見した。
13時前に宇都宮駅に着き、自転車を組み立てたあと、いつも行くスタバで仲良くなった岸本さん(お客さん)におすすめしていただいた「来らっせ」でランチ。やはり宇都宮といえば餃子。ここは名店の餃子を一度に味わえるフードコートのような仕組みになっている。以下を注文した。
「さつき」の青しそ餃子 450円
「宇都宮みんみん」の水餃子 360円
「香蘭」の焼餃子 360円
ライス大 230円
それぞれ個性があっておもしろかった。香蘭の餃子は割と好みだった。6個ずつあったから、気付けば18個。意外と食べられるものだな。草加の勝俣さんは「餃子は30個くらい普通に食べる」と言っていたけど、それは流石に食べ過ぎだと思う笑 しかもラーメンとセットで。無理無理。大食いの世界だ。
宇都宮餃子を満喫し、14時半に自転車旅スタート。随分出発が遅くなってしまい、自業自得だけど焦る。何せ今日は昨日よりも長い56kmの道のり。坂がないことを願う。
まずは63号線で北上。途中から東北新幹線のレールに沿って、真下の道を走るルートだった。やがて鬼怒川を渡り、国道4号線に入る。
日陰が全然ないので、暑さがキツかった。熱中症に気をつけないと。さらに長めの上り坂では左の前ももがつってしまった。まだこんな序の口程度の坂で足がつるとは、なんという衰えだ。トレーニングも何もしていないから仕方ないけど、かなりショックだった。明後日には大きな峠が控えているけど、大丈夫だろうか。
冷たい飲み物を飲みたいけど、なかなかコンビニがなかった。ようやく見つけたローソンで900mlのポカリスウェットを買ったら、すぐに一気飲みしてしまって自分でもビックリした。900mlの一気飲みはよっぽどのことだ。半分飲んで、半分タンブラーに入れるつもりだったのに。それだけ脱水に近いことが起きていたのかもしれない。ボトルに移し替えるため、同じものをもう一本買った。
また、国道4号線にも苦しめられた。主要道路だからもっと快適に走れると思っていたけど、片側1車線が多いうえ道幅はかなり狭く、さらに大型トレーラーがひっきりなしにスレスレを追い越していくから、もう何も考える余裕がない。事故に遭わないよう、ただひたすらハンドルに集中する。
それでも、目的地の那須塩原市まで、何も考えずに国道4号線をまっすぐ行けばいいという意味では楽だった。自転車旅をしていると、ときには途中で何度もスマホで道を確認しながらじゃないと行けないときもあり、それはかなり面倒なのだ。下手にショートカットしようとして複雑な道に入ると、逆に時間がかかる。必ずしも最短距離のルートが最も早く行ける道とは限らない。地図を見ながら、頭の中で色々な計算をする。
那須塩原市に突入。残りは15kmほど。昨日とは比べ物にならないくらい疲労困憊で、「自転車旅ってこんなにキツかったっけ?」と何度も思った。
ようやく18時手前にゴールの黒磯駅に到着。今夜はこの近くの「ホテルトップス」に宿泊。
シャワーを浴びて、19時に黒磯駅前で中田達大さんと合流した。
ぼくは2020年に「ライターコンサル」というライター育成事業を新たに始め、この3年間で128名の駆け出しライターさんに1対1で指導をしてきた。コンサルや添削を通して、業界で活躍する素敵なライターさんを育てていくという活動だ。
中田さんは、そのライターコンサルの生徒さんであり、純粋な想いを持った素敵な文章の書き手である。2年ほど前に、彼の書いたインタビュー記事を何度か添削するなかで、率直に良い方だなと思った。同時に、ご夫婦で那須塩原に移住されたことも聞いていたから、いつか行ってみたいなと思っていた。
いつもはオンラインでのやりとりだったけど、今日初めてお会いすることができた。
まず黒磯駅の隣にドーンと建つ「那須塩原市図書館 みるる」が気になった。「この感じ、もしや武雄図書館に代表されるTSUTAYAが運営する図書館か!?」と思っていたが、中田さん曰くTSUTAYAとは全然関係ないそうだ。新卒でTSUTAYAを運営するカルチュア・コンビニエンス・クラブに入社し、書店員経験もある中田さんが言うのだから間違いないだろう。ただ、この図書館は有名なブックディレクターの幅允孝さんが関わっていて、各所に散りばめられた「言葉の彫刻」をはじめ、実に素敵な空間になっている。
中田さんが移住先を決めるうえで、この「みるる」が大きな決め手になったという。黒磯での生活のイメージがぱっと広がり、「ここなら住める」と感じたそうだ。夜の館内には高校生がたくさんいて、静かに自習していた。羨ましい環境だなあ。
夕食は、中田さんおすすめの「カフェ・ド・グラン・ボワ」にて。大正時代に旧黒磯銀行として建設された石造りの建物を利用したカフェで、国の有形文化遺産に登録されているそうだ。まかないから生まれ、30年以上愛されてきたという謎の「グランボワライス」を注文。しそバターライスの上に、茄子とひき肉の和風あんかけをかけたもので、これが絶品だった。おいしかったなあ。
中田さんも世界一周経験があるほどの旅好きだから、ごはんを食べながら旅の話で盛り上がった。彼も今月末から、久しぶりのひとり旅に出るという。
「どこへ行くんですか?」
「中村さんのように、東京から京都まで東海道を歩くつもりです」
「なんと!」
そういうわけで、東海道の旅の思い出話に花が咲いた。以前、ぼくはその旅のことを綴った記事に、
「たしか、愛知県に入った頃だったと思う。歩き切ったあとの銭湯で、湯船に浸かる人々の会話が、いつの間にか標準語から西日本の方言に変わっていた。『ああ、随分遠くまで歩いてきたんだな』と旅情を感じた」
と書いたことがあった。その言葉に、中田さんは「自分もやってみたい」と強く影響を受けてくれたのだという。それを聞けてぼくも嬉しかった。
夕食をご馳走になってしまった。中田さんには旅のご支援までいただいていた。本当にありがとうございました。ここでお会いできて良かったです!
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