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東北一周自転車旅(3)栃木県那須塩原市〜福島県棚倉町
東北一周自転車旅
第3ステージ
栃木県那須塩原市〜福島県棚倉町(47km)
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朝起きたときの疲労感と筋肉痛は昨日の比ではなかった。後頭部も締めつけられるように痛む。ヘルメットや首の疲れの影響なのか、それとも疲れからなのか、よくわからないけど、鎮痛剤を飲んだら良くなった。それにしても、旅はまだ始まったばかりなのに、自転車旅ってこんな過酷だったっけという感想しか出てこない。
昨夜、深夜0時前のところで2000字書いたけど、まだ書き終わらないし眠くて仕方なかったので、諦めてスパッと寝た。そして今朝8時、「らんまん」を観るのも諦めて残りの原稿を書くことからスタートした。
9時半過ぎにチェックアウトし、黒磯駅前の「Iris bread & coffee」へ。ここで友人のあいなちゃんと再会した。
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あいなちゃんは隣の「カネルブレッド」というベーカリーでパンとドーナツとクッキーを買ってプレゼントしてくれ、それがぼくの朝ごはんになった。
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このカフェでは、「カネルブレッド」で購入したパンをイートインできる仕組みになっている。また、メニューにフラットホワイトがあったから珍しいな〜と思っていたら、なんとぼくがシドニーで訪ねたカフェの名店「SINGLE O」のコーヒーだそう。そうとは知らずドリップコーヒーを頼んだけど、それも道理でおいしかったわけだ。ささやかな偶然に、なんだか嬉しくなった。
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あいなちゃんと会うのは数年ぶりだった。結婚後に那須塩原に移住し、グラフィックデザイナーである旦那さんと一緒に会社を作り、彼女が経営をしている。やっているのは、いわゆる「ソーシャルデザイン」というものらしい。より良い行動やより良い未来のためのデザインを、想いを持ったローカルな人たちと組んで実現しようとしている。彼女は昔からずっと思考が深く、相変わらず素敵な生き方をしているなあと思った。
ぼくについても意外な角度からさまざまな質問を投げかけてくれ、自分の活動や生き方について考える新鮮な時間になった。
表向きには「旅エッセイスト」として、旅の魅力を伝えたいと思って活動している。もちろんそれもやりたいことだし嘘はないのだけど、一方で、単に「旅の人」だと限定されたくない想いもある。自分が行動と発信を通して伝えたいことは、旅のことに限らず、もっと広く大勢の人々に影響を与え得るものだと思っているからだ。
今回支援金を集めていて、たくさんの応援メッセージをいただくが、その内容も、「いつも元気をもらっています」とか「考え方に共感することが多いです」みたいなものが大半で、これって「旅を応援する」というより、「生き方」を応援してくれているんだなと感じることがある。そしてぼくも自分なりに「善く生きること」が人生のテーマで、それを発信することでこの世界に良い感化を与えられたらいいなと思っているから、今の自分のチャレンジと支援者との関係性は、かなり理想的なのではないかと感じている。あとはぼくがこのチャレンジを続けていき、地道に読者や支援者を増やしていきたい。
自転車を漕ぎながらそんなことを考えていたのだけど、あいなちゃんとは良い意見交換ができた。彼女は高校時代にデンマークに留学していて、会社員時代のぼくはその話を聞いて強く留学に憧れた。それがサンディエゴでの語学留学につながっている。人はそれぞれ、誰から良い影響を受けている。この自転車旅も、誰かに良い影響を与えられたらいいな。
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今日は黒磯駅を出発し、福島県の棚倉町へ向かう。海側のいわき市に一日で行くのはキツいので、中継地点として最適そうな町を探していたときに、地図上にあった「棚倉町」が気になった。なんとなくである。しかしそれが思わぬ奇跡を起こすことにつながった。
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黒磯から棚倉までは、県道60号線で真っ直ぐ行くルートがある。それなら約40kmで着く。当初はその道で行こうと思っていたのだけど、かなりの峠道であることが後からわかった。なので、多少遠回りになってもいいからなるべく登りの少ない道を考え、白河経由で行くことにした。
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まずは県道211号で北上。水田が続いていて気持ち良い道だった。小さな峠を越えて、国道294号線に乗る。この道は柏から会津若松まで続くなかなか渋い道である。
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緩やかな坂を登ると、「白河の関」で有名な白河市に入った。つまりここから先が福島県で、東北地方に突入したことを意味する。
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昨年の甲子園で仙台育英(宮城)が優勝したとき、東北勢が初めて頂点に立ったことを「優勝旗が白河の関を越えた」と表現されていた。ぼくは恥ずかしながら、それで白河という地名を知った。まさにここが東北の入り口。実は本物の白河の関所跡は東へ数km行ったところにあるのだけど、「東北に入った」という意味で、便宜的にぼくもこの場所をもって「白河の関を越えた」ということにさせてもらう。
昨日会った中田さんから、白河はラーメンが有名だと聞いていた。ちょうど道沿いに「朝日屋食堂」があったので、ここで醤油ラーメンを食べた。
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麺はそば打ち技法で作り始めたことによる手打ちのちぢれ麵。そして豚骨と鶏ガラからダシを取った、醬油ベースの透き通ったあっさりスープ。これが白河ラーメンの特徴らしい。シンプルで懐かしい味だけど、おいしかった。
お店に入ってビックリしたのは、ラーメンとともに、自前のタッパーに入れた白米を食べている人がいて、「ここは持ち込みOKなのか? このお店だけ? それともこれが福島の(あるいは白河の)スタンダード?」と困惑した。あとで地元の方に聞いたら、その方も驚いていた。どうやら一般的なことではないようだ。あの人は許された常連客だったのだろう。きっと。
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その後、進路を東に変えて、国道289号線に乗る。あとはまっすぐ20kmほど走るのみだけど、289号線はまたもや道幅が狭く、大型トレーラーが行き交い、さらにはちょうど自転車が通る辺りのコンクリートがところどころ大きく盛り上がっていて危険だった。だんだん難易度が上がるマリオのゲームみたいだ。次はどんな仕掛けがくるか。でもマリオと違って生き返らないから気をつけないといけない。
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話は変わるが、先日オーストラリアのメルボルンに滞在した。ゲストハウスで4泊し、再びシドニーへと戻る日の朝、荷造りをしてドミトリーの部屋を出ると、外の通路で荷物を整理していた女性から、「日本の方ですか?」と聞かれた。さっき、彼女が部屋を出ていく際に湯たんぽを落としたから拾ってあげて、その際は「アジア系の方だな」としか思わなかったのだけど、日本人だったのだ。よくよく考えたら、湯たんぽを使うのは日本人だけかもしれない。
アデレードでワーホリをしているという彼女としばらく話していると、もうひとり、彼女の友人の日本人女性がやってきた。ハルカさんという。そのハルカさんは、メルボルンから4時間くらい離れた町のフラワーファームでワーホリをしているそうだ。
なぜこんな話をしたかというと、数日前に「棚倉町で一泊する予定」とTwitterで書いたところ、突然ハルカさんから「棚倉町は私の実家です!」と連絡があったのだ。そしてやりとりするなかで、なんとご本人不在にもかかわらず、泊めていただけることになった。なんという奇跡だろう。あのとき、ハルカさんの友人が湯たんぽを落とさなかったら、ぼくは今日棚倉町の民宿に泊まっていたかもしれない。出会いって不思議だ。
ハルカさんのご実家は棚倉町の市街地から数キロ手前にあったので、先にお母さんにご挨拶だけして、磐城棚倉駅へ。一応ここが本日のゴール。今日は47km走った。距離は短いけど、今朝の絶望的な疲労感を考えると、よく頑張ったと思う。
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「武駒」という喫茶店に入り、昨日の原稿をnoteにアップした。クリームソーダが美しかった。
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そしてハルカさんの家に戻り、帰宅したお父さんともご挨拶し、一緒に夕食をいただいた。全部おいしかった。お米は福島産、ナスは家の畑で採れたものだそう。ご馳走様でした。お父さんには明日のいわきへのルートを相談し、「なるべく登り坂が少ないルート」について有益な情報を得た。地元の方とこうして交流できて、少しでも生活を知れたのは貴重だった。ご紹介いただいたハルカさんに感謝!
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<今日のお金メモ>
Iris ドリップコーヒー 550円
ポカリ900ml 179円
ラーメン 650円
クリームソーダ 400円
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