![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/14911911/rectangle_large_type_2_59e833a5d7595b41f73005fd977d0744.jpg?width=1200)
徴用工問題に関する韓国大法院判決の解説
これだけ徴用工問題や輸出管理問題が騒がれていても、その発端である韓国大法院判決の判決文を読んだ人は少ない様である。世間的に無理解が酷すぎると思うので、素人の解釈ながら判決文に沿って説明をしてみたいと思う。
【判決文の構成】
判決
主文
理由
基本的事実関係
上告理由第1〜5点についての判断
結論
上告理由第3点に関する個別・反対意見、他
【要約】
ここではそれぞれの項目について要約を示し、詳細解説は順次作成し、そのリンクをここに貼っていく事とする。
判決
・原告は元徴用工の方、上告は新日鉄住金
主文
・上告を全て棄却する
理由
基本的事実関係
・元徴用工の方は危険な労働に従事させられ、賃金も支払われなかった
・条約等の経緯は以下
- 1951 : サンフランシスコ平和条約
- 1965 : 日韓請求権協定
- 1965 : 財産権措置法(日本)
- 1966 : 請求権資金の運用及び管理に関する法律(韓国)
- 1974 : 対日民間請求権補償に関する法律(韓国)
- 2005 : 官民共同委員会による報告(韓国)
- 2007 : 犠牲者支援法(韓国)
上告理由第1点について
・既に日本の最高裁にて判決が出ているが、これは韓半島と韓国人に対する植民地支配が
合法との前提であり韓国では認められない
上告理由第2点について
・当時の新日鉄はその後吸収合併等が有ったが、引き続き新日鉄住金が被告と認定
上告理由第3点について
・条文に加え、関連する合意、交渉記録からなる文脈も考慮し、元徴用工の方々が
求める賠償請求権は日韓請求権協定に含まれないと判断する。理由は以下。
- 元徴用工の方々は募集時の説明と異なる過酷な労働と賃金不払いと言う境遇にあった
- 日韓請求権協定は両国の財政的・民事的な債権・債務関係を政治的に解決する為のもの
- 日韓請求権協定第1条の経済協力金と第2条の「完全に解決」は法的関係が不明確
- 日本は植民地支配の不法性を認めず条約に合意しているから慰謝料は払っていない
- 韓国側が慰謝料に言及した事実は有るが、一貫した主張ではない
上告理由第4点について
・元徴用工の方々は権利を行使出来ない状況にあり、時効は成立しない
上告理由第5点について
・慰謝料の算定は妥当
結論
・上告を棄却し主文の通り判決する
上告理由第3点に関する個別意見(1)
・被告の提出した新証拠は判決を覆す内容ではない
上告理由第3点に関する個別意見(2)
・元徴用工の方々が求める賠償請求権は日韓請求権協定に含まれる
・但し、国家間の外交的保護権が消滅しただけで個人請求権は消滅していない
・理由は以下
- 日韓会談において賠償金に関する協議は有ったが、妥結しないまま協定が結ばれた
- 交渉過程で韓国が要求した補償金12.2億ドルの内3.6億ドルは慰謝料と算定している
- 経済協力金を元に請求権資金法を制定し、補償金を元徴用工の方々に支払いを行っている
- 官民共同委員会においても3億ドルの無償資金に賠償金の意味合いが含まれると結論
→ 以上により、日韓請求権協定に賠償請求権は含まれると判断
- 日韓請求権協定には個人請求権が消滅したとの両国政府の合意が認められない
- 「解決された」の文言とは裏腹に経済協力金の性格について両国政府の合意は無かった
- 実際の補償金額は微々たるもので、日韓請求権協定にて個人請求権消滅とは言えない
- 日本政府は財産権措置法で日本国内での個人請求権を消滅させている
→以上により、個人請求権は日韓請求権協定では消滅せず、元徴用工の方々は行使できると判断
上告理由第3点に関する反対意見
・元徴用工の方々が求める賠償請求権は日韓請求権協定に含まれる事は同意する
・但し、個人請求権は消滅していない事には同意できない
・その理由は以下
- 条約はその文言を通常の意味に従って誠実に解釈する必要が有る
- 従って、全ての請求権が完全に解決され、いかなる主張も出来ないと解釈すべき
- 日本政府は外交保護権が消滅し、個人請求権は消滅しないとの立場であるので、
訴訟で権利を行使することは制限されると解釈できる
多数意見に対する補充意見
・賠償請求権が日韓請求権協定に含まれない解釈は、条約解釈の一般原則に従う
【出典】
大法院判決文は法律事務所( http://justice.skr.jp/index.html )のアーカイブのものを参考にした。