ミサトの不思議な冒険(第8話)公認写真サークル
ここは公認写真サークル主席室。公認写真サークルは長年の成績不振により大学からの活動費無しの宗像の呼ぶところの平公認への降格問題を抱えています。そんな写真サークルに西川流B2級を持つ宗像は三顧の礼をもって迎え入れられています。
宗像には政治力があります。もっともこれは親の助けを借りているだけですが、学生課との間に降格条件の交渉を行っています。今まで曖昧であった降格条件を明記させたと言うところでしょうか。その条件は、
『ツバサ杯でメディア創造学科を除いた者の中で最優秀成績を収めれば平公認サークルへの降格は行わない』
これを独断に近い形で取って来たのです。これには公認写真サークル内で反対の声が起りました。というのも未公認サークルのフラッシュにも成績で押され気味であったからです。宗像の責任を問う声が飛び交いましたが、
「責任はオレが負う。その代りに降格回避が果たせたら、オレの言うことに従ってもらう。それが嫌ならオレはサークルを辞める」
ツバサ杯は迫っており、宗像抜きで降格回避条件を満たせる自信は誰もなく、やむなく了承しています。宗像はツバサ杯で入選を果たし、フラッシュの佳作を上回り降格回避を果たします。
宗像は公認写真サークルの改革強化として西川流級位至上主義を打ち出します。宗像は実力主義としましたが、
「凡百の連中にB2級など取れるものか」
宗像は子どもの頃からお山の大将。さらにそういう状態に宗像をするのに両親も惜しみなく協力しています。その結果としてお山の大将でいないと許されない性格に育っています。
宗像にとってお山の大将を阻もうとする者は敵であり、排除する対象でしかありません。公認写真サークルでも当然そうあるために、ここまで動いています。写真部顧問も味方につけた宗像は、まず代表の飯島を罠に掛けて退会に追い込みます。
そして代表と言う名称を廃し主席として公認写真サークルの独裁的支配権を手に入れます。逆らう者には様々な理由を付けて追い出して行ったのです。
「これは手始めだ」
宗像は親の助けもあり、プロを目指していました。それだけの才能もあるとの自負もありました。高校時代は、そのステップとして写真甲子園制覇を目指していたのです。
一年の時は写真部を蹴散らし、初戦審査会を突破したもののブロック審査会で敗退。二年はそのリベンジを期していましたが、弱小写真部の顧問に麻吹つばさが着いたのです。危機感を抱いた宗像は親の助けを借り村井プロを雇うものの、そのインチキが校内予選の公開審査で暴露されます。
「辰巳先生まで出て来るとは・・・」
宗像はその後もB1級試験、師範資格取得試験に何度も挑んでいますが合格していません。
「辰巳総帥の不興を買ったに違いない」
宗像はプロへの夢が校内予選で閉ざされてしまったと考えています。
「オレほどの男を追い出すとは許せない」
宗像はプロになることは諦めましたが、自分を追い出した写真界に復讐すべく、プロを支配する写真界のドンになるのが目標となっています。その手始めが公認写真サークルの支配だったのです。その目標は一年の間に成し遂げています。
ところが二年になり状況が宗像の悪い方に変わります。ツバサ杯がオープン化してしまったのです。そうなると去年の降格回避条件の達成が厳しくなってしまいます。ここも素早く親を動かし。
『メディア創造学科の学生以外の、本校学生の中で最優秀成績であれば降格させない』
これで去年に近い状態に持ちこめたと満足したのも束の間で、
「尾崎が入学して来るとは」
尾崎美里は宗像のチームを破った写真部のメンバー。それだけでなく写真部は決勝大会まで勝ち上がり優勝までしているのです。宗像もその作品を知っていますが、
「第二段計画を進めれば、たいした問題ではない」
宗像の次の計画は未公認写真サークルを支配下に収めること。このために持ちだしたのがツバサ杯のためへの予備予選。未公認サークルは正式の部活の支配下にあるとする規則を最大限にふりかざし、強引にツバサ杯の出場は公認写真サークルの承認を必要とすると押し切ったのです。
予定では、この方式を他のコンテスト参加にも拡大し、未公認写真サークルをすべて吸収統合してしまおうとするものでした。これは大学卒業後の宗像の写真界支配のリハーサルぐらいに考えていたのです。
「もともとは実力で勝つ計画だったが、尾崎排除のためには工夫がいるな」
宗像はいつもの手を使う事にしました。審査員の買収と、作品のプロへの依頼です。
「この際だから、この宗像には逆らえない事も覚えてもらうのも重要だ」
宗像はあれこれと計画の不備を探しましたが見つかりません。そこに、
「宗像主席、入ります」
持ってきたのは予備予選のエントリー・リスト。
「ほう、結構な数のエントリーだな」
一時はボイコットの動きもありましたが、宗像の予想以上のエントリーになっています。
「うん、これは・・・」
宗像が意外なのは尾崎美里の名がないことです。あれこれ対策を練ったのは尾崎美里へのためでしたが、
「仕事がラクになったか」
後は予備予選で未公認サークルの連中を排除し、ツバサ杯で必要な成績を収めて降格を回避するだけです。
「御苦労だった」
部屋から会員が出た後に、
「オレのプロへの夢は高校の時の校内予選で無残に閉ざされてしまった。その代りに日本の写真界はオレが支配してやる。わははは、チョロイものだ。いずれ麻吹つばさも跪かせてやる」