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魔王襲来(第15話)平穏な日々

 ミサキがクレイエールに入社してから六年目を迎えました。とにかく毎年のように大事件が起こり、必ず巻き込まれるので大変ですが、株主総会対策の時もコトリ部長と例の『鉄人コンビ』を組んで全国を飛び回りました。この功績は相当高く評価されてミサキは課長代理に昇進しました。

 さて、今日はマリちゃんと晩御飯、部署が違いますから本当に久しぶりです。あれこれ近況報告とか社内の噂話に花を咲かせました。

「もうミサキちゃんって気軽に呼べないね」
「どうしてよ」
「そりゃ、課長代理様だもの」
「やめてよ、コトリ部長の金魚のフンやってただけなんだから」
「これはマジで言っとくわ。誰もミサキちゃんを金魚のフンなんて思ってないよ。あれだけの鉄人ぶりを見せつけられたら課長代理でも遅すぎるぐらいよ。とにかくクレイエールの三大美人は、仕事をやらせても三羽烏だからね」
「そんなぁ、ミサキは三大美人にも三羽烏にも入らないよ」
「マリも部下になったら、可愛がってね。女性社員にとってスーツ姿は憧れなんだから」

 クレイエールの女性社員には制服があります。かつては男性社員にもあったようですが、今は女性社員だけです。この制服なのですが、肩書が付くとスーツというか私服にしても良くなります。主任や係長ぐらいなら制服の人もおられますが、課長補佐ぐらいになるとほぼ私服になられます。

 マリちゃんがスーツ姿に憧れると言ったのは、イコールで肩書が付くことを意味しています。これも大雑把に言えば、女性社員で制服を着ているとヒラ、スーツ姿になると肩書付きと見た目でわかる事になります。ですから主任になった途端にスーツ姿に変えられる方も少なくありません。

「でさぁ、今年もいたのよ」
「やっぱり」

 課長クラス以上、ましてや重役クラスになると制服の女性社員はこれまでいなかったそうなのですが、頑として制服のままなのがシノブ部長です。理由を聞いたことがあるのですが、

『私はクレイエールの制服に憧れて入社したの。社内規定でも私服も可とはなってるけど、制服禁止ってどこにも書いていないでしょ』

 クレイエールの制服はたしかに可愛くて、男性の制服が廃止になった時に女性も廃止の話もありましたが、女性社員から制服廃止反対運動があり残ったと聞いています。問題は可愛すぎるところで、年配の方になるとさすがにって人もおられるのはおられます。

 その代わり若い女性が着ると本当に映えます。ですからシノブ部長だけではなく他の女性社員もこの制服に憧れて入社した人も少なくありません。えへへへ、ミサキもその一人です。

 課長補佐になってスーツに変えましたが、係長の時まで制服でした。もっとも、あの頃は魔王の心理攻撃をコトリ部長と鉄人コンビで対処してた時期で、スーツを買いに行くヒマもなかったのも理由ですけど。

 シノブ部長も御結婚されてお子様もおられますが、ミサキが入社しときから一向に歳を召される気配さえありませんから、今でもとってもお似合いです。このシノブ部長の制服が似合いすぎているのが社内ではある種の問題となっています。

 とにかくシノブ部長は綺麗で愛くるしくて、歳だって二十代の前半にしか見えません。そのうえ、シノブ部長は素直で真面目で優しくて親切で、ヒラ社員にも物腰が低すぎるぐらい丁寧なんです。それが悪いとは誰も言えませんが最大の問題は、

『ヒラ社員とよく間違えられる』

 名札さえ確認すれば良いのですが、とにかくあの見た目の若さと可愛らしさですから、頭から勘違いしてヒラ社員扱いする人がおられます。これだけはシノブ部長の欠点かもしれませんが、ヒラ扱いされたら、相手が気づくまでヒラでキッチリ対応されます。教えてあげた方が良いとも思うのですがシノブ部長は、

『なかなか言い出せなくて・・・』

 そのために散々ヒラ扱いして、後で気が付いてビックリ仰天なんて事がしばしば起こります。これの被害者になるのは新入社員と支社から本社に異動で来た人、さらに外部から訪れた人です。

「誰がやらかしたの」
「東京支社から海外事業部に来た山田課長」
「あぁ、いかにもやりそうなタイプね」

 山田課長の手腕はわかりませんが、性格の方は着任そうそうから女子社員に嫌がられています。セクハラ野郎ではないものの、上にへつらい、下に威張りたがるタイプと言えば良いのでしょうか。それだけでなく、女性社員というか女性を見下したがる人物で、どっちかと言わなくともパワハラ・タイプです。

「マリちゃん、山田課長は結崎本部長にどれぐらいやらかしたの」
「けっこう盛大だったみたい」

 聞くと山田課長はジュエリー事業部に何か用事があったそうです。ジュリー事業部は新設のために社内でも、ややわかりにくいところにあります。新入社員には社内のオリエンは行いますが、異動者にはおざなりですから、山田課長は迷子になりかけていたそうで、そこにたまたま通りがかったのがシノブ部長です。

「山田課長は例の調子でまずやらかしたそうなの」
「やっぱり」

 山田課長は通りがかったシノブ部長を呼び止め、

『君、君』
『はい、私のことでしょうか』
『君以外におらんじゃないか。ジュエリー事業部まで案内してくれ』
『ジュエリー事業部なら・・・』

 シノブ部長はジュエリー事業部までの行き方を教えかけたそうですが、

『行き方を聞いてるんじゃない。連れて行ってくれと言っとるんだ。日本語ぐらいちゃんと理解できないのかね』
『もうしわけありません。急ぎの用事があるもので・・・』
『ボクは課長だよ。君如きの用事は後回しにするのが常識だし礼儀だ。遅れたって課長のボクを案内したと言えばそれで済むし、むしろ褒められるぐらいだ。だから女って奴は・・・これぐらい覚えておきなさい。君もこれで一つ勉強になっただろう』
『ありがとうございます。では、こちらへ』

 道すがらも、かなりブツブツ言っていたそうですが、やがてジュエリー事業本部に到着。シノブ部長は、先に部屋に入られ、

『海外事業部の山田課長をご案内させて頂きました』

 そういって深く一礼されたそうです。そうしたら山田課長は、

『もうイイよ、次から気をつけたまえ』

 ちょうど本部長のコトリ部長も、副本部長も不在で、課長が応対に出たそうですが、それこそ血相変えて駆けつけたそうです。

『これは、これは、この時間にわざわざお越し頂いたということは、なにか当事業部に急用がございますか』
『いえ、山田課長がまだ社内に不案内の様なので・・・』

 そりゃもう、山田課長なんか完全にそっちのけの応対になりました。何が起こっているのか、イマイチ状況が把握できなかった山田課長は、

『君はもうイイと言っておるだろう。下がりなさい』
『はい、会議がありますので、これで失礼させて頂きます』
『はははは、会議だって、君がやっているのは、会議でなく単なる打ち合わせだ。言葉遣いも知らない女だな』

 シノブ部長は再び深く一礼してジュエリー事業部から出られたそうです。

「マリちゃん、山田課長って、そこまでやらかしたの」
「そうなのよ、ここまでは久しぶりじゃない。でもね、運が悪いことに、ただの勘違いの笑い話で済まなくなったのよ」
「まだあるの?」

 山田課長を完全にそっちのけでシノブ部長をお見送りしたジュエリー事業部の課長は、どこかに急いで連絡し、ようやく山田課長の方に向き直ったのですが、山田課長は、

『なんだね、あの女は。それより、用事があるのは課長のボクだ。失礼じゃないか』

 ジュエリー事業部課長は時計を見て、大きくため息をつきながら、

『ああ、遅れられてしまいました。社長は会議への遅刻は非常に嫌がられます。山田課長もそれなりの御覚悟を』
『それとあの女がどんな関係があると言うのだ』
『山田課長がブライダル事業本部長にして執行役員の結崎情報調査部長を、道案内に使って重役会議に遅れさせたからです』
『えっ、あの方が結崎本部長・・・』

 山田課長もさすがに拙いと思ったようで、シノブ部長を追いかけたそうですが、時すでに遅しでシノブ部長に追いつくこともできず、悄然としながら海外事業部に戻って行ったそうです。

「うわぁ、重役会議の出席を遅らせてしまったんだ。社長がそういうのに、すっごくウルサイって聞いたことある」
「それもね、これまた運の悪いことに議題の一本目がブライダル事業のことだったみたいなの」
「そりゃ、後が・・・」
「大変だったみたいよ」

 シノブ部長は遅刻を詫びたものの言い訳一つしなかったのですが、ジュエリー事業部から既に連絡が届いていたようです。重役会議後に海外事業本部長は社長から強く叱責されています。

「どうして山田課長じゃなくて海外事業本部長が叱責されたの」
「不注意と無礼にも程があるって。なんていうか部下の教育と管理がなってないってところかな。その挙句に海外事業部は、名札を何語にすれば読めるのかってまで言われたそうよ」
「あのプライドのやたらと高い海外事業本部長が、そこまで叱責されたとなると」
「そうなのよ、完璧に逆鱗に触れたってところなの」

 海外事業本部長は社長の叱責が終わるとその足で、情報調査部でまずシノブ部長の話を聞かれています。そこでの聞き取りが終わると、ジュエリー事業部で応対に当たった課長から、山田課長の言動の聞き取り調査を徹底的に行ったそうです。

 海外事業部に戻ると山田課長をすぐに呼びつけています。海外事業本部長はとにかくプライドが高い上にクールで、陰で冷血人間とまで呼ばれていますが、それは、それは、冷え冷えするような叱責だったようです。山田課長もなんとか弁解をしようとしたそうですが、これを頭から押し潰すように、

『山田君、君は重役を呼びつけて道案内に顎で使うのだね。さらにいえば、その事に対する感謝の言葉の一つも使っていない』
『重役会議に向かう結崎本部長に「君如きの用事は後回しにしろ」と言ったのだな』
『重役会議に遅れるより、君の道案内をした方が褒められると言ったのだね』
『さらに君は重役会議のことを、単なる打ち合わせと言って笑い飛ばしたそうだね』
『結崎本部長を「言葉遣いを知らない女」と言ったんだね』

 海外事業本部長は頭から怒鳴るというより、冷え冷えとシノブ部長とジュエリー事業部から聞き取った調査結果を羅列していったそうです。山田課長は懸命に、

『結崎本部長とは露知らず、数々の失礼を・・・』
『君は我が社の女性社員を「あの女」と呼ぶのはどういう了見かね』

 海外事業本部長はクールではありますが、かなりのフェミニストなのです。

『そ、それはつい』
『その下卑た言葉遣いは東京支社の流儀なのかね。君の返答次第で東京支社長にも問い合わせねばならない』
『もうしわけ、ありません』
『では、君個人の流儀になる。海外事業部には君のような下品な言葉遣いをする者は不要だ』

 海外事業本部長はさらに冷え冷えと、

『山田君は名札に書いてある文字が読めないのかね。視力が悪いのなら眼科に、文字が読めないのなら小学校に行きたまえ』
『つい、ウッカリ・・・』
『そんな注意散漫な者は私の部下にはさらに不要だ』

 山田課長はなにを言い訳しても、海外事業本部長はバッサリと切り捨てられたそうです。最後に、

『これからは君をそういう人物と見なすことにした。以上だ、下がってよろしい』

 必死になって食い下がろうとした山田課長でしたが、

『君は重役会議の時間を潰しただけでは飽き足らず、この私の時間まで浪費させるつもりなのか。もう一度だけ言う、すぐに下がりたまえ』

 これは叱責と言うより、判決を言い渡されたようなものです。これは頭から怒鳴られるより、こたえる時はこたえそうです。

「山田課長も重役会議が絡んでたのが、運が悪かったのよねぇ。そうでなければ、結崎本部長のことだから、後でお詫びさえ入れれば、笑って許してくれたはずなのに」
「その点だけは同情するわ。でもね、まだ続きがあるのよ」

 着任そうそうに大失態をやらかしてしまった山田課長は、なんとか失地挽回を行おうとしたそうです。このままでは、次の人事異動で本社から左遷されかねないの思いだと想像します。

 山田課長が東京支社から本社に呼ばれた理由の一つにイタリア語が出来ると言うのがあったそうです。マルコの工房は順調なんですが、とにかくイタリア語が出来る人材が少なくて、ここの補強の意味合いもあったようです。

「その話なら知ってる、というか参加してた」
「ミサキちゃん、実際のところどうだったの」
「あれも、運が悪かったと思う」

 山田課長はマルコの工房を訪れて自慢のイタリア語を見せびらかすつもりだったようですが、相手がマルコだったのがまず不運。マルコは家庭や仕事外なら陽気なイタリア男なのですが、仕事中はムチャクチャ気の難しい職人になります。

 工房内はマルコのルールでイタリア語しか使えないのですが、マルコが求めるイタリア語の水準はネイティブと同等クラスです。山田課長も日常会話程度なら出来るようでしたが、たどたどしく話しかける山田課長をウルサがって、例の瞬間湯沸かし器状態で怒鳴りつけます。そこにミサキが仲裁に入ったのですが、実は前日からの夫婦喧嘩の真っ最中。

「ミサキちゃんとこでも夫婦喧嘩するんだ」
「うん、あの時は色々あってね」
「でも、そうなるとその日のマルコ氏の御機嫌は最悪状態」
「そうなのよねぇ、山田課長も運が悪かったと思う」

 最初は仲裁に入ったつもりでしたが、前日の夫婦喧嘩にすぐに話が及び、売り言葉に買い言葉で、あっという間に夫婦喧嘩は再燃して大炎上。工房内は修羅場になります。ここで職人の一人が気を利かせてコトリ部長を呼びに行かれたのです。駆けつけてきたコトリ部長の仲裁で、なんとかマルコの瞬間湯沸かし器も冷めてきて、その場はおさまりかけてきたのですが、マルコは山田課長への憤懣やるかたなく、

『ヤ~マダは出入り禁止だ。二度と顔も見たくない、出て行け』

 これでは失地回復どころか新たな失態の上塗りになるとばかりに、なんとか取りすがろうとした山田課長に再びマルコの怒りが爆発。これに呆れたコトリ部長が、

『山田課長、どうかお引き取りください』

 こう言われました。

「マリちゃんさぁ、山田課長も瞬間湯沸かし器状態のマルコからトットと退き下がれば良かったんだけど、頑張ってしまったのがまず失敗。さらに、小島本部長を知らなかったのよね」
「まだ知らなかったの」
「うん、結崎本部長を重役会議に遅刻させた一件で、ジュエリー事業本部と総務部への出入りを禁止されてたみたいなの」
「それはひょっとして・・・あっ、だから」

 そういうこと。完璧にやらかしちゃったのよ。まず小島本部長に向かって、

『あなたには関係のないことだから黙りなさい』

 ここだけでもデッドラインなんだけど、自分でトドメ刺しちゃったのよ、

『女が余計な口出しをするな』

 こう頭ごなしに怒鳴っちゃったものね。

「あれまぁ、小島本部長はジュエリー事業本部長なのに、そうは見えなかったのね。そう見えないのに同情の余地はあるけど、また名札の確認怠ったんだ。そうそう、山田課長はミサキちゃんにもなにか言ったの?」

 言われた、物凄い剣幕で、

『お前が騒ぎを大きくした、お前の責任だ』

 こんな感じで怒鳴られまくったものね。

「で、どうしたの」
「小島本部長に『処理は私に任せて』って言われたわ」
「小島本部長のこういう時の処理って怖そうだけど」
「あっさりというかシンプルだったよ。小島本部長も海外事業本部長がどんな人か良く知っているから、善処依頼を出しただけ」

 これで、またもや山田課長は海外事業本部長の逆鱗に触れます。もう本部長室への呼び出しですらなく、部員が居並ぶ前で海外事業本部長は冷え冷えした声で、

『ジュエリー事業部の小島本部長から、マルコ氏の工房の一件で善処依頼が来ている。山田君に確認したいことがある』

 おずおずと海外事業本部長の前に進み出た山田課長に対して、

『君にはジュエリー事業部と総務部への出入りは禁止と申し渡したはずだが、マルコ氏の工房に入ったのは事実かね』
『そこでマルコ氏を怒らしたのは事実かね』

 ごにょごにょと言い訳したそうだけど、海外事業本部長は冷ややかに事実確認だけして、

『宥めに入ってくれた小島本部長に「女が余計な口出しをするな」と怒鳴りつけたのも事実かね』

 これは山田課長は、

『小島本部長を怒鳴るなど滅相もありません。つい怒鳴ったのは反省しておりますが、あの場に小島本部長はおられませんでした』
『小島本部長が御自身で怒鳴られたと仰っておられるのだ。君は小島本部長がそんなイイ加減なウソをつく人とだと言うのかね』
『でも、あの場にいたのはマルコ氏や職人の方を除けば若い女性社員が二人で・・・』

 ここでトドメの一撃だったそう。

『最初に来られたのが香坂課長代理で、後から来られたのが小島本部長だ』
『ひぇぇぇ、ま、まさか、あの方が小島本部長』

 コトリ部長を怒鳴りつけた話が事実と知った海外事業部員の山田課長を見る目が、一挙にこれ以上はないぐらい険悪になったそうです。

『君は私の指示を無視しマルコ氏の工房に入り、そこでトラブルを起し、あまつさえ小島本部長を頭ごなしに怒鳴りつけた。君はこの部屋で机に座っているだけでよろしい。どこにも動いてはならぬ、誰とも関わってはならぬ、誰とも話してはならぬ。部員一同もくれぐれも注意して監視しておいてくれたまえ。以上だ』

 山田課長のデスクは部屋の隅っこに移動となっただけでなく、周りを衝立で囲われ、衝立部屋から出る時には必ず監視付になりました。部室を出て御手洗に行く時なんて二人がかりだそうです。

「なるほどね。海外事業本部長は結崎本部長で大失態を犯した山田課長を、小島本部長で絶対に失態を犯さないようにジュエリー事業部と総務部の出入りを禁止してたんだ」

 そういうこと。なのに山田課長はそれを破ってマルコ氏の工房に入り込み、そこでトラブルを起しただけでなく、海外事業本部長がもっとも懸念していた小島本部長ともトラブルを起こしたのよね。

「微笑む天使の小島本部長を頭ごなしで怒鳴るのはクレエール本社では絶対のタブーだもんね」
「海外事業本部長の表情はあくまでもクールだったみたいだけど、内心はどれだけ怒っていたか想像するのも怖いぐらい。下手すりゃ、自分も巻き添え食って左遷になりかねないからね」
「他の部員もそうみたい。山田課長に同情なんか示そうものなら巻き添え必至だもんね」

 山田課長の海外事業部での軟禁状態は今も続いているようですが、

「来春まで居るのは無理だと思う」
「いや、明日いなくなっても不思議ないと思うよ」
「それにしても、ここまでフルコースでツボ踏む人って初めてじゃない。大概は笑い話か、せいぜい軽い叱責ぐらいで済むのにね」
「うちの部長も山田課長の失態を聞いて震え上がってた。部下がそこまでやらかせば、管理責任問われるものね。だから、これからは異動者には真っ先に結崎本部長と小島本部長のところに部長が一緒に挨拶に行くようにさせるって」

 こうやってクレイエールは今日も平穏な日々を過ごしております。

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