僕とウルトラセブンとのお話
僕は大学へ通うのに原付を使っている。
電車があまり好きじゃないこと、いつでもヒョイっとどこかへ遊びに行けること、何よりも交通費がべらぼうに安いこと、この三点の理由から原付を使っている。
今回はそんな僕が最近、通学途中に遭遇するウルトラセブンとのお話である。
いつも僕は、家を出て国道を2つ経由して抜け道に入り、またそこから国道へ入るというルートを取っている。
その抜け道から国道へ入る時に、間隔の短い信号がある。そこで大抵信号に引っかかり、だいたいの確率で前から3台目くらいのところで停まる。
そのよく停まる位置に、ウルトラセブンがいるのだ。
正確に言うと、よく停まる位置の道沿いの塀の上にいつも20cmほどのウルトラセブンがいる。
ある日は仁王立ち、またある日はスペシウム光線のポーズ、そのまたある日はうつ伏せで倒れ込んでいた。姿のない日もあった。
このことから僕は、あのウルトラセブンは生きていると踏んだ。
いや、つーか生きてるよあれ。よく見たら普通に歩いてるし。「ジュワッ」って言って飛んでるし。ウルトラセブンの姿が見えない日はモロボシ・ダン隊員が歩いてるし。
そう、放送終了から50年以上経った現在、ウルトラセブンはあの交差点の近くで生きているのだ。
皆さん知ってましたか?ウルトラマンシリーズってノンフィクションらしいですよ。怪獣とか宇宙人を街中でぶっ倒してるの、ガチらしいですよあれ。
そんなこんなで、僕はウルトラセブンとコミュニケーションを取るようになっていった。
最近の天気の話から始まり、次第に仲が良くなってくると、50年前は脚光を浴びていた話、最近のウルトラマンは貧弱だ、という話などかなり老害じみたことも聞くようになった。まあ仕方ない。歴史が深いからな、セブンは。
そしてつい3日ほど前、いつものように通学をしていると、いつもの位置で信号に引っかかり停車。するとその日はもの哀しげにウルトラセブンが首を傾げていた。
「どうしたの?セブン。今日元気ないじゃない。」
「ジュワッ」
「え?なに?最近怪獣やら宇宙人やらが来なくて暇で暇で仕方ない?」
「ジュワッ」
「けど平和が一番なんじゃないの?」
「ジュワッ...」
「まあ確かに遠くからわざわざ地球に来たのにこれじゃあ退屈かもなぁ」
「ジュワッ!」
「そっかー。戦えるといいね。」
「ジュワッ!!」
そうだ。ウルトラセブンは、「はーるかな星が〜 ふ〜る〜さ〜と〜だ〜」なのだ。
故郷を離れてわざわざ地球まで来ているのに、確かにこれじゃあいくらなんでも不憫だ。
ウルトラセブンに同情した僕は、ここで名案を思いつく。
そうだ。怪獣を用意して戦わせてあげよう。
それから3日後。つまり今日である。
原付の後ろにジャミラを乗せてセブンに会いに行く事にした。
こんな感じで乗せていった。
もちろんジャミラは生きていて、今すぐにでも街を破壊せんとする眼差しであったが、僕が餌付けしているので僕には危害を加えることはない。
しかも調べてみるとジャミラはウルトラセブンと戦ったことはおろか、会ったこともないようだ。うってつけすぎる。これは面白いもの見れるぞ。
そしてついに例の交差点近くのウルトラセブンの元へ辿り着く。
よし、ここはひと芝居打とう。
「セブン!助けてくれ!ジャミラが暴れていて大変なんだ!」
「ウォ...ウゴォォォォ!!!」
ジャミラも因縁のウルトラ一族と対峙し本性を取り戻す。
「ウゴォォォ」
「ジュワッ」
セブンとジャミラの取っ組み合い。
「ジュワッ」
セブン、ここでジャミラと距離を取る。
「ジェアッ」
出た!!アイスラッガーだ!!
「ンンボァァァ」
ジャミラにヒット!片手がちぎれる。
ついでに原付にもヒット!タイヤをかすめる。タイヤの山無くなっちゃった。ツルツルだわこんなん。
「ジュワッ」
これは!スペシウム光線のポーズ!!
「ジュワッ」
ミーーーーーーーー
出た!独特な効果音!生で聴けるとは!
ジャミラにヒット!大爆発!!
ついにジャミラ破れたり。
そしてまたついでに原付にもヒット!エンジン直撃!完全にエンジン逝った!
「ジュワッ!!!」
こんな誇らしげな顔のセブン初めて見たぜ。
ありがとうセブン。昔の輝き、完全に取り戻してるぜ。最高にクールだ。
「ありがとうセブン。本当に助かったよ。」
「ジュワッ!」
「またここ通ったらお話しような!」
「ジュワッ」
「んじゃまた!」
と、去ろうとしたが、
エンジンがかからない。
セルは回るのに。
いくらセルを回してもキックを試してもエンジンがかからない。
仕方ない。バイク屋まで押していくかぁ。
「あのーエンジンがかからなくなってしまって...」
「んーちょっと診てみますね。」
バイク屋さんは親切だ。すぐに解体して診てくれる事に。
「あーこりゃエンジン焼き付いちゃってますね。エンジンオイル交換してないでしょう。」
「いや、オイルは変えてたんですけど...
ちょっとスペシウム光線で...ハイ。」
「??...とにかく、 これだとエンジンそのものの交換になっちゃいますねぇ。あとついでに後ろのタイヤも取り替えてしまいましょうか。摩擦でツルツルになってしまってるみたいなんで。」
「ハ、ハイ。アイスラッガーデ。ハイ。」
「??...じゃあ、修理に2週間ほどお時間いただきますねー。お見積もりはおそらく7万円ほどですかね。」
「ハ、ハイ。ジュワッ。」
あーあ。2週間セブンと会えなくなっちゃった。
しかも電車で学校行かなきゃいけないのか。
修理代と交通費たけーな。
僕は今日、脚光の裏には多くの犠牲が伴っていることを学んだ。
こうしてウルトラマンはいつの時代もこどもを成長させていくのだろう。
完。
ウルトラマンファンの方すみませんでした。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?