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部長から降格した時のはなし

スマホで写真を売買できるサービス【スナップマート】代表の岡(@yosukeoka)です。

2006年10月、30歳の時に、当時社員3名だったピクスタにジョインし、現在はスナップマートの代表として仕事をしていますが、今日に至るまで紆余曲折な経験を経てきました。

中でも印象深いのは、2016年のGWに思い悩み、部長から降りる決断をしたことです。

毎年GWになるとその時のことを思い出すのですが、海行ったなぁ。。。

■部長からの降格に至る経緯

2015年1月にスナップマートの親会社であるピクスタのコンテンツ部 部長になりました。
マネジメントするメンバーは15名と比較的多めの人数でのスタート。
半年ほどは前任者の方針も引き継ぎながらの運営でしたが、半年経った頃に、コンテンツ面におけるピクスタとしての中長期的な方針を明確に定めよう、という動きもあり、改めてマネジャーとしての方針が求められたのです。

結論から言うとこれがうまくできませんでした。

方針は考え経営会議で発表・議論をしていたのですが、明確な方針を立案できず、熱意や覚悟で意思表示をする、という事もできませんでした。

方針を明確に示すことができず、メンバーにも方針を示すことができないため信頼を得られず、適切な評価もすることができず、チームとして共通の目標を追いかけることもできずに、成果も出すことができませんでした

そのような状態であったため、常に経営会議での発表や不安が頭をよぎり、日々の膨大な作業に集中できず、業務の漏れも発生。
それによって更に自己嫌悪に陥り、夜もなかなか眠れない、という状態にもなりました。
この頃は凄く単純なこと忘れてしまったり、簡単につくはずの優先順位をうまくつけられなかったり、よく色々な所に体をぶつけたりもしてました。
思い返すと心の健康も維持できていなかったのだろうなと思います。

今だから言えますが、この時の自己肯定感の低さ、自分の無能感は言葉に出来ないほどでした。周りからも「できない」と思われているんだろうな、と思っていましたし、自分がマネジャーを務めることで周りのメンバーの評価を落としているのではないか、自分がそのポジションにいて申し訳ない、とも思っていました。

結果として、1年半勤めた部長職を自ら降りる決断をしたのです。
決断といえば聞こえはいいですが、そんなにかっこいいものではなく、つらい状況から逃げる、に近いものでした。

なぜそうなったのか。原因は下記のとおりでした。

■1: 自分の意思ではなく、経営陣が求める答えを出そうとしてしまった。
■2:大人数をマネージメントする経験、経営に関する知識、思考方法ができていなかった
■3: メンバーにも自らの熱も含めた方針や施策を共有することができず、自分の苦境も含めて思いをオープンにする事ができなかった。

■【原因1】自分の意思ではなく、経営陣が求める答えを出そうとしてしまった。

経営に近い部長というポジションとしては、外部環境や自社のビジネスモデルも考慮して、自分が納得する施策を提案するべきです。

しかしながらその当時はそのような考え方ではなく、いかにして経営陣が納得してくれるであろう施策を提案するか、を考えてしまいました。

自分が腹落ちしない施策から熱は生まれませんし、経営陣を納得させることもできなければ、チームメンバーにも伝え、動くこともできず、仮に実施することになったとしても成果が出せるまで継続することができなかったでしょう。

しかしながら当時はそんな事を思いもせず、ひたすら「この方向性なら行けるのではないか?」「以前、こんな事を言ってたから通るのではないか」という視点だけで考えていました。

■【原因2】大人数をマネージメントする経験、経営に関する知識、思考方法ができていなかった

今でこそ各メンバーと隔週の1on1で話し合う機会を設けて、メンバーの考えるキャリアパス、それに応じた業務やギャップなどを話し合っていますが、当時はしっかりとしたマネジメント経験がなく、また15名という大人数のマネジメント状態だったので、一人ひとりに向き合う時間の作り方、その時間の優先順位の高さを理解してませんでした。

その結果、評価等に納得がいくはずもなく、メンバーと信頼感を醸成することもできず、チームとしての成果を発揮することができません。

また、メンバーが納得できる論理的な説明能力もありませんでした。
それまでは長い間一緒に働いてきた、比較的少人数のメンバーと共有していれば良かったことを、入社タイミングもまちまちな、15名のメンバーと戦略や戦術を理解してもらう能力もありませんでした。

これは戦略フレームワークの理解度の低さや、論理的な思考能力の低さとともに、【人間】に対する理解の低さに起因する部分が大きかったと感じています。

■【原因3】上司は正しくなくてはいけない、メンバーの期待に応えなくてはいけない、と思いすぎてしまった。

自分自身が部長というポジションに辛くなった理由として、上司は正しくなくてはいけない、メンバーの期待に応えなくてはいけない、という思いがありました。

その結果、メンバーと接する際にも正しくあろうとしすぎるあまり、自分の本音を出せない、経営陣の言葉をそのまま伝えてしまう、本などで得た知識をそのまま伝える、など自分のものではない言葉で伝えていました。

自分の意見に自信がないので、経営陣や著名人の言葉で自分の言葉を権威づけしようとしたのです。

これではもちろん思いが伝わりませんし、理解もされません。結果として自分もメンバーを理解しようとできなくなります。


あとから振り返ってみると、部長からの降格をこのように整理できますが、当時は嵐の中にいるような感じです。どこから手を付ければ現状を打開できるかわからない。自己肯定感も極限まで低い

そのような中で、周りのメンバーからのアドバイスや、接し方に救われ、徐々に自己肯定感も回復していったのは、次のアクションによるものでした。

■【アクション1】GLOBISでの受講

15名のマネージメントから2名のマネジメントへと範囲が狭まったこと。それにより心の余裕と時間の余裕もできました。その時間を使いマネジメント能力を向上させるべく、学校に通い始めたのです。

そもそも自分の意思の元、腹落ちした施策を建てられなかったのは、どのように状況を捉え、物事を考えていくか、を十分に理解出きていなかったことが挙げられます。
その為、会社の薦めもあり、国内MBA大学院などで有名なGLOBISの下記単科講座の受講をはじめました。

クリティカルシンキング講座
マーケティング/経営戦略基礎講座
リーダーシップ講座

各講座を3ヶ月ずつ、計9ヶ月通いました。
ただし、これらの講座で得た知識により物事が即改善し始めたか、というとそんな事はありません。

特に最初に受けたクリティカルシンキング講座は、効果の程がつかみにくいものだと思います。ただ確実に物事の思考方法は変わりました。
少なくとも1つの思考パターンを知る事ができたので、藁をもすがる思いでそれをそれを繰り返したことを覚えています。

この頃は本当に現状改善できるものがあれば何でも試してみよう、という時期でしたので、GLOBISの授業も必死で受けました。GLOBISの授業は「発言の質」と「発言の量」で毎回評価されるのですが、とにかくこの無能な状況から脱却したい、というモードだったので、積極的に発言し、「発言の量」だけは毎回評価されていました(笑)

これは自己肯定感が極限まで低い当時の状況下で、結構な心の救いになりました。こんな自分でも評価されるんだ、的な感じです。
逆に言えばそこまで自己肯定感が低い状況であったのです。

■【アクション2】メンバーとの向き合い

自分自身が部長というポジションに辛くなった理由として、上司は正しくなくてはいけない、メンバーの期待に応えなくてはいけない、という思いがありましたが、部長を降りて、同じチームメンバーの2名がその状況を打破してくれました。

2名と接する時間が長くなったこともありますが、自分に対して良いと思うこと、悪いと思うことを率直に語ってくれたのです。

今までの自分が、【正しいこと】【正解を話そう】としていたこととは全く真逆で、論理的ではなくても、メンバー自身の言葉で思いを話してくれました。降格したリーダーにしっかりと向き合ってくれた事が非常に救いでした。

そのようなスタンスで向き合うので、こちらも自然と本音が出ます。
本音なので、ロジカルでなかったり整理されていないこともたくさんありましたが、思考が整理していない状態も含めて、メンバー二人は理解してくれました。

それまでそのメンバーの一人に「他人の言葉を話している」と言われたこともありましたが、思考の揺れる過程や、上司という立場だと言わざるを得ないことについても赤裸々に話す事で、今まで自分で抱えていたものを理解もしてくれたのです。

もちろん意見が合うことばかりではありませんし、時には激しい議論にもなりました。
ただ相手が考えている背景や、なにより理解しようとしてくれている信頼感を感じられた事から、正しいこと、間違っていること、あらねばならないこと、などを気にせず、自分の意見を素直に伝える事ができるようになったのです。

これは本当に救いでした。

このような話し合いを重ねる事で、やるべき施策をチームとして明確にでき、一体感を持って取り組めました。幸い結果もでました。
この過程を通して、少しずつ自己肯定感も回復していったのです。

3年前のGWは本当に辛い状態で過ごしていましたが、その経験を踏まえて今の状態があると思っています。

その時は「降格」という、一見すると受け入れがたい状態でしたが、実力が伴っていなくても、部長というポジションから見える風景を見て、体験できたことで、理想と現実のギャップをリアルに把握でき、その後の改善アクションにつながげる事ができたと考えています。

よく1つ、2つ上のポジションからの視点で考えろ、と言われますが、そのポジションにならないと見えない景色、体験できないことはあると思います。

そう考えると、昇格・降格を個人的には柔軟に行っていくことが、人材育成にもつながるのではないか、と考えています。

まだまだ至らない点もありますし、自分自身の成長も必要ですが、社長というポジションで試行錯誤しながら、スナップマートで「可能性の最大化」を追求していきたいと思います。


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スマホで写真が売買できる、スナップマートの代表取締役社長。
自分の可能性を信じられると他人の可能性も信じることができ、それは世界をポジティブにするとスナップマートを通して感じてます。
その手段としてサブスクリプション、カスタマーサクセス、ユーザーコミュニティーを追求中。
2018年10月に第2子誕生。2児の父。

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