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#332 『論理が身につく「考える音読」の授業 文学アイデア50』桂 聖 (著), 「考える音読」の会 (著)
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子どもたちの心を揺さぶる「考える音読」のススメ
みなさんは、「音読」と聞いて、どんな授業をイメージしますか? 教科書を正しく読む、大きな声で読む… そんな風に思っていませんか?
今回ご紹介する「考える音読」は、従来の音読の枠を超え、子どもたちの心を揺さぶり、作品への深い理解と豊かな感性を育むための、全く新しい音読法です。
従来の音読の課題: 表面的な理解に留まりがち
従来の音読は、ただ文字を正しく読むことに重点が置かれがちで、登場人物の気持ちや作者の意図を深く考える機会は限られていました。 その結果、子どもたちは作品の内容を表面的にしか理解できず、音読自体が退屈なものになってしまっていました。
「考える音読」で、子どもたちは変わる!
「考える音読」では、「なりきって読む」「比べて読む」「理解を確かめながら読む」という三つのキーワードを軸に、様々な音読法を展開します。
例えば、「ごんぎつね」を教材に、「兵十」のセリフを、わざと意地悪な口調で読んでみます。 すると子どもたちは、「兵十って、本当は怖い人だったの?」と、登場人物の隠された一面に気づき始めます。
このように、「考える音読」では、子どもたちは受け身で文章を読むのではなく、登場人物や作者の意図に積極的に想像力を働かせながら、作品世界に深く入り込んでいくことができます。
具体的な音読法: 多様なアプローチで、多角的な理解を促進
「考える音読」では、目的や教材に応じて、様々な音読法を活用します。
登場人物になりきる「ぼく・わたし読み」:「ごんぎつね」の「ごん」のセリフを「ぼく」に置き換えて読んでみることで、まるで自分が「ごん」になったかのような気持ちで、その行動や心情をより深く理解することができます。
強調の効果を体感する「強弱読み」 : 「大きな大きな」といった反復表現を、強弱をつけて読んでみることで、単調になりがちな文章に抑揚が生まれ、作者が伝えたい強調のニュアンスを体感することができます。
情景描写の役割に迫る「情景表現置き換え読み」 : 天気や風景などの情景描写を、全く別の言葉に置き換えて読んでみることで、子どもたちは「あれ?なんか変だぞ」と違和感を覚えます。元の表現と比較することで、作者がなぜその情景描写を選んだのか、登場人物の心情とどのように関係しているのかを、深く考えるきっかけを与えることができます。
これらの他にも、「擬音語置き換え読み」「視点変化読み」など、多様な音読法を通して、子どもたちは作品を多角的に読み解く力を身につけていきます。
まとめ:「考える音読」の可能性
「考える音読」は、子どもたちが単に文章を読むだけでなく、作品の世界を五感で味わい、登場人物の心に寄り添い、作者の意図を読み解く力を育む、素晴らしい学習方法です。
ぜひ、ご家庭でも、親子で一緒に「考える音読」を試してみて下さい。 きっと、今までとは違う作品の魅力に気づくことができるはずです。