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グラフィティと古代壁画の希望(ブラジル/リオデジャネイロ)

リオデジャネイロのファベーラというスラム街を歩いていると、一面壁画の世界に迷い込みました。どの壁画も構図、陰影、サイズがしっかりと計算されていて、豊かな色と形で溢れる個性を持ち、強烈な叫びを潜ませ、ポジティブエナジーに溢れる作品ばかり。震えるほど感動した私は夢中でシャッターを切っていました。

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この壁画の世界の中を歩いていると、古代の洞窟壁画を思い出しました。洞窟の壁と、町中の壁に描く二人。目の前にある大きな壁に描くことで思いを表現する、両者の「態度」がダブって見えたのです。現存する最古の絵は、洞窟の壁画と言われています。そこには動物の群れ、人間、手形などが描かれており、作者が外で体験した感動を、洞窟の中に居る人間に伝えるために描いたと言われています。私たちは、日々の生活の中で心の中に蓄積していく様々な気持ちや思いを、何かしらの方法で発散させなければ心身のバランスを保つことができないものです。古代から現代まで変わらず私たちの生活に深く関わる「表現欲」を、壁画規制が厳しい現代でも素直に自由に表現する、作者たちの「態度」に心を打たれました。

この「態度」は法律をも変えました。リオデジャネイロでもグラフィティは違法でしたが、壁画の数が増え、その芸術力が徐々に認められ、2009年から壁の持ち主の許可があれば合法となったのです。一般市民たちから始まった芸術力によって、町が豊かな色彩と個性に溢れ、それが経済を回し、町が元気になっている現実は、痛快であり、現代芸術における希望の光でした。資本社会下の貧しい場所に、未来を照らす光があるという皮肉な現実を、あなたはどう受け止めるのでしょうか。

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