石の叫び/Isamu Noguchi 美術館(アメリカ/ニューヨーク)
日本人の父とアメリカ人の母の間に生まれた日系アメリカ人彫刻家の美術館「Isamu Noguchi Museum」に行ってきました。
ハーフの彼は学生時代にイジメられ、自然が親友のような孤独な青春期を過ごしたようです。美術学校に通うとミケランジェロの再来とまで賞賛された彼は、彫刻家になることを決意します。第二次世界大戦開戦後、アメリカに住む日系人は強制収容され酷い仕打ちを受けました。志願して行った収容所でもアメリカ人扱いされ、仲間として認めてもらえず、日本に居ればアメリカ人、アメリカに居れば日本人と見られ、帰属する場所がなかった彼にとって、創造こそが血を乗り越えて人と繋がることができるオアシスだったことでしょう。
彼の作品は暖かさ、優しさ、大きな包容力を持っていますが、その奥には迫り来る強烈な叫びを感じます。それは彼の背負った宿命の「硬さ、重さ、不変さ」に対する反逆精神です。心の叫びを「硬く、重く、不動」の石が、見事に代弁してくれているように見え、まるで彼自身を彫刻するかの如く石を彫刻することで、生きる手応えを感じながら人生を全うした彼の勇姿が、作品を通して目に浮かんできました。
また作品からは、宿命を創造で遊び、吹き飛ばしてしまうかのような心意気が感じられ、それも作品の凄みを後押ししています。己の宿命から逃げずに挑んでいる人は強くカッコイイ。宿命を燃料にして、「作る力」で自分を想像し、自分を乗り越え、生きがい、手応え、充実感を感じ、楽しみながら正しいメッセージを実現する。芸術ならではの美しいエネルギーサイクルです。
美術館でのスケッチを元に彼のイメージを絵にしてみました。自然のご加護を受けて東洋と西洋を繋ぐ架け橋となった彼の魂が光り、無限に響き渡っている様を表現しています。