一般質問を振り返る#08その1 後編~ 市内の学校再編について ~
令和6年3月の一般質問その1 後編です。テーマは市内の学校再編についてです。前回は前編として白浜・千倉地区の小学校統廃合の件についてまとめました。後編では教育委員会の広域化に関して質疑をしています。
教育委員会の統合・広域化をしては?
前編の最後に触れたように、平成の市町村合併は、館山市とは統合しないことに決着しました。あれから約20年経ち、今や旧学区をまたいだ統廃合が続いていてその範囲も大きくなってきました。館山市内においても大幅な再編計画が始まっています。
私は白浜・千倉中学校の統合議論が白浜地区で始まった5年前、小学校PTAの副会長でした。当然まだ議員ではありません。当時、地区説明会で教育委員会に対し、
「仮に白浜から千倉に行くなら、館山3中でも三芳中でも距離的に変わらない。であれば館山でもいいという意見も出てくる。たとえば、安房郡市消防本部(安房消防)は安房地域の市町村が共同で組織運営しているし、他にも、市町村圏事務組合ということで安房広域で運営している事業はある(火葬場もそうです)。学校の統合以前に、教育委員会こそ統合して安房全体で考えるべきでは?」
と質問したことを覚えています。その考えは当時から変わってません。そのことを議員になって改めて問うかたちになりました。
安房全体の生徒児童数の減少はより顕著に、そして急速になってきたことは明らかであり、特に市内での学校再編や統合ももはや限界、無理が出てくる時期に来ているのではないか。安房地域もしくは館山市と一体となった学校再編の議論を喚起する時期に来ているのではないか。そんな思いから、
質問:
教育委員会を広域化することについて、市の見解はどうか。
教育長:
学校再編を含む教育環境の整備については、あくまでも児童生徒の教育環境の維持または改善の観点から行っている。広域的な学校再編や教育環境の整備に当たっては、児童生徒数の推移、学校の設置場所の観点からは、地域を超えた学校再編が考えられる場合もある。しかし、安房地区の各市町においては、それぞれに財政状況、交通状況、地域文化、区域の地形や形状など、これらの異なる点を調整するとともに、最も基本的な学校教育の理念、方向性について丁寧に議論、検討していくことが必要と考える。
市教育委員会として、「ぜひ広域化したい、館山も統合対象だ」なんて言えるわけはないですね。そういう意味では想定内なのですが、とはいえ、この質問の狙いは議論の喚起です。「確かにそういうことも考えていかないといけないよな」と、市民の皆さんにも思ってほしい。そこで、議長の許可を得て、以下の資料を議場で配布しました。
説明します。
前提として、白浜小と千倉小の統合を考えるとしたとき、統合小学校は白浜より新しい千倉小学校になると仮定します。
黄色の円
現在の千倉小学校を中心に、白浜の根本区と館山市の市境までを半径とした円です。つまり統合するならこの範囲に住む子達が対象になるのと同じです。赤い線に囲まれたエリア
グーグルマップによると、千倉小学校から根本区までの道路距離は18キロで、移動時間は車で29分と表示されました。これを基に、統計局データベースで「千倉小から車で18キロの距離、かつ29分で到達できる範囲はどこまでか」を抽出。これが赤線の枠内です。北は丸山の大井や鴨川の太海、西は富山の一部まで届きそうです。館山もほぼ含むような範囲になります。赤の◯△
現在の南房総市の小中学校です。(注:白浜中は当時)青の◯△
現在の館山市の小中学校です。
※ちなみに、この資料は館山市教育長にも面談してご説明しています。
皆さん、どうでしょうか。
もちろん細かい条件は別にあるとして、なるほどと思っていただけるか、机上の空論と思われるか。しかし、これが議論の「現在地」であります。
質問:
教育長に伺う。この資料を見て率直な感想を聞かせてほしい。
教育長:
まず1つは、この範囲で考えますと、かつての高校の学区の広さだなという認識を持ちます。今、時間とか距離といったものを考えると、私ども、再編で小学校の範囲とかいったものを決めているが、かつてよりかなり広い範囲で考えているんだなというのが実感としてある。
もう1点が、新しい統合学校の位置等を考えていくときにはスクールバスを走らせるので、当然、乗用車とは違った時間がかかる。あるいは、子供たちを乗り降りさせる。あるいは、例えば18キロをバスが走るとしても、最初の6キロまでは子供たちを乗り降りさせるけれども、あとはそのまま真っすぐ来るとかいったようなことで、時間もいろいろ考えてやっているわけですけれど、この辺については今日いただいたものを基に、通学距離あるいは通学時間というものについてもう一回考えてまいりたい。
現実を客観視するために資料を出しました。
ところで、実は千葉県内には1つ、組合立小学校があります。いすみ市と御宿町にまたがる地区で布施小学校というところです。これは両自治体が共同運営する小学校で、卒業した子はそれぞれの市町の中学校に進学しています。市の一部地域でも組合化するということも可能なようです。調べれば実際の運営について知見を得ることもできるかもしれません。
(注:布施小学校は児童減少のため令和6年度末で閉校が決まっています。児童はそれぞれの自治体の小学校に分かれ通学します)
質問:
組合立学校について、運営実務など調査してはどうか。
教育長:
かつて布施村だったというところが市町村合併等でいろいろ分かれても、旧布施村の子供たちはそこに行っているというような経緯かと思う。
私ども、先ほど小川伸二議員が示した学校の配置図等を考えると、南房総市内で一緒の学校になるよりも、館山市と一緒になった学校のほうが近いところは確実にある。ただ、経費の件とかいった面で、現在、館山市と私ども南房総市では学校に係る経費、1人当たりの教育費とかいうものについては違いがあるので、そういった面でもちょっと無理があるのかなと思う。
それと、もう1つは、教育委員会の組合というのは、かつて白浜、千倉、和田、丸山で朝夷地区教育委員会というのがあった。そして今、南房総市教育委員会ということになっている経緯があるが、当時と今で、全く違う状況が1つ出てきている。今から10年ほど前に教育委員会制度が法的に変わり、かつては教育委員会の中から互選されて教育長が決まっていた。それが法改正になりまして、教育長は市長が任命するという形になっている。
いろんな要素があるが、1つは、首長は教育を教育施策として考えて直接、自分の教育施策を反映させる形で教育に関してやっていける。それまでは教育委員会というのは政治的に中立の立場だということで、市長がいろいろ考えを持っていても、教育委員の合議制でそれがなかなか反映されてないようなところもあった。それが法制度が変わったために、首長が直接、教育的な政策が反映できるようになっている。
例えば館山市と南房総市が組合立で学校をつくった、あるいは教育委員会を一緒にしたというような場合において、果たして首長の考えが異なる場合もあるでしょうし、異ならない場合もある。そういう問題も、かつて朝夷地区教育委員会が設けられたときとは違ってきているので、その辺りは非常に大きな課題になってくるのではないかと考えている。
教育長の選任方法がかつてと今で異なっているということで、つまり時の南房総市長と館山市長で教育施策に対する考え方が違えば、なるほど任命しようがないかもしれません。(ならばいっそのこと自治体合併の話を・・・それはまた別のお話)
さて、たとえば南房総市内でいえば和田地区にはすでに小中学校はありません。丸山地区と統合して嶺南小中学校となっています。白浜地区と違うのは、嶺南は両地区協議の末、新たに土地を求めて建設されたので統合感が強いことです。その点、白浜地区から学校が無くなるとすれば、もう本当に無くなるという感覚になるでしょう。
白浜地区は人口規模は4000人台です。これは千倉地区を除けば市内各地区で似たようなものですが、それなのに学校がなくなるのは地域の持続性にも影響するのではないか。そもそもとして、子どもが減ってきたから統合という前にやらないといけないことがあるのではないか。そこで、
質問:
統合の議論も大事だが、単式学級を維持する努力をするべきだと思う、教育長のお考えがあれば伺いたい。
教育長:
県内の小規模校特認校が、小学校でいいますと14校ある。近隣では木更津市、袖ケ浦市、袖ケ浦市は小学校の分校だが、君津、富津にはないわけですね。君津、富津については学校統合のほうが進んでいるのかなと。あとは白井市、野田市、流山、柏、印西、あちらのほうは小規模特認校ですね。
私の推察であれば、そのような市域のところはいずれ団地等ができて、子供は増える可能性があるということもあって、小規模特認校でほかの地区からも来られるような学校で維持していって、様子を見ようというような考えもあるんではないかなと。
翻って、白浜小学校について、もしこのまま複式になっていったとしても、そのデメリットを超えて、残していこうという地域の方々の意志が強ければ、私が最終的に決めるわけではないですけれども、そういった方向性も可能性としてはあるのかなと思っている。
いずれにしても、この3年ほどで白浜地区の子供たちの数が、5人、5人というような形で減っているので、この先の推移もやっぱり踏まえていかなくちゃいけないというふうな考えは持っている。いずれにしても、学校統合のみがあるというふうには、決めてかかっているわけではありません。
合併して18年たちます。この先いつまで旧町村の枠組みで考えるべきなのか。学校の再編を経験した子供たちが大人になる頃には、旧地区にこだわっていないでしょう。その観点でいえば、今は暴論に聞こえるかもしれませんが、旧朝夷小学校区から白浜側はそれで全部1つにしちゃうとか、それより東側は嶺南にまとめるとか。そのくらいのサイズ感で考えても良いのではないか。はたまた、もしかしたら再度の自治体合併も起こり得るかもしれない。もともと平成の合併が当初案通りだったなら、私が今回質問していることはそもそも存在しないはずです。
いろんな要素が絡んできますが、どこまで先を見据えるか、それも大事な視点になってきます。
最後の質問となりました。
質問:
もう少し長い期間で考えたとき、この地域の学校はどうなるイメージをもっているか。
教育長:
私どもが持っている児童生徒数の推移は、令和17年度(2035年)まで持っている。令和17年度という数字がどういう年度かというと、南房総市が合併してできて30年になる。ですから、今後考えていくのには令和17年という、見えている数字を目途に考えていくわけですが、数の問題だけではなくて、やはり今、小川議員がおっしゃったような、南房総市ができて30年になったときに、旧町村の意識とかいったものが果たしてどれだけ残っているのか、あるいはそういった旧町村の枠組みをどんなふうに超えていくのかといったものを併せて考えていくときに来ているのかなと。学校再編につきましても、そのような、今申し上げた2つの要素は、やっぱり避けて通れない問題かなというふうに考えている。
教育長は南房総市の教育長という立場のなかで最善を模索して尽力されていると思います。学校再編には大きなエネルギーが必要でしょう。地域や保護者の思いと教育環境の行く末にしっかり向き合って取り組んでこられた方の発言は重みがありました。尚のこと、我々政治側の役割はより重要になってくると質問を通じて感じた次第です。
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まとめ
市内の学校再編、とりわけ私の母校でもある白浜小学校の再編について質問をしました。児童の減少、そして出生数の減少、周辺地域の状況、やはりいろんな客観的な情報が見えてきた中で、将来のことに触れないでいるというのはおかしいなと思い今回取り組みました。
我々議会、議員が市民の皆さんの負託をうけて地域や未来のことを議論していくわけで、そこに責任があると思っています。その点は、質疑の中でも触れさせていただきました。また、折を見て皆さんと意見交換ができればいいと思います。
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