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一般質問を振り返る#07 前編~市の財政状況とその将来予測について~

令和5年第4回定例会

 今回の質問はタイトルの通り、市の財政についてです。時期は去年の12月です。当時はある公共事業の議論が随分尾を引いていた頃のことです。何にお金を使うのかで捉え方に違いがあるといいますか、市内の議論も様々でした。特に計画の見直しを主張する方たちは財政へのインパクトを心配していた様子。だからこそ質問を通じてはっきりさせようと思いました。新人議員の私から見ても、「いつまで同じ話をしているのだろう?」と感じていたし、「結局、市は金があるのかないのか、どっちなんだい?」という話です。(金があればなんでもやっていいという趣旨ではないです。念の為)

 そもそも市民も互いに共通理解の上で議論せねば話もかみ合いません。語弊がありそうな書き方になっているところもあると思いますが、分かりやすさ優先ということでご容赦願います。では先に結論から。
 
 この市はお金があります。他の自治体がうらやむほどに。ただし今は。

 



市の財政状況と将来予測について


 少々前置きを。

 財政に関しては、将来負担比率は今後10年程度までは発生しない(注:10年程度先までは推計できる、それより先は不確定要素が多く無意味)ことは、以前より市から公開され、広報『みなみぼうそう』でも示されています。 

 だけれど、「大きな建設事業によって負担が大きい、もうお金がないんだ、借金ばかりだ、将来世代にツケを残すな」というようなお声があり、他方で「貯金がたくさんある、交付金がこれから先も入ってくる、何でもできる」というお声も聞く。その中間のような、「XX事業は市の財政から見て金額が大きいのか小さいのか分からないが、大丈夫なのか」というようなものもありました。それぞれ間違っているとは言いませんが、特に借金の話についてはあまりに極端な話になっていると私は感じていました。


 いずれにせよ、不十分な情報で市民が何かを判断しないといけないとしたら、それこそ残念なことです。そこで、市から示されている数値やデータを踏まえ、改めて市の財政について尋ねました。

質問:
 市の積立基金(貯金)と地方債(借金)は、それぞれ今どうなっているのか。


市長:
 積立基金残高は令和4年度末で約241億円だが、今後予定している大規模事業の財源として特定目的基金を取り崩すなどにより徐々に減少し、令和14年度末では約206億円となる見込み

 市債残高は令和4年度末で約222億円だが、令和6年度末の約230億円をピークにその後減少し、令和14年度末時点で約121億円となる見込み。 

 また、令和4年度末の市債残高約222億円に対し、将来交付される交付税額が約220億円あり、市の実質的な負担(注:借金)は約2億円、1%程度である

ちなみに借金の99%は将来交付金として市に入るので、借金は実質1%相当

とのことでした。
整理しましょう。

仮に、令和4年度末の積立基金241億円を1万円として計算すると、

・貯金は 10,000円(241億円)
・借金は  9,211円(222億円)

となります。これが令和14年度末には、

・貯金は 8,547円(206億円)
・借金は 5,450円(121億円)

となります。
 しかも、令和4年度末時点の借金である9,211円のうち99%が国から交付金として今後(段階的に)交付される予定です。なんでそんなに国が面倒見てくれるのかというと、町村合併により国が公共施設等を再整備できるよう交付金を上乗せしたり、合併してしばらくは街づくりにお金がかかるだろうからと、費用を高い比率で補助してくれる制度を活用できたからです。そうやって市はやりくりして蓄えてきました。ですから、それを踏まえると、

・実質的な借金は、92円(2億円)

という説明です。嘘でもなんでもなく事実としてこうなっています。



そうは言っても合併による交付金ブーストはいつかは終わるし、市の環境も変わっていきます。ずっとのんびりしてるわけにはいけません。注意しておくことはどんなことがあるか質問しました。

質問:
 財政の将来予測について伺う。将来起こり得る財政的課題や視野に入れておくべき点について、市の見解はどうか。


市長:
 財政シミュレーションでは、推計期間(注:10年程度)中に赤字は発生しない見込み。財政健全化の指標である実質公債費比率及び将来負担比率も悪化せず、健全な状況が続く。特に将来負担比率については、市債残高などの債務の額よりも、債務に対し将来交付される交付税額及び現在保有している基金などの充当可能財源の合計額のほうが大きく、将来的な債務がないという結果となり、財政的に健全であると判断できる。

 ただし、交付税の依存度が高い当市の財政運営は、国の政策に非常に左右されやすいこと、及びこの先迎えるさらなる人口減少、少子高齢化の進行へ対応していかなければならない

 また、昨今の物価高騰、資材費高騰の影響を受け、公共施設の管理運営に係る物件費、改修整備に係る工事請負費、各事務事業における物件費及び補助費などが増加する見込みである。

 財政シミュレーション上は、物価高騰などの影響を部分的に見込んではいる。しかし、特に経常的にかかる経費の増加は、財源が不足する場合には、それを補うために基金の取崩しなどにより対応せざるを得ない。これが常態化してしまうと、すぐに基金は枯渇してしまう。

 したがって、公共施設の再編整備や事務事業の見直しなど、引き続き将来を見据えた持続可能な財政運営の確保に努めるとともに、将来世代に負担を残さない行政基盤の構築に取り組んでいく。


つまりは、
 ・今は財政的に余裕がある。実質的な負債もほぼないに等しい。
 ・ただ、国の制度に依存している以上何があるか分からない。
 ・将来は人口減少や少子化で税収も減るだろう。
 ・今のうちに公共施設を再編したり、ランニングコストを見直していく。

 そういうことでしょう。会社でもご家庭でも、資金(財源)の目処を立てながら将来に備え手を打つのは当然と言えます。
 では、当市は近所の町や市と比べたらどんな状況だろうか。気になるのが人情というものです。

質問:
周辺自治体や当市と類似した自治体との比較ではどうか。


市長:
 近隣市町及び人口規模が当市と比較的近い県内合併市など、当市を含めた8団体の令和4年度決算の状況を見てみると、実質公債費比率及び将来負担比率などから、いずれの団体も財政的には健全であると思われる。

 市域の広さ、人口規模、年齢構成、各市町が注力している施策などの違いから、一概によし悪しの判断はできないが、それぞれの比率を比較してみると、実質公債費比率は8団体中、当市は7番目(注:比率が高い方から2番目)だが、将来負担比率は8団体中、将来負担なしと判定されている団体は当市のみとなっている。
(注:将来負担比率とは、財政規模に対する借入比率。南房総市は将来負担額よりも充当できる財源が上回っているため比率が算定されない状態)


 以上が、冒頭の市長への質問と答弁でした。

 いかがでしょうか。
 ある程度、今の市の財政状況は伝わったのではないでしょうか。

 

余裕があっても未来のためによく考えて使おう


次回、後編では市長答弁の後の再質問を振り返ります。

 この記事が市政の課題や解決策を皆さんと一緒に考えるきっかけになれば嬉しいです。共感いただけたら、ぜひ『♡(いいね)』を押して応援していただけると励みになります!




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