東京に出てからの話と、ワールドトレードセンターの映像
18歳で東京に出て大学に入り、4年後に就職をした。超がつく平凡。
写真は大学に入った頃、友達の影響で撮り始めた。といっても、猫だの空だの、何撮っていいのかはよく分からなかった。ただとにかく撮ったものが形になるのが楽しくて、年額五千円払えば暗室使い放題という大学の写真部に入り、手焼きでプリントする日々を過ごしていた。
こう書くと文化系男子に見えるかもしれないが、実は中、高、大と10年間、体育会のバレー部でスポーツ一筋な日々を過ごしていた。高校では県の選抜選手にも選ばれたりして、ほんのちょっとチヤホヤされたりもした。
だから写真は、どちらかというと息抜きというか、気楽な趣味という感じだった。
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ある日、大学から帰ってテレビを点けたら、ワールドトレードセンターに旅客機が突っ込む映像が流れていた。きっと多くの人が同じ視覚体験をして、同じ誤解をしたと思うけど、しばらく映画か何かだと思って眺めていたのをよく覚えている。
この映像は世間知らずな自分にとって大きな事件だった。それまで自分にとって「外国=ほとんどアメリカ」で、中東の戦争なんかは全部、正義のアメリカVS悪の中東諸国、という認識だった。テレビのニュースを見ててもわかりやすく世界情勢を話す番組なんてなかった(というか自分に理解する力がなかった)し、どこか海の向こうの関係ない世界で起きている別世界の出来事と思っていた。
そんな無知な少年ですら、911という出来事とその映像は響いた。それは単に国際問題について、という事ではなくて、「今まで表だと思っていたものが、裏から見たら裏だった」ということに気づいたということだった。
ちょうど社会人として世に出る1年半前のこと。