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秀逸である必要はないのかもしれない

今日はずっと空が重い感じでした。「どんより」という形容詞はこのためにあるのかというくらいの重さです。

流石に旅行をしているという気の高ぶりからか、普段の休みの日と比べるとと3時間くらいは早く目覚めてしまいました。9時でした。とりあえずコーヒーを飲んで、礼文島に行くフェリーを逃したので、まずはすぐ近くのノシャップ寒流水族館を目指すことにしました。

稚内市街では当たり前にシカが闊歩していました。自衛隊の敷地の中にもいて、ランニングする隊員さんの横で草を喰んでいて、その自由さになんだか笑ってしまうと同時に、ちょっと羨ましくも思いました。車が近づいても全く意に介さず我が道を行く姿に、シカっていいなあと思いました。

でもよくよく考えると、このクソ寒い中で雨を凌ぐ場所がないのはなかなかツラいかもしれないです。暖房の効いた車内で「歌うたいのバラッド」を聴きながら快適に過ごしていると、人間も悪くねえなと思いました。

ノシャップ寒流水族館は、青少年科学館と併設されていました。南極の調査隊の資料が詳しく展示されていて、「宇宙よりも遠い場所」が大好きな僕としてはとても興味深く見て回ることができました。コンテンツがそれ単体だけで完結せず、観た人にとって外に広がるきっかけたり得るのはとても素敵なことだなと思います。そういう映画を作りたいなと思いました。

科学館も水族館も、展示への愛情を感じました。手書きの掲示も多かったのですが、とても細やかで、職員の方がちゃんとそれらを愛していることが伝わってきました。アザラシへの餌やりをして、ノシャップ岬を後にしました。

だんだん雨足が強くなっていく中、宗谷湾沿いを走りました。途中、「秀逸な道」と書かれた標識が立っていました。確かに、雨の中でも壮観だったので、もし快晴だったらさぞ素晴らしい眺めなのだろうなと思いました。とはいえ、「秀逸」と自分で言い切れるのは羨ましいなと思いました。

そんなことを考えているうちに、今回の旅の目標であった宗谷岬に辿り着きました。意外とヌルッと目の前に最北端の碑が現れました。雨はすこし落ち着いていましたが、風が吹き荒びものすごく寒かったので、急いで定食屋に駆け込んでホタテラーメンを食べました。温かかったです。

最北端といえど海は海で、当たり前ながらいつも見る水平線と明らかに何かが違うわけではありません。向こうにサハリンが見えることに少し感慨深さを覚えながらも、ちょっとだけ、ほんのちょっとだけ、「こんなもんか」と思った自分がいます。

強烈な眠気が襲ってきたので車でちょっとだけ眠りに着きました。宗谷岬に辿り着く夢を見ました。目覚めると宗谷岬にいました。

夕暮れも近かったので、また昨日と同じ温泉に行って、宿に帰りました。

今日はシカ肉を食べてビールを煽りました。美味しかったです。でも、今日路上ですぐそばを通ったあいつの顔が浮かんでしまいました。

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