スミ ヨウスケ

フリーの映像作家 / 撮影監督。海が好きです 監督作に「レミングたち」(2020)、「…

スミ ヨウスケ

フリーの映像作家 / 撮影監督。海が好きです 監督作に「レミングたち」(2020)、「露光時間」(2021)、「たまには船にでも乗ろうか」(2022)、「寄り鯨の声を聴く」(2023)など 過去作品 https://yosuke58fl.tumblr.com/

マガジン

  • 短編映画『寄り鯨の声を聴く』の覚書

    短編映画『寄り鯨の声を聴く』の制作の記録を残します。

  • 撮影の記録

    これまで撮影で参加した映像作品についての記録を忘備録を兼ねて、撮影監督の目線でまとめています。

  • 映画「レミングたち」の覚書

    映画「レミングたち」の制作の経緯、携わってくれた方々の記録です。

  • 長期入院してしまったフリーランス

    2019年夏、感染性心内膜炎で入院・手術をした記録です。

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映画「レミングたち」の覚書 | #0 生きることを、つづけるために

2019年7月22日、心臓が一時的に停止しました。 まったく思いもかけず命の危機に瀕する病気が発覚し、心臓の大動脈弁の置換手術を行いました(経緯)。運良く今ではもうほとんど普通の生活を送ることができるようになっています。大変な出来事でしたが、それもあっという間に遠い記憶になりつつあります。 人生の転機この出来事を人に話すと、よく「大変だったね」と言われます。健康を損ねたので、一般的には確かに不幸な出来事でした。周りの人にもたくさん迷惑をかけました。だからあまり大きな声では

    • 短編映画『寄り鯨の声を聴く』の覚書 | #3 音楽のはなし

      短編映画『寄り鯨の声を聴く』のオリジナル・サウンドトラックが配信リリースされました。 本作の劇伴は、「たまには船にでも乗ろうか」「ROCK YOU」に引き続き、ioniさんにお願いしました。 宅録作曲家/トラックメーカー ioniさん ioniさんの最近のお仕事、タンタンとクセになります。 ioniさんとは気付けば長いお付き合いで、音楽と映像という関わり方で、これまで一緒に色々な作品を作ってきました。 勢いで作った映像とか、 ioniさんの楽曲のMVとか、 短編

      • 短編映画『寄り鯨の声を聴く』の覚書 | #2 でっかいことはいいことだ

        「寄り鯨の声を聴く」を作るにあたって、いろいろと理屈を捏ねたりもしましたが、結局のところ初期衝動はこれにつきます。 「でっけえ!!!」 シロナガスクジラに出会う(模型) クジラやストランディングについての興味を持ったものの、とはいえまだ具体的な描きたい何かがあったわけではなく、どうしたものかと考えた結果、とりあえずまずは標本が展示してあるらしい博物館にでも行ってみようか、と思い至りました。とにもかくにも東京・上野にある国立科学博物館に行ってみることにしました。 国立科

        • 短編映画『寄り鯨の声を聴く』の覚書 | #?? 監督と撮影を両立する

          覚書を書き進めるのもすっかり停滞しておりました。本当は制作過程の時系列に沿って書いていこうと思っていたのですが、ちょっと順番を飛ばして今回は撮影の話です。 なぜなら、明日から『とくしま4K+NEXT』という映画祭で3日間限定のオンライン配信が始まるからです。"4K"ってやつは画質がいいんです。本作は撮影面でもこだわりがあって、その分ぜひとも良い画質で観て欲しいので、少しでも興味を持ってもらえたらいいなと思って先に書くことにしました。 自分で撮影する 映画づくりにおいては

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          たびたび旅に出る

          北海道の旅を無事に終えることができました。比較的悪天候が続きましたが、最終日にとても良いものが見ることができました。 「とても良いもの」はよくよく考えるとそんなに特筆するようなことではないかもしれないのですが、自分だけが見たものとして胸に秘めて大切にしておこうと思います。 車の運転をしたり飛行機に乗ったりバスに乗ったり、よく考えるとほとんど座っているだけだったので、そういう意味では自宅で過ごすのと大差なかったかもしれません。けれど、見渡す限りのスケールの大きさと空気の心地

          たびたび旅に出る

          秀逸である必要はないのかもしれない

          今日はずっと空が重い感じでした。「どんより」という形容詞はこのためにあるのかというくらいの重さです。 流石に旅行をしているという気の高ぶりからか、普段の休みの日と比べるとと3時間くらいは早く目覚めてしまいました。9時でした。とりあえずコーヒーを飲んで、礼文島に行くフェリーを逃したので、まずはすぐ近くのノシャップ寒流水族館を目指すことにしました。 稚内市街では当たり前にシカが闊歩していました。自衛隊の敷地の中にもいて、ランニングする隊員さんの横で草を喰んでいて、その自由さに

          秀逸である必要はないのかもしれない

          然るべき場所でシカに出会う

          今日はほとんど車中で過ごしたような気がします。北海道はデカすぎる。 札幌から稚内までのナビを入れると5時間半と表示されました。早々に無視して海岸にまっすぐ向かい、そこからずっと海岸線沿いを北上していきました。朝8時頃に出発して17時頃に稚内市街からほど近い温泉に到着したので、結局9時間くらいかかったみたいです。 出発してからしばらくはずっと雨が降っていました。控えめに言うと土砂降りでした。 ひたすら海沿いを進むだけでよかったので、ナビは切ってしまいました。 例えば高速

          然るべき場所でシカに出会う

          札幌の銭湯には島唄が流れている

          今日は成田空港から新千歳空港へ飛びました。着陸時にちょうど日没する頃合いでした。毎日毎日起きてる現象であるはずなのに、どうして日没というものはこんなに心奪われるのでしょうか。飛行中はずっと窓の外を眺めていて、たぶん途中ちょっとうとうとして、あっという間に到着しました。 途中、猪苗代湖が見えました。ついこの間行った場所を俯瞰して見ることで「地図と同じ形なんだなあ」という気付きを得ました。googleマップのことは信用しているけれど、やはり実際に目にすると感慨深いものです。

          札幌の銭湯には島唄が流れている

          役に立たない旅に出る

          この数年、遠くへ行った機会を思い返すと、やることがあってその土地その土地を訪れています。撮影なり、ロケハンなり、映画祭なり基本的には仕事に紐づいていることが多い気がします。その合間でどこかに立ち寄ったりすることはあれど、あくまで隙間の時間に行けるところにしか行きません。 なので、旅そのものを目的とした旅をしようと思いました。 完全まっさらに自由だとそれはそれでどう身動きを取ればいいのかわからないので、以下を今回の旅のルールとしました。 ・宗谷岬にたどり着くこと ・行きと帰り

          役に立たない旅に出る

          短編映画『露光時間』の覚書

          2021年に「露光時間」という短編を制作しました。 一通り映画祭も回り終わったので、YouTubeにて公開しようと思います。夏の終わりの頃の物語、ぜひご覧いただけると嬉しいです。 この作品の最初の企画書の日付が2020年7月27日、"作ろう"と考え始めてから気付けば3年以上が経過していました。今更ですが、本作のことについての記録を全然残していなかったので、うろ覚えながら覚書を残しておこうと思います。 きっかけ 前作「レミングたち」で音楽を担当してくれたイトウナホさんの

          短編映画『露光時間』の覚書

          短編映画『寄り鯨の声を聴く』の覚書 | #1 淀川に流れ着いたマッコウクジラ

          先日から「寄り鯨の声を聴く」のショート版がオンライン配信されています。ありがたいことに好評なご意見ご感想をいただき、大変嬉しく思います。 引き続き、作品の制作過程について記していこうと思います。まずは、今回のモチーフであるクジラのストランディングとの出会いについてです。 年始のこと 2023 年 1 月に大阪府淀川の河口にマッコウクジラが迷い込んだニュースをご存知でしょうか。メディアでは「淀ちゃん」と呼ばれ注目されていましたが、残念ながら彼は海に帰ることができず、そ

          短編映画『寄り鯨の声を聴く』の覚書 | #1 淀川に流れ着いたマッコウクジラ

          短編映画『寄り鯨の声を聴く』の覚書 | #0 前書き

          新しい短編作品を作りました。 『寄り鯨の声を聴く』と題したこの作品は、タイトルの通りクジラをモチーフとしたお話です。いつものように、海に向かう話でもあります。 海に住む生物が海岸に乗り上げて身動きがとれない状態を"ストランディング"と呼びます。「寄り鯨」とは、ストランディングしたクジラのことを指す日本古来のことばです。 四方を海に囲まれた日本では、僕らが想像する以上に多くの鯨類が浜辺に漂着しています。報告されるストランディングの件数は年間300件を超えるそうです。 20

          短編映画『寄り鯨の声を聴く』の覚書 | #0 前書き

          映画 『世界は僕らに気づかない』の覚え書き

          つい最近、僕が心底尊敬している友人が、自身が携わる作品に対して懸ける思いを楽しげに熱い文面で綴っているのを読みました。何の関係のない自分が、それを読んで触発されワクワクしているのを感じて、ぜったい観に行かねばと思いました。 同時に、言葉を尽くして尽くしてやっと、誰かが観ようと思ってくれるかもしれないということに気づいて、久しぶりに自分の携わった作品についてつらつらと書いてみようと思いました。 映画『世界は僕らに気づかない』2023年1月13日(金)から、『世界は僕らに気づ

          映画 『世界は僕らに気づかない』の覚え書き

          映画「レミングたち」の覚書 | #19 それからしばらくして

          2年半前、『レミングたち』という作品を作りました。映画祭巡りも一通り落ち着いて、あとはこのまま眠らせるのみとなった本作を、色々と考えてYoutube上で公開することに決めました。 30分の短い作品です。ふと気が向くことがあれば観てもらえたら嬉しいです。 個人的な話3年前、2019年の7月、心臓の手術をしました。やっぱり自分の中では大きな出来事だったと思います。つい最近のようでいて、でも気付けばそのときの記憶はだんだんと朧げになりつつあります。残しておいた記録を読んで、そう

          映画「レミングたち」の覚書 | #19 それからしばらくして

          MV「雨のまにまに」によせて

          長距離を移動するのが好きです。 座席に身を委ね、窓の外の移り変わってゆく景色を眺めてるのが好きです。 新天地に向かっているようでもあり、元いた場所から逃避しているようでもあり。早くついてほしいというそわそわと、ずっとこのまま揺られていたいという倦怠が同居しています。着実に前へ前へと進んでいるはずなのに、身体はすっかり脱力しきっています。 期待と不安と安らぎとがごちゃまぜになった、なんとも不思議なえも言われぬ感覚です。 高松へゆく高速バス15歳のときに『海辺のカフカ』(

          MV「雨のまにまに」によせて

          映画撮影の記録 | 「ふたり ~あなたという光~」

          2020年10月~11月ごろに撮影監督として携わった自主中編映画「ふたり~あなたという光~」についての覚書です。せっかくなら自分の立場からこそ書ける、撮影に関しての記録を残しておこうと思いました。何かの参考になれば幸いです。 監督は佐藤陽子さん、中編映画「わたしのヒーロー」に続き呼んでいただきました。本作は現在ポスプロが進行中です。2021年2月11日にクラウドファンディングのリターンとしての初お披露目が予定されています。 クラウドファンディングは1/16終了です。この映画

          映画撮影の記録 | 「ふたり ~あなたという光~」