- 運営しているクリエイター
記事一覧
論文「ラッセルの円環モデル」を日本語訳する
人の情動を、どう分類し、どう相関図にまとめるか?
1970年代後半から綴られた論文が、アフェクティブコンピューティングへの注目と相まって再脚光を浴びている。
人の情動という最もアナログな情報をデジタル化するには、何らかの数学的、工学的なロジックが必要で、実はその研究が40年も前にまとめられていた。
現在では生体信号を情動と結びつけるために引用される「ラッセルの円環モデル」。その名前はある分野
感情モデルと心理学の位置づけ
「感情モデル」で画像検索をすると初めに目につくのがプルチックの感情の輪であろう。
この輪には感情の次元が分類され、その強度が示され、そして円環の順序に並んでいるように見える。
よく見ると、各次元の位置関係には相関があるようで、実は曖昧な順序になっている。
ラッセルの円環モデルはプルチックのモデルを追うようなタイミングで発表されているが、実は数学的、工学的アプローチがなされており、有意な相関を
本論:一般の人による感情の概念化
感情の状態を分類するのは心理学者だけではありません。他の人との日常的な交流の中で、ほとんどの人は他の人の気分を解釈し、お互いの感情的な反応を予測し、それらの感情的な反応を修正しようとします。そうすることにおいて、一般の人は感情に関する彼ら自身の知識に頼らなければなりません。一般の人は感情について学び、その知識を認識構造へと組織化し要約しているのです。
結果として認識構造は、特定の出来事に対する視
本論:非言語的感情表現の分類
人々を先見的知識のない(*専門的知識によるバイアスがない/原文のまま「ナイーブな」という言い方も浸透しています)心理学者と見なすことができるという考えは、Kelly(1955)とHeider(1958)の影響を通して、人格と社会心理学において重要な役割を果たしてきました。それにもかかわらず、一般の人の感情の理論に関する研究はほとんどありません。これらは、被験者がその「現在の情緒状態の内観」よりも、
もっとみる本論:言語感情表現の分類
英語に内在する感情構造の研究もSchlosberg(1952)の仮説を支持しています。意味的差異研究は、評価、活動、および効力の次元が自然言語の意味の主要な構成要素であることを示し(Osgood、May、&Miron、1975)、これらの次元は本質的に感情的であると解釈されています(Osgood、1969)。
Averill (1975)は、感情用語の意味的格付けを具体的に研究し、評価(快さ-不
本論:感情の認知構造
図1
循環順序における8つの感情概念(*矢印を加筆)
一般の人の感情空間メンタルマップに関する、3つの研究の最初のシリーズでは、図1に具体化された仮説がテストされました。
感情の領域を表すために、28の用語サンプルが選択されました。これらの28の用語は、被験者の現在の感情状態ではなく、感情の内部表現に依存する手法によってスケーリングされました。1つ目は、Ross(1938)の手法に基づいており、
本論:(実査)用語の循環スケーリング
表1
感情用語が、円周上の8つの位置に配置される頻度
注意:各被験者(N = 36)について、ポジションNo.1は、被験者が「興奮」を置いた場所として定義されたため、No.1に「興奮」への36のエントリがありました。 次に各被験者に対し、それぞれの位置に連続番号が付けられました。対角要素は斜体で示されています。(*長方形を加筆)
----------
方法
被験者:被験者は、研究に参加するこ
本論:カテゴリの並べ替えタスク
表2
28の感情用語が8つのカテゴリに配置される頻度(*2つの長方形を加筆・・・薄い線があいまいさの部分)
----------
表2は、28の刺激用語のそれぞれが8つの感情カテゴリに分類される頻度を示しています。 8つのカテゴリは、図1の予測(およびサポート)に従って表内で順序付けられています。逆に、表2のデータを使用して、8つのカテゴリの順序を推定することもできます。頻度データが循環順序で予
本論:28用語の極座標
図2
28の感情用語の、直接循環スケーリング座標
----------
Ross(1938)の手順を使用して極座標を単純に計算しました。8つの感情カテゴリには、図1に示す理論的な(経験的ではなく)円形の順序に基づいてスケール座標が割り当てられました。 喜び=0度、興奮=45、覚醒=90、苦痛= 135、悲惨= 180、憂鬱= 225、眠気= 270、充足= 315。
28用語の極座標は図2にプ
本論:(実査)用語の多次元スケーリング
図3
28の感情用語の多次元スケーリング
----------
方法
被験者:被験者は、研究に参加するために謝礼を支払われたブリティッシュコロンビア大学の男女学部生34人でした。以前のスケーリングの結果が「心理学コースで学んだ教材の影響を受ける」という懸念があったため、心理学コースに登録したことがない被験者をこの研究に採用しました。
手順:各被験者は28の感情用語のセット(各用語は個別のカード
本論:一次元スケーリング
図4
快-不快(横軸)と覚醒度(縦軸)のマトリックスにおける28の感情用語の一次元スケーリング
----------
これまでの結果から、28の用語は2次元の双極空間に関して定義可能であるように見えます。また、この空間は、2つの直交する次元、「快-不快」、「覚醒度」の観点から定義できるという仮説も立てられました。したがって、これら2つの次元に沿った28用語の単次元スケーリングの結果を図4に示し
本論:スケーリング間の定量的比較
表3
28の感情用語の3つのスケーリング間の平均冗長性
注意:報告されるすべての値は、p≤.01(N = 28)で有意です。 直接円形スケーリングに使用される座標は、各項の角度のサインとコサインでした。
----------
図2、3、および4から、3つのスケーリング手法で同等の結果が得られたことがわかります。 この等価性の定量的評価は、スケーリング間の正準相関分析によって得られた「平均冗長(*