3DCGの世界でも感じた『プロセスエコノミー』の片鱗
最近気になっていた書籍『プロセスエコノミー』を読みました。
いつもは読んだ本についてnoteにまとめたりはしていませんが、この本は、普段あまり聞き慣れない内容であり、共有することに価値があるかも?と思いまして。
世のクリエイターさんたちが、今起きている大きな流れを理解する上で、理解しておいた方がいい内容だと感じたんです。
書籍の内容を、ざっくりまとめると…
といった感じです。「プロセスを共有する」という考え方は以前からもありますが、この本ではその理由やメリットが、具体例を通して言語化されています。
3DCGの世界でも感じた「プロセス」の価値
プロセスの価値が上がっているのは、自分の身の回りでも感じています。
例えば3DCGの世界では、今やYouTubeのチュートリアルを見ながら操作するだけで、誰でも独学で制作手法を学ぶことができ、驚くほど素敵な作品を作れるようになります。
CGを始めて数ヶ月の方々が、感動するほど綺麗な作品を公開しているんです。つまり、アウトプットによる差別化が難しくなっている。
これは、3DCGソフトが便利で扱いやすくなり、解説やチュートリアルのような情報が簡単に手に入るようになった影響が大きいです。
そして、こうなると確かに「作品そのもの」以外にも目が向き始めます。
ちょうどこの本を読む数日前にも、Twitterで素敵なCG作品を見つけて、「この人はどんな気持ちでコレを作ったんだろう?」と考えたのを思い出しました。
これは、アウトプットではなく、プロセスが気になったと言えます。
もはやある程度のクオリティは前提となり、その先には、作者の「情熱」「こだわり」「ストーリー」のようなプロセスが求められる。それを自分自身も体感していたことに、改めて気付かされました。
自分の本業はエンジニアですが、システム開発やプログラミングに関しても同じ流れを感じます。情報の一般化やテクノロジーの進化という意味では、他の多くの業界でも、この変化は起きているでしょう。
アウトプットは価値がなくなるのか?
じゃあ、これからはアウトプットの価値はなくなっていくのか?
この本は、「プロセスエコノミー」を謳っているので、アウトプットの重要性を強くは論じていません。でも、アウトプットの積み重ねは今後も必要にはなると思います。
なぜかと言うと、全く実績のない人が創作するプロセスを見ても、興味を持ちにくいからです。
例えば、一般人より歌が下手な人が、「歌への情熱だけは、誰にも負けません!」と言っても、信憑性がありません。それでは練習のプロセスを見ても感情移入できないでしょう。
仮にプロセスだけで興味を持ってくれた人がいたとしても、アウトプットのクオリティが低いままだと、最終的にはファンが離れてしまう。応援し続けるにも体力が要るので。
なので、アウトプットの価値は残るけど、価値の比重がプロセスに移っているから、今まで通りアウトプットだけに注力しているより、プロセスも見せた方が、ファンが増える可能性が高まるよ。その結果、アウトプットのクオリティ向上にも繋げられるかもよ。という内容なのだと感じました。
00:00 Studioを使ってみて
この本の内容を体験してみようと思い、「プロセスエコノミー」を言語化したけんすうさんが立ち上げた、00:00 Studio(フォーゼロスタジオ)という創作の様子をライブ配信するサービスを覗いてみました。
ユーザーは漫画家さんが多いのかなと思ったら、パン屋さんの作業風景や、お店のシャッターにイラストを描いてる様子など、様々なクリエイターさんがライブ配信されてるんですね。
そんな創作の様子を見て、とても面白いなと感じたのが、クリエイターさんが創作されている様子を見ているだけで、わずかに自分の中に親近感が湧いたことです。これは実際に試してみないとピンとこないと思います。
知らない漫画家さんなのに、早朝から真剣に黙々と描いている様子や、描かれているマンガをしばらく見ていると、「完成したら読んでみたいな」という気持ちが生まれたんです。
これは、この本にも書かれているように、「人間は他人とプロセスを共有することに幸福を感じているから」なのかもしれません。紹介されていた下のCMも、とても面白かったです。
きっと相互にコミュニケーションすれば、さらに親近感が増し、「応援したい」という気持ちが生まれてくるでしょう。
00:00 Studioでは、チャットや差し入れ、クリエイターにリクエストを送る機能もあり、うまく活用すれば、確かに本当の意味での長期ファンが増えるかもしれないと感じました。
プロセスが重要になる時代に備えて
自分は元々、どちらかといえばアウトプットに重きを置きたいタイプです。また、成長する人は、他の人が見てもつまらないようなプロセスを、地道にこなし続けられる人だと思っています。
なので、プロセスを共有することに対して、今は少し違和感があるのも確かです。ただ、この本で書かれているように事実を整理すると、価値の変化が起きるのは必然だとも思います。
今や何でもネットワークで繋がり、情報が共有・コピーされ、さらにはAIで効率化・自動化される世界ですから、最後に残る価値は「人」になります。
だから、その人しか持ち得ない情熱やストーリーといったプロセスが重要になるのは、納得感があります。そしてそれは、アウトプットだけに集中していては辿り着けない場所へ導いてくれることもあるでしょう。
クリエイターの方々は、この波に乗る準備を始めておくとよいのかもしれません。例えば簡単なものでは、自分の夢だったり、過去の作品に込めた想いまで載せたポートフォリオを作る…みたいなのも、プロセスの1つだと思います。
まだ普及していない概念であり、リスクもあり、しばらくは手探りの状態になるとは思いますが、この流れがどんな未来を生むのか、とても楽しみです。
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