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論証集書き換え実践(2) - 何かが違う・・

(1)の続き

基本的な方針は、結論がなるべく早い段階で登場するように論証集を加工するということなのですが、何かおかしい。結局文章を全部書き直す結果になり、自分の理解も反映させた見やすい文章にはなるけど、手間が掛かりすぎる。

すごく無駄なことをしてる気がする。

おそらく、判例や研究者の書いたテキストに、問題提起、理由、規範定立・・などとラベルをつけていって文章断片を取り出して行くという経緯で論証は出来ていると思うのですが、上記のようなラベルが決まりにくい多機能な文章断片に出会うことも多く、論証に機能というラベルを付けて抽出するというこのアプローチは最善のものではないような気がしてきました。

もっと短く、もっと簡潔に、既存の論証を言語化ないし記号化できる手段があるような気がしてきました。

とりあえず、加工済み論証を記載しますが、迷走してますね・・


1. 制限行為能力者の詐術

(問題提起+結論)
制限行為能力者が、みずからが制限行為能力者であることを黙秘しているにすぎない場合には、21条の「詐術」にあたらず、その行為を取り消すことができるが、それに加えて、普通に人を欺くに足りる言動を用いて相手方の誤信を誘発し、または誤信を強めた場合は、「詐術」にあたると解される。(判例に同旨)

また、制限行為能力者が積極的術策を用いた場合も「詐術」にあたると解される。

(理由)
なぜなら、同条の趣旨は、制限行為能力者保護と取引安全の要請との調和を図る点にあるところ、今日においては取引安全の要請が強い点に鑑み、「詐術」の概念を広く解釈すべきであるからである。

2. 34条の意義(行為能力制限説)

(問題提起+結論)
民法34条(法人の能力)は、法人による「目的の範囲」外の行為は無効となる旨、規定したものであり、法人の権利能力ではなく、行為能力を制限したものと解される。

(理由)
なぜなら法人は、社会生活において独立した社会的作用を営むかぎり、その享有しうる権利の種類に特別の制限を加えることは適当でないことを鑑みると、「目的の範囲内において・・」とは、法人の享有しうる権利の種類がその法人の目的によって制限されるという意味ではなく、範囲内の行為によって権利を有し義務を負うという意味であると解されるためである。

(問題提起+結論)
一方、「目的の範囲」内か否かは、定款その他の基本約款の目的にあげられた事項にかぎるのではなく、この目的を遂行するのに必要な範囲内の全般にわたるものと解する。

(理由)
理由は、目的による制限を厳格に解すると、法人が社会生活において独立した社会的作用を営むという意義を失わせ、また、法人と取引する相手方に不測の損害を与えることになり、妥当でないからである。

3. 協同組合の員外貸付は、34条の「目的の範囲」内の行為か

(問題提起+規範定立)
「目的の範囲」内か否かは、定款その他の基本約款の目的にあげられた事項に限るのではなく、この目的を遂行するのに必要な範囲内の全般にわたるものと解する。

(理由)
なぜなら、「目的の範囲」内か否かをあまり厳格に解すると、法人が社会生活において独立した社会的作用を営むという意義を失わせ、また、法人と取引する相手方に損害を与えることになり妥当でないからである。

(あてはめ)
ここで、員外貸付は協同組合の目的を遂行するのに必要な行為とはいえないものと解する。

(理由)
なぜなら、その禁止は、(1) 員外貸付により貸付原資が減少し組合員の借入れが困難となることを防止し、組合員の利益を保護する必要にでたものであり、(2) 税法上優遇されている協同組合が一般の金融機関と類似の行為をすることを禁止して、一般金融機関の市場を保護する必要により定められたものであるからである。

(結論)
すると、協同組合の員外貸付行為は、「目的の範囲」外の行為として無効となり、協同組合は相手方に対して、不当利得に基づく返還請求(703)をなしうる。

4. 法人の代表理事その他の代表者が法令による権限制限に違反して行為した場合

(問題提起+結論)
取引の相手方が、村長には法令で金銭の受領権限がないことが規定されているにも関わらず、村に貸与するつもりで村長に金銭を貸与した場合、相手方を一般法人法77条5項により保護することはできない。

(理由)
なぜなら、

 (前提)
 一般社団法人の業務に関して代表理事の権限に加えた制限は、善意の第三者に対抗できない(一般法人77V)と規定されているところ、

 (規範定立)
 同項中の「善意」とは、代表理事その他の代表者の包括的代表権に課せられた制限を知らないことを指している。

 (あてはめ)
 そして、この場合の相手方は、上記制限について不知なのではなく、法令について不知なのであり、これは一般法人法77条5項が予定するところではないからである。

(問題提起+結論)
(1) それでは、権限外の表見代理(民110条)の規定を類推適用して保護することは可能か? 可能である。

(規範定立)
法人の利益と相手方との利益の調和から、相手方に法人の代表が受領権限があると信じ、かつ、このように信じるにつき正当な理由がある場合には、110条を類推適用して行為の効果が法人に帰属すると解すべきである。(判例に同旨)

(理由)
村長が包括的な権限を有する者であり、金銭の受領権限をも有すると信じて取引に入った相手方を保護する必要があり、

そして、相手方を保護する直接的な方法は、取引の効力を維持することであるからである。

(あてはめ)
村長に受領権限があると信じ、かつ、こう信じるにつき正当な理由があるため、相手方が善意・無過失である場合には、行為の効果は村に帰属する(民110,109)

(2) また、「一般社団法人は、代表理事その他の代表者がその職務を行うについて第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。」と規定する一般法人法78条により保護することは可能か? 可能である。

・・悪意、有過失の場合(続きは無記載)

(3)へ続く

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