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僕は統合失調症、そして『Wonderwall』





「たぶん君が、僕を救ってくれる人。つまり、君は『不思議な壁』なんだ」






これから、文章も書いていこうと思う。

自己紹介がてら、自己開示をしたい。


僕は統合失調症という精神病を抱えている。
調子の悪いときは、特に妄想がひどい。
例えば、自分の真上を飛ぶヘリコプターが僕を追いかけているだとか、見ず知らずの他人の話し声やテレビのワイドショーの内容が自分の話題で盛り上がっているなど、ありもしない妄想が働く。

…あらゆる景色が、僕に向かって何かメッセージを送ってきている…

そんなふうに思い込んでしまうのだ。周囲に助けを求めたり、他の人からすれば意味不明なことを訴えかけたりすることで、結果的に、家族や周りの人を困らせてしまうことになる。

この病気は大体大きく分けて、急性期、回復期、慢性期とあるのだが、上記のような例は急性期に起こることだ。

しかし、この病気で1番気を付けておかなければならない時期は、実は回復期だったりする。
なぜなら、この時期に「自殺」をしてしまう患者が非常に多いからだ。回復期は、薬などのおかげで妄想などの症状が少しずつ薄れていき、心身ともに体力が徐々に戻ってくる時期なのだが、同時に急性期の時の自分を振り返って「なぜあんなことをしたんだろう」「なんでこんなことになったんだろう」と苦しむ時期でもある。そして、死にたいと思ったり、最悪の場合自殺をしてしまうケースもある。実際、この病気に罹ると、半数以上の人が自殺を考えるという。

僕も、その例外ではなかった。


…ところで、僕はoasisというバンドが好きで、いつ何時だってイヤホンを耳にして聴いていた。何に魅了されたかはわからない。そのメロディの良さにはまり込んでしまったのか、どストレートなロックに魅せられたのか、はたまたバンドの中核をなすギャラガー兄弟の破天荒さに惹きつけられたのか…とにかく、僕を鷲掴みにする何かがあったのは間違いない。

そのoasisの曲だって、急性期の時は全部自分のために作られた曲と思い込んでいた。全ての歌詞が、メロディに乗せて、僕の耳に入り、僕を狂わせた。もちろん、今でこそそんな思い込みは無しで聴けるが、回復期にはoasisを聴きたくないと思ったこともあった。ひどい妄想が、また引き起こされるような気がしたからだ。

でも、そんな僕を救ってくれる曲もoasisだった。

oasisの『Wonderwall』という曲だ。



過去に和訳をしているので、そちらも見ていただければ。

https://note.com/yossy530/n/n884c0353be34



今日はその日になる
君は彼らに非難される
そんな日になるよ
君には実現させるべきことがあった
やらなくてはならないことだった
でもどういうわけか、しなかった
君のことをこんなふうに感じているのは
僕だけだよ
雑踏の中の、あの言葉
街の中にあの言葉があった
「心の灯火は、消えてしまっている」
君は当然、耳にしたに違いない
でも君はそんなこと気にも留めなかった
君のことをこんなふうに感じているのは
僕だけだよ
曲がりくねった道を行く
僕らは導かれる
その場所へ
目が眩むほどの光によって
僕は君に伝えたいことが沢山ある
でも、その伝え方が
わからない
たぶん、君は
僕を救ってくれる人だから
つまり、
君は「不思議な壁」なんだ
今日はその日になるはずだった
でも、君は決して彼らに非難されないだろう
君は実現させるべきだった
やってはいけないことだとしても
ただどういうわけか君は、しなかった
君をこんなふうに感じるのは
僕だけだよ
曲がりくねった道を行く
その場所へ続く道は、照らされる
眩いほどの光によって
君に言いたいことが沢山ある
でも、どう言えばいいか
わからない
僕はこう言った
たぶん君が
僕を救ってくれる人
つまり、
君は「不思議な壁」なんだ
こう言った
たぶん君が
僕を救ってくれる人






とても綺麗な曲だ。しかし、歌詞を見てみると、意味がよくわからない。
何を非難されそうだったのか、「君」は何を実現させようとしていたのか、そして、『不思議な壁』ってどういうこと?


…ここで、ある解釈が浮かび上がる。

そもそも、「僕」と「君」は同一人物、言い換えると、この曲は、自分の中に存在する「もうひとりの自分」について歌っているんじゃないか、と。そして、その「君」は、自殺するつもりだったんじゃないか、と。もうひとりの「強い自分」が、つらいことから守ってくれる『不思議な壁』になってくれているんじゃないか…と。

実はこの解釈、海外では割とメジャーらしい。確かに、この解釈であれば意味がよくわかる。なるほど、もうひとりの「強い自分」、それこそが『Wonderwall』。

ただ、僕が一番気になるのは、「雑踏の中の、あの言葉」というフレーズだ。

僕は調子の悪いとき、あらゆるものが自分へのメッセージに思えていた。そう、「雑踏の中の、あの言葉」に、僕は翻弄されていた。美しく、恐ろしい世界だった。ちっぽけで何者でもないと思っていた自分に、急に世界のすべての光がこちらに向けられたような、そんな気持ちだった。

「死にたい」

バカげたことを思い込んでいた、恥ずかしい自分。それで周囲に迷惑をかけてしまった、情けない自分。こんなことにならなければ、普通の生活ができていたはずなのに、今では、闘病生活。死にたかった。何度自分の首を絞めようとしたか。

でも、僕は今生きている。





最後の最後に、自分を守ってくれる『Wonderwall』。

僕の中にもいた。







作曲者のノエルは、かつてこの曲についてこんなことを言っていた。

**「架空の友人について歌った曲だ」 **



…僕のために歌ってくれていた。
今はそんな気もする。






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