網膜症にみるAGEsと合併症の関係
不定期連載 アポラクトフェリン(29)
ある研究機関で、生体細胞をAGEs
(終末糖化産物)と混ぜて、
丸一日培養する実験が行われました。
その結果、全ての細胞が死滅しました。
AGEsの前段階である糖とタンパク質を
混ぜても、細胞を殺すようなことは
ありません。ところが、ひとたびAGEsが
合成されると、生体にとんでもない悪影響を
及ぼします。
AGEsと合併症との関係を、
網膜症を例にお話します。
AGEsが眼の中に増えると、網膜の後ろにある
周皮細胞(※)がダメージを受けて、大幅に
減少します。周皮細胞は網膜をコントロール
する組織なので、この細胞が減ると網膜に
酸素や栄養が行き届かなくなります。
行き届かなくなった酸素や栄養をカバー
するため、網膜の中に新しい血管がどんどん
増えます。これが「血管新生」と呼ばれる
現象です(写真)。
ところが、血管新生が進むと、視力が低下
したり、焦点が合わなくなったりします。
余分な血管が生じることにより、網膜が
捲れ上がったような状態になるためです。
これが糖尿病性網膜症です。
一方、糖尿病性腎症は、活性酸素などが
原因で腎臓に炎症が起こり、腎臓の細胞が
大量に死滅することで発症します。
このとき、炎症が起こる要因として
関わっているのが、AGEsの増加です。
そして、炎症が起こることでさらにAGEsが
蓄積されるという悪循環に
陥ってしまうのです。
(※)周皮細胞とは、毛細血管壁に関連して
見られる多能性間葉系様の細胞で、
血管新生、微小血管の構造完全性、
および血流調節にとって重要な細胞です。
組織の修復にも寄与します。
脂肪組織の損傷中には脂肪細胞に、
骨損傷後に軟骨芽細胞および骨に、
筋ジストロフィーのモデルでは
筋芽細胞に分化します。また、
線維芽細胞とマクロファージへの
分化能が示されています。
参考文献
井上浩義
『アポラクトフェリンのすべてがわかる本』
アーク出版 2015年 pp.70 - 71
参考ホームページ
https://www.cosmobio.co.jp/product/detail/human-perizytes-zen.asp?entry_id=36485
最終閲覧日:2020年2月18日