アポラクトフェリン開発
不定期連載 アポラクトフェリン(12)
アポラクトフェリンの「アポ(apo-)」とは、
「…がない」という意味の接頭語です。
アポラクトフェリンは
「ラクトフェリンを離れた」ということで、
具体的には「鉄がない」という意味です。
事実、アポラクトフェリンに含まれる鉄は
3%以下なので、ほぼゼロです。
普通のラクトフェリンは鉄を含むため
ピンク色をしていますが、
アポラクトフェリンは真っ白なので、
違いは見ただけでも明らかです。
ラクトフェリンから効率良く
鉄を取り除くカギとなったのは、
UF(Uitra Filtration)膜(限外濾過膜)と
呼ばれるプラスチック製の膜です。
本来の目的は、海水から塩を抜き、
真水を作るために使われる「脱塩膜」です。
雨が少ない地方の都市や水の供給ができない
大型の船などには必ず備え付けられています。
理工学や生物学に研究分野では「膜」が
重要なツールになります。しかし、
生体の細胞膜を使った研究は大変です。
細胞自体が非常に小さいうえ、
細胞膜を通り抜けられるのはホルモンのみで、
それ以外は他の生体物質も人工の薬品も
通り抜けることができません。
ある研究グループは、ホルモンが細胞膜を
通り抜ける様子をシミュレーションするために
細胞膜と同じ性質を持つ人工的な膜が
必要と考え、プラスチック製の
「両性(陽性と陰性)イオン交換膜」を
開発しました。細胞膜を拡大した
模型のようなものです(写真)。
こうした人工の膜を利用した経験が
あったため、UF膜が開発されたとき、
「アポラクトフェリンの製造にも
応用できるのではないか」と
思いついたそうです。
参考文献
井上浩義
『アポラクトフェリンのすべてがわかる本』
アーク出版 2015年 pp. 36 - 39