天然のラクトフェリンの限界
不定期連載 アポラクトフェリン(11)
前にもお伝えしたように、
天然のラクトフェリンには、
ポケットのような部分に鉄イオンが
入り込んでいます。
その割合は牛乳で15〜20%、
人の場合は20〜30%です。
普通のラクトフェリンが
薄いピンク色を帯びているのも、
血液と同じように鉄の赤色が
映し出されているからです。
したがって、入り込んでいる鉄の成分が
多ければ多いほど、ピンク色は濃くなります。
しかし、ラクトフェリンは
そもそもタンパク質なので、
捕食生物のように餌を追いかけたり
触手を伸ばして鉄を捕まえたりする
わけではありません。
血液中などを漂っているとき、たまたま
近くにいた鉄の分子と結合するだけです。
しかも、すでに2つのポケットに鉄の分子を
取り込んでいると、近くに鉄の分子あっても、それ以上結合できません。
天然のラクトフェリンの限界です。
そうであれば、天然のラクトフェリンから
鉄の分子を取り除いてしまえば、
①体内に摂取した後、もっと効率良く
鉄と結合できるのではないか?
②よりパワフルなラクトフェリン
(アポラクトフェリン)を
作り出せるのではないか?
そう考えた研究者たちが、
1960年頃から新しいラクトフェリンの開発に
取り組んできました。
しかし、簡単ではありませんでした。
鉄を取り除くことはできますが、
効率が悪いため、
どうしてもコストが嵩んでしまいます。
例えば、牛の膀胱膜などを用いると、
スプーン1杯のアポラクトフェリンを作るの
に何十万円もかかってしまいます。
工業的に生産するのは不可能でした。
大量生産が可能になったのは、
井上浩義先生が当時属していた研究グループが
農林水産省からの支援を受け、
アポラクトフェリンを効率良く大量に
製造する技術の開発に成功してからです。
2004年のことです。
参考文献
井上浩義
『アポラクトフェリンのすべてがわかる本』
アーク出版 2015年 pp. 34 - 36