にせいのこ①
2022年12月下旬、
仕事中に私は、ぶっ壊れました。
はじめまして、よそのこ、と申します。
関西で派遣社員をしています。
私は副業でコールセンターで、注文受付の仕事をしています。
その日もいつものように、電話で注文を受け、パソコン上で顧客登録をしようとしていたところでした。
「〇〇様のお住いのご住所の郵便番号をお伺いいたします」
「“123-4567”です」
「123-4567……はい、東京都東京市東京町、と出ました。以降の丁と番地をお願いします」
「はい、“せんにひゃくさんのよんじゅうご”です」
「せん……」
私の手は突然、リモコンの一時停止ボタンを押されたかのように、全く動かなくなりました。
お客様が言った“せんにひゃくさんのよんじゅうご”を、
頭の中で数字に変換することが出来なくなったのです。
大体の方は“1203-45”と、数字に変えられるでしょう。
が、私の頭の中は真っ白になり、パニック状態になりました。
幸いお客様は大変親切な方だったため、その後4回くらい聞き直し、ようやく登録が完了しました。
しかしその後も、支払い方法やクーリングオフに関する説明文を読む段階になっても、
自分が今、どこの文章を読んでいるのか、わからなくなり頭は真っ白のままになっていました。
なんとか電話を終わらせて、受注完了させましたが、
この後他のお客様の注文電話を受けることが恐怖になり、
再度パニック状態に陥りました。
(住所だけじゃない、名前を聞き間違えたら?また説明文が読めなくなったら?
さっきのお客様は親切だったけど、普通何回も聞かれたら電話切られかねない…。売り上げを落としてしまう、会社に迷惑が……)
そんな不安が頭を埋め尽くし、私は呼吸困難に陥りました。
そして近くにいた上司に助けを求めました。
何かあったの?、と聞かれても、口は動くのに声が一切出ない。手の震えが止まらず、涙がこぼれる。
異常事態だと判断した上司は、すぐに上席に繋げてくれました。
「よそさん、一体どうしたの?」
私はさっき起きたことを、泣きながら、ゆっくり説明しました。
上席は優しく話を聞いてくれ、
最近の私の言動の変化についてを話し始めました。
「最近のよそさんは、いつもと変わらず仕事熱心で無遅刻無欠席だけど、
たまに怒りっぽくなるというか……お客様には怒ったりしてないけど、電話を切った後、すごい怒って暴言吐いたりして、物にあたってるところがあってね。
いつもため息ついてるし、実は前々から気になってたんだよ。
何かあったの?僕でよければ話してくれないかな?」
一瞬言葉が詰まりました。口は開くのに、声が出せない。
喉の奥から何度も、空気を吐き、「あ、」「あの、」「えっと」と言いますが、肝心の文章が出てこない。
「プライベートで何かあったの?それともこの仕事が辛いのかな?」
私はそれに対してはすぐに否定の言葉が出ました。
「いいえ、し、しご、仕事はつつつ、辛いけど。じじ上司の皆さんも、ややややや優しいし、おおお客様も、わ悪くないんです。わ、わるるいのは、悪いのは、私だけなんです……」
泣きながら、
何度も吃りながら必死に説明する私を見て、上席は落ち着いた様子で
「わかった。よそさんの言いたいことはわかったから。
プライベートや仕事じゃないことはわかったから、何があったのか説明できる?」
私はまた言葉が出てこなくなりました。
(どこまで話せばいいんだろう。
どこまで話したら、この人は引かないんだろう)
私は、自分の“生まれ”についてを、仕事上ではあまり言わないようにしていました。
「ああ、あの、、、私、えっと、生まれがちょっと、ととと特殊、って言うか、家庭環境がちょっと、かわ変わってて……。
それで、7月頃から、なんか色々、辛いことを、おおお思い出すようになってかかから、なんか、体調悪くなってて……。し、仕事には支障がででで出なかったから……」
そのまま仕事を続けていました、と答えました。
上席は優しく、ゆっくり話し始めました。
「僕には、よそさんが“元気な状態”、には見えないんだよ。
病院へ行って、専門家に相談して、お医者さんから仕事していいか許可をもらってから、また出勤してきて。
それまではゆっくり休んでいいから。僕たちはよそさんが元気になって戻ってくるのを待ってるから」
そう言われ、私はその日早退しました。
泣きながら心療内科を調べて予約の電話を行い、
年明けにようやく病院に伺うことになりました。
個室に通され、看護師さんに現在の症状についてを詳しく聞かれました。
【当時のおもな症状】
・トラウマのフラッシュバック
・集中力がすぐ切れる
・発作的に起こる呼吸困難
・憂鬱な気持ち(希死念慮)
・突然涙が出る
・食欲減退
・味がよくわからない(美味しいと感じられない)
・睡眠障害
・疲れが取れない
・倦怠感
・頭痛
・便秘
・耳鳴り
・腰痛
・胸の痛み(心臓の痛み)
・舌の痛み
・趣味が楽しめない。(本が読めない・映画の字幕が読めない/映画の内容が理解できない)
・ちょっとのことでイライラ
症状を挙げた後、
「そうなってしまった原因は、わかりますか?
その、トラウマのフラッシュバックとは、どんなトラウマですか?」
と聞かれました。
私は今後のためにも、その原因を包み隠さず話すことにしました。
「私はとある有名な新興宗教の2世信者です。
7月に元首相が射殺されてから、元信者の人のニュース記事や体験を見かける度に……、私の記憶から消していたものが無理矢理思い出されるようになって……」
→次回に続きます。