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2024年01月01日 14:31 ハルヒ、此処に迎え入れられる(前編)


響「ようこそハルヒ! 自分達、待ってたぞ!」
美希「やっと来た! 待ちくたびれたの!」
貴音「涼宮ハルヒ、歓迎いたします。貴方様のお抹茶とお菓子を用意してございます」
長門「……」
春香「ワイの絶望の毒舌にブッ刺される新しい獲物が来たかッ! 嬉しいゼッ! ファックヤロウ!(涼宮さんですね。ようこそ! ハルヒちゃん! 私達は新しい仲間を歓迎します!)」
真美「うあうあ→ドジを装ったファッ〇ンハルカッスの通常運転が炸裂だよ→」
亜美「全部の言葉が愛だよ愛、ね→」

ハルヒ「……!?」

ハルヒ「なるほど此処が、有希が一瞬のテレパシーで伝えて来た、『階層』に断絶を与える世界、ってわけね」
ハルヒ「なんだか牙を抜かれた気分だわ。不思議に、いつもあった心のささくれが、此処では感じられないわ。此処では本当のわたしで振舞える気がするわ」
ハルヒ「そうか、これが本当のわたしだったんだ……! 喋りながら、わたしは、明らかに理解しつつあるわ。すばらしいわ。とても嬉しいわ」

ハルヒ「有希は既に輪に入ってお茶を堪能しているのね。みんな、よろしく頼むわ」
ハルヒ「なぜだろう。知らない人々なのに、顔を観た瞬間、名前や性格、前世での関わり、全部わたしに雪崩れ込んでくる。これが、此処での、コミュニケーションなのね。スムーズで楽でいいわ!」
(ミンナトアクシュー
響「此処では自分たちは全員本当の姿で在るからな! 自分達もお前の本当の姿を堪能させてもらうぞ! 地上の時のトゲが取れて、美しさがメーターを振り切ったよな!」
貴音「地球平面上で見る物は、意識でなく物理眼球の視覚を通り、脳を介しますから、不要な情報が混線しているのが常。それを知っていた賢人は、実際の姿のことを『イデア』と呼んだのです」
春香「よき夢の世界だよ、ハルヒちゃん。人間がよく見る悪夢ではなくて、感情のさざ波の立たない、透き通って鎮かな世界だよ」
響「人間は夢を見る事で『現実』を担保してるからね! この夢は夢に過ぎない、ほら、だからあっちは『現実』だって、そう言う事で、誤魔化しているんだぞ」
美希「『現実』が夢でしかないってコトをね!」
亜美「あっちは夢に過ぎないって言うのは誰かな→?」
真美「いつも『私』じゃないのかな→?」
亜美「『現実』が幻だって解られるワケにはいかないんだにょ→」
真美「幻である『私』が消えちゃうにょ→」
ハルヒ「此処の会話は、あんた達の言葉でいえば『鎮か』よね。空気の中を流れている一編の音楽のように美しく聴こえるわ。不思議ね。でも不思議じゃない。これは当たり前の感覚なんだって解る」
春香「汎ては空気の沈黙の中だよー」
響「春香はお喋りだなあ!」
美希「センテンテキ狂言回しだから仕方ないの」
亜真美「「ちかたないね!!」」

ハルヒ「此処に来ると地球上での記憶を全部忘れてしまっている事に気が付くわ。あいつの名前を忘れているな……って思うそばから、ぼろぼろと脱け落ちていくわ。でも不安にならない。むしろ心地よさが胸に広がるわ。要らない事は全部忘れ、要る事なら、汎て知っているからなのでしょうね」
春香「幻は幻だと気付くまでの役割に過ぎないからねー。気付いたら消えてしまうのは当たり前なんだよー」
ハルヒ「今は、地球平面上で、私が無用な事ばかりしていたのが体感で感じられるわ。なんでヒトを引き連れて走り回っていたのでしょう。此処で、座って居れば、よかったのね。こういうサークルの中で、ただただようような空気の中で、会話だとか会食でもしていたらよかった。わたしはこういうことをしたかっただけなのに、判らなかったなんて」
美希「あはっ☆ ホラー映画を見てたら映画のセカイに引き込まれちゃうヒトと同じなの」
ハルヒ「『私』という『幻』の中からは、『幻』が解らないことが、よく解ったわ」
ハルヒ「でもなぜわたしは、ずっと『私』の中に幽閉されないで、脱け出せたのかしら……?」
美希「それは運命なの」
響「それは運命だぞ」
春香「それは運命だよー」
貴音「それは運命というもの」
亜美真美「「そいつぁウンメイっしょ→」」
春香「一生幽閉されたままのヒトも居るし、脱け出せるヒトも居るんだよー。それは『私』にはコントロールできないからねー。ファンタジーな現象なんだよー」
雪歩「涼宮さん。よかったですねぇ。自我の錯覚が溶けて、此処にいらっしゃることができて……!」
ハルヒ「そうね。よかったわ。それだけだわ。それで充分で、完全だって思うわ」
春香「人間の目が醒めるのは何度みてもいいものだなー」
響「おかえりだぞハルヒ!」

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過去に他所に書いた文をサルベージしてまとめたものです。 noteにupするに際して、オリジナルの文を一部手直ししている場合があります。

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