【必見】幻の映画「灰とダイヤモンド」と最近みたクラシック映画の話
こんにちは。
もう10年以上クラシック映画を年代順に見まくるというライフワークを続けておりまして、現在50年代の3周目をやっております。
58年に位置するアンジェイ・ワイダ「灰とダイヤモンド」ですが、かなりの有名作であるにも関わらずレンタル屋にない、配信にない、という簡単に観れない状況が続いておりまして、イライラがピークに達していたところ、数年前にアマプラ内チャンネルに登場したことを認識。
しかし年代順に観るというストリクトな自分内ルール上、最近まで観るに観れない状況が続いていました。そして最近ようやく58年の順番が来たのでアマプラを探したところ、なんと消えていました・・悲しすぎる泣
セルDVDであれば見れるのですが4-5000円します。良いか悪いかの価値判断ができないDVDをこの値段で購入するのはハードルが高くてほんとに困ります。
日本での版権元は意図的にレンタルや配信を制限してセルDVDで利益を出そうとしいるのかもしれませんが、このビジネスモデルは全く感心しあませんね。しかたなくオンラインで探して英語字幕版でみることになりました。
前置きが長くなりましたが、結論としては年間ベストどころか年代ベストに入るレベルの傑作であることが判明。今の今まで観れなかったことが本当にもったいない名画でした。
そう筆者が判断する一番大きな要因とは、この映画が単なる反共レジスタンスを扱った映画というだけではなく、その芸術的な表現が今日の映画監督にも大きな影響を与えていることが伺い知れるからです。
後世の監督への一番大きな影響を感じるのはレオス・カラックス。主人公の男と恋仲の女が夜の街で交わす会話の印象的なシーンがあるのですが、完全にカラックス初期三部作を彷彿とさせる(逆か)絵のオンパレード。
クライマックスで花火が打ち上がるシーンは完全に「ポンヌフの恋人」(1991年)です。
また筆者が偏愛するジェイムス・グレイという監督の出世作に「リトル・オデッサ」(1994年)という映画があり、民家に干されたシーツの間で銃撃戦が行われるのですが、ここでもこの映画が引用されていると思われます。
このように本作は現代の重要監督にも大きな影響を与えたことがすぐわかる名作なのですが、この映画を名作たらしめているもうひとつの要因が、戦後のポーランドという日本人にはなかなか馴染みのない世界の政治をテーマにしながらも、一定の政治的立場を美化することなく、争い自体を悲劇として描いている点でしょうか。
第二次大戦中の反ナチスをテーマにチャップリンが作った「独裁者」は筆者の映画体験の中でもベスト10に入る号泣映画だったのですが、「灰とダイヤモンド」ではそのような政治的な切迫感を感じさせない作りになっています。
もっともこの映画は「世代」「地下水道」と合わせて3部作のようなので、他の2作も観ないことにはこの映画の監督アンジェイ・ワイダの真意も計り知れないとは思うのですが、とりあえず現時点の筆者の所感としては以上のとおりです。しかし、ここにきてすごい映画を観た、という感想しかありません。
さて、その他、その他、最近観たクラシック映画の話。
①「旅情」( 1955,Summertime)
②「オクラホマ!」(1955, Oklahoma!)
③「上流社会」(1956, High Society)
④「優しく愛して」(1956, Love Me Tender)
⑤「追想」(1956, Anastasia)
⑥「イブの三つの顔」(1957,Three Faces of Eve)
⑦「翼よ!あれが巴里の灯だ」(1957, Spirit of St.Louis)
この50年代3周目はアカデミー賞俳優部門の受賞者の映画や、ヒットチャートに登場する曲が使用されている映画を中心に未見作を追いかけています。
①はこの時期名作揃いのデビッド・リーン監督+キャサリン・ヘップバーン主演の映画。Summertimeが、ジャズの名曲から来ているのではないかと思ってチェックしたのですが完全に予想が外れてしまいました。またデビッド・リーン監督作としては割と肩の力が抜けたロマコメといった趣で、あまりインパクトは感じられず。原題とかけ離れた邦題もなんだかな、という感じです。この映画も配信になく、なかなか簡単に観れないですね。
②はサントラアルバムがこの年に大ヒットしたようで一応映画本編もチェック。映画自体は田舎の気の強いおばあちゃんがキープレイヤーだったりして、意外と見ていて楽しいミュージカル映画です。
③はなんとこの時期のシンガーであり大スターのフランク・シナトラ、ビング・クロスビー、の2大クルーナーに加え、ヒロインにはこの映画を最後に引退してしまったグレース・ケリー。お話自体はなんてことのないロマコメなのですが、この3人の時代のキープレーヤーの動く姿を見れること自体に価値のある映画でした。
④は当時大ブレイクしつつあったエルビスの動く姿を目撃できる映画。
⑤はこの映画でオスカー主演女優賞を獲ったイングリッド・バーグマンの象徴的な映画。ロベルト・ロッセリーニと結婚してイタリア映画に出演した後、にハリウッドに帰還した映画です。主演男優はこの時期脂の乗ったユル・ブリンナー。ロシアの10月革命で唯一処刑を免れたと噂されたロマノフ朝アナステイジア皇女の話で題材も興味深い内容になっています。この映画も現在配信もレンタルもなく、しかたなくセルDVDを買うしかない状況。名作なのに、なんとかして欲しいですね。
⑥57年の主演女優賞作品。精神分裂症を扱ったなかなかヘビーな作品で見応えがありました。
⑦はビリー・ワイルダー監督作品。この監督は「サンセット大通り」(1950)が一番有名かもしれませんが他にも名作が多く、全作制覇チャレンジ中です。この映画は大西洋横断したリンドバーグの伝記映画になっており、なかなか見応えがありました。ビリー・ワイルダーはどんな題材でもそつなくこなすので、監督作品を見れば見るほど掴みどころがなくなりますね。
ということで本日は以上です。
配信にない作品が中心になりましたが何かの参考になれば幸いです。
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