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2.在庫はなぜ悪者扱いされるのか

きまぐれものづくりマガジンシリーズ。

上記記事で製造業に転機が訪れていること。従来の技術は徹底的なコストダウンが求められることを書いた。

そこで今回はコストダウンといえば”在庫”ということで在庫について書いてみたいと思う。


製造業に関わっていると、とにかく在庫の持ち過ぎは良くないというふうにまずは教わるとはずだ。だけど、ぼくは入社してから何年もそのあたりがうまく腹落ちさせることができなかった。


在庫があればなにかトラブルが起きても後工程に迷惑をかけずにすむし、保険として持っててもいいじゃんって思っていた。工場全体を止めてしまうインパクトの方が勝っていたからだ。


もちろん、いくらでも多く持っていてもいいとは思っていなかったのだけども、じゃあどの程度まで持つんだったらいいのかという線引ができない。極端な例を持ち出してもなんとなくわかった”つもり”になるだけだ。


このあたりについて、少しずつ理解が深まってきたのでここで一度整理してみたいと思う。



在庫があると何が悪いのか?



そもそも、在庫の定義ってなんだろうか。ここは「ザ・ゴール」から定義を借りてこようと思う。



「在庫とは販売しようとするものを購入するために投資したお金のすべて」


ちょっとわかりにくいかもしれない。


端的に言うと、在庫を作るにはキャッシュがいるが、在庫が売れるまではキャッシュが入らない。さらに棚卸しで資産扱いになるので税金までかかってくる始末。在庫は資産になるけど、キャッシュの流れを滞らせるのでいわゆる黒字倒産の原因になったりする。


あのトヨタ生産方式で有名なトヨタ自動車ですら、昔は6.5ヶ月分の在庫を抱えていて資金繰りが悪くなり破産仕掛けているそうだ。


キャッシュフローなんだよね、つまり大事なことは。でもこれってある程度体力がある企業に努めているとあんまり実感がなかったりして、どんどん受注→生産→納入を繰り返していかないとキャッシュが尽きるような規模の会社の人のほうが実感するのではないかという気もしている。


ザ・ゴールの定義を借りるならば業務費用として日々労務費だけでなくいろいろな出費がある中で、在庫は売られるまでお金を産まない。在庫を作るのにお金はかけているのに、だ


日常に近い形で考えてみてもいいかもしれない。たとえば”せどり”ってやつ。安く手に入れて高く売る。これも個人でたくさん買って、それが売れないと投資したお金がなかなか帰ってこない。これだと資金繰りが厳しくなるよね。

ブックオフを回って数万円分本を買って、メルカリで思ったほど捌けなかったらその数万円分捌けるまでお小遣いはさみしいわけで。


下に適当な製造プロセスの例を示してみる。原材料を買ってから製品を売るまでの間の時間(リードタイム)が長ければ長いほど製品をお金に変えるまでに無駄な費用がかかってくる。労務費や倉庫の空調費などが挙げられるだろう。

そして、在庫が多ければ多いほどリードタイムは長くなる。例えば図の例だと在庫が1ヶ月分あるので、制作期間と合わせると材料購入から販売まで2ヶ月かかっている。

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もし材料購入のためにお金を借りていたら。。。無駄に利子も払わないといけない。



じゃあ適正な在庫の量って決められるの?



だけど実際のところ、なにかあったときのためにバッファとして在庫は持っておきたい。これまたザ・ゴールから引用するなら(いい本なんです本当に)、統計的変動(いわゆるばらつき)と従属事象(後工程は前工程の影響を受ける)の影響を考える必要がある。


これらの要素を踏まえて、在庫を持ちすぎず、かつ欠品しない程度の在庫を保つ必要があって、これって一般化できるの?と言われるとぼくはまだ答えを持っていない。実際のところ、工場それぞれの事情によってかなり変わってくるのではないかとぼんやりと考えている。


だが、各工程の処理能力や可動率などからある程度の精度では求められたりはすると思う。あとはどこで腹をくくるかのように思えてしまうので、これを機に勉強しなおしてみたいと思う。

というわけで次は「ザ・ゴール」で有名になったTOC(制約理論)について少しまとめてみようかな。








 

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