『スティール・ボール・ラン』再読感想 (後半)
5th. STAGE (10巻 ~ 11巻中盤) 2006年 11月 ~ 2007年 3月
出来事
ディオ、大統領に共闘を持ちかける
サンドマン (スタンド名 : サイレント・ウェイ、音の具現化のスタンド) 戦 … ジョニィ、黄金長方形の回転を開眼 (Act.2)
サンドマンだ。『スティール・ボール・ラン』の 1話を飾り「こいつが主人公なのか?」と思わせたサンドマンだ。8巻では Dio の位置を教えて「(1st. STAGE の)貸し借りなしだ」とそれなりに友好的だったサンドマンだ。
まさかここで敵として出てくるとは。しかも能力は「音」。現象を再現させる擬音の塊。「広瀬庚一が黒い意志と攻撃性を持ってエコーズ Act.2 を使ったらかなり強いのでは?」と仲間内で話をしたことがあったが、それがまさに再現されたのだ。これには興奮した。
しかし、そのうち仲間になると思っていたサンドマンが敵に回った事実、ノリスケ・ヒガシカタの存在、ジョニィの過去、黄金長方形、サンドマンではなくサウンドマンだ…など、話は大統領周りからレースに焦点が移ってシンプルになった反面、重要な話からツッコミ所の多い話まで情報過多すぎてこれはこれで混乱の多いステージだった。
6th. STAGE (11巻中盤 ~ 14巻) 2007年 3月 ~ 2007年 12月
出来事
シュガーマウンテンで大金と聖人の遺体を手に入れる … シュガーマウンテンで手に入れたものは日没までに使い切らなければならない
11人の男 (スタンド名 : TATOO YOU!、11人が互いの背中の絵を通じて移動できるスタンド) 戦 … シュガーマウンテンの試練と同時進行、戦闘後にシュガーマウンテンで得た遺体を手放す
ルーシー・スティール、大統領から遺体を奪うため大統領の館に潜入
ホット・パンツ vs マイク・O (スタンド名 : チューブラー・ベルズ、金属を風船にするスタンド)ルーシーの潜入は失敗。ホットパンツの能力で大統領夫人に化けて館にとどまることに
ウェカピポ (非スタンド使い、鉄球使い) & マジェント・マジェント (スタンド名 : 20th センチュリー・ボーイ、ダメージ無効のスタンド) 戦
6th. STAGE に入って混乱は佳境に入る。「シュガーマウンテンの試練」と「11人の男戦」。2つのエピソードが重ね合わせで同時進行するジョジョでも珍しいケース。しかも「シュガーマウンテンの試練」と「11人の男戦」の間で巻をまたいで 2ヶ月待つのでリアルタイムでは完全に何が起きてるか理解できていなかった。スタンド TATOO YOU!の姿が明瞭でない上に 11人が共有というイレギュラーさも拍車をかけた。
このあたりはもうほぼ理解は追い付かなくなって惰性で読んでいた。6th. STAGEはルーシーの潜入ミッションや新たな鉄球使いのウェカピポの過去エピソードまで噛んでくるのでかなり情報過多な上にステージ終了まで 9ヶ月かかってるのだ。長い。
7th. STAGE (15巻 ~ 16巻序盤) 2008年 5月 ~ 2008年 9月
出来事
アクセル・RO (スタンド名 : シビルウォー、罪が支配する空間のスタンド) 戦 … ジョニィが新たな能力を開眼 (Act.3)、戦闘後に聖人の遺体の大半を大統領に奪われる
完全に理解が及ばなくなっていたのでリアルタイム時の記憶は無い。
だが再読して一番面白かったのはシビルウォー戦だった。
「罪が支配する空間のスタンド」という特異性のおかげで必然的に過去のトラウマをえぐられ続けるジャイロとジョニィ。なればこそ輝く迷いを振り払ったジョニィの決意と対照的に深く在る「漆黒の心」。ここまでのジョニィの経歴とレース上での積み重ねが最も輝いたのがこのステージだ。
それはそれとして、四肢を引きちぎられたけど無限の回転の果てに辿り着いたので元に戻りましたというのは全く納得いかんのだが。
そういえば 15巻の冒頭でジャイロとジョニィが天蓋の下で支給品のカタログ片手にトランプしながら駄弁っているシーンがあるが、作中でこのシーンが一番好きかもしれない。6部にプッチ神父と DIO がベッドでダラダラしながらルーブル美術館の話をするシーンがあるが、荒木先生は男 2人が駄弁っているシーンの解像度が異常に高い。
8th. STAGE 前半 (16巻序盤 ~ 18巻中盤) 2008年 9月 ~ 2009年 7月
出来事
ウェカピポ vs マジェント・マジェント
ルーシー・スティール、聖人の遺体 (頭部) を懐胎
ディ・ス・コ (スタンド名 : チョコレート・ディスコ、指定の座標に攻撃を送り込むスタンド) 戦
ファニー・ヴァレンタイン大統領 (スタンド名 : D4C、平行世界を行き来するスタンド)、ジョニィを襲撃
ディオ & ウェカピポ vs 大統領 … 大統領のスタンド能力を利用してディオがウェカピポを殺害
8th. STAGE は長いので前半と後半に分ける。
「シュガーマウンテンの試練」と「11人の男戦」に負けず劣らずの難関。大統領をめぐる複数の状態の重ね合わせ状態の乱戦。大統領の「平行世界を行き来する能力」の脅威の片鱗を荒木節で描いたものだから再読しても完全には理解できない。理解しようという気力すら早々に尽きた。
しかし、サラッと大統領が町に出て来て戦闘が始まったが、これがこの後の列車戦も含めて長い大統領戦のプロローグだったとは。
ところで、ディ・ス・コ。君、何しに来たん?
8th. STAGE 後半 & 9th. STAGE (16巻序盤 ~ 24巻) 2009年 7月 ~ 2011年 6月
出来事
ジャイロ、鐙を利用した黄金長方形の回転をジョニィに伝授
ホット・パンツ & ディオ vs 大統領 … ディオ、ホット・パンツ死亡聖人の遺体化したルーシーを中心に空間のスキ間 (D4C -ラブトレイン-、吉良なものが集まり害悪なものは彼方の誰かに飛んでいく能力) が発生
ジャイロの鉄球の無限回転エネルギーで「ボール・ブレイカー (次元の壁を突き抜ける能力)」が発現
ジョニィ、鉄球の回転で馬の足を動かし、その力から生まれた真の無限回転エネルギー (爪・ACT4)で大統領を攻撃
ジョニィ、基本世界に戻った大統領にとどめを刺す
異なる次元から大統領が連れてきたディオ (スタンド名 : ザ・ワールド、5秒間時を止める能力) がレースに復帰
ディオ、無限の回転を逆に利用してジョニィを攻撃する
ディオ、遺体の安置室でルーシーの持ってきた基本世界のディオの首と遭遇。死亡
9th.STAGE はごく短い短距離ステージなので 8th.STAGE 後半とまとめる。
本当は列車での戦闘と、ラブトレイン発動前で分けて前中後編にしようかと思ったくらい長いが、一連の流れを思えば列車から大統領戦決着まではひとつなぎと考えるべきだろう。
このあたりはハチャメチャだ。ハチャメチャ、かつ濃厚だ。なんならこのステージだけ別ページで感想を書くべきかもしれない。
ある面では真摯に国を思っている大統領。
「「女」は「禍」を運んでくる」と以前は頑なに乗せなかったルーシーを抱えていたために最後の一手が及ばなかったジャイロ。
ツェペリ一族からジョースター一族に託されるもの。
序盤に教わった「筋肉に悟られるな」で馬の足を動かしてからの無限回転爪弾。
ザ・ワールドを引っ提げてのディオの復活。
まさしくジョジョシリーズ集大成とも言える激闘であり、『スティール・ボール・ラン』の長い長い旅路の果てにふさわしい世界である。初読時のふわふわした認識では得られなかった感動がここにあった。本当に再読して良かった。
ルーシーの涙カッター何だったの?とか、次元の壁を超える鉄球の回転でいきなり老いる大統領とか、再読してもビタイチわからなかった箇所も色々あるが、それはそれとして。
ジョニィ・ジョースターはジャイロとの出会いの際に「この『物語』はぼくが歩き出す物語だ」「青春からオトナという意味で」と語っていた。
今回はステージ毎に区切って再読したが、ジョニィが長い旅の中で少しずつジャイロとの絆を深め、過去の苦難に苛まれ、絶望を乗り越え、最後には友の死を体験して “オトナ” になっていく姿を鮮明に受け取ることができた。
こうしてみると初読時は『ジョジョの奇妙な冒険』に囚われすぎていたのかもしれない。あくまで『スティール・ボール・ラン』という 1つの物語として、ジョニィ・ジョースターという 1人の青年が若き挫折から立ち上がって先に進めるようになるまでの物語として読むべきだったのだ。