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欲本 #4 『東京の生活史』 岸 政彦 筑摩書房|欲本日記

5日ほど前にはじめてみたこの「欲本日記」、なんと4日間続けて書いている。前回書いたように、11月が近づき、毎月の本の予算がリセットされることでの「来月はどの本を買おうかな!」というワクワクが滲み出しているだけである。数日続いてぱたっと更新が止まり、またぱたーんと更新がまじまったりするだろう。

『東京の生活史』という本は、いわゆる"鈍器本"である。人をその本で殴ると大打撃を与えることができるほどの分厚さ、凶器にもなる本である。

ページ数は、1200ページ。書店で何度となく手に取ったことがあるが、分厚い。6cmくらいありそうだ。この辞書なみの厚さの中に、150人が語った東京の人生がつまっているのである。

この本の存在は以前から知っていた。というか、書店で人文コーナーに立ち寄ると、かなりの存在感をはなっているので、目に止まる。なんと分厚いこと。しかも同じ著者が大阪版、沖縄版もだしている。どれも分厚い。なんちゅうシリーズだ、と記憶にやきつくのである。どうやらすごい本があるぞ、と。

そうやって気にはとめていたものの、ある本を読んで「やっぱ社会学の本ほしいな」とわきあがる。『エスノグラフィ入門』という新書を読んで、内容がとてもよく、おれの思考は「やっぱり『東京の生活史』ほしいなー」となったのである。

『エスノグラフィ入門』で紹介されていた『タイミングの社会学』『女性ホームレスとして生きる』『家を失う人々』も同じく気になっている本ではある。『タイミングの社会学』もだいぶほしい。だが、今回は欲本としては『東京の生活史』を選んだ。厚い、高い、ほしい。

書店でぱらぱらと何度かめくった印象でいうと、この本は、著者が話を聞いた人たちの語りが、ただ淡々と連なっているという印象だった。それが逆にいいと思った。

例えば、「東京の生活史 - 明治から令和までの変化について -」などとタイトルではなく、シンプルに「150人分の人生聞きましたっせ」という記録なのである。これは毎日ちょびちょび読んでいきたい感じの本である。

また、著者である岸政彦の本では他には『断片的なものの社会学』『にがにが日記』『マンゴーと手榴弾』などがある。いずれも読んだことがなく、ぜんぶ気になっている。自宅に唯一ある著者による本は、NHK100de名著の『ディスタンクシオン』のみである。12月には6人のフィールドワーカーたちと語り合った『調査する人生』という本もでるらしく、こちらも気になる。

欲本を1冊あげると、さらに2冊、5冊とどんどんでてくる感じがあるが、今回の「社会学」という好奇心の先頭に立っている本は『東京の生活史』なのである。厚い、高い、ほしい。

なんというか、この本の温度感がよさそうなのだ。社会学がよくわかる!フィールドワークを学ぼう!社会ってどうなってるの?など、テーマをしぼった、ターゲットをしぼった本は他にもたくさんある。その中に気になる本もたくさんある。

そういう話でいうと、『東京の生活史』は「東京の生活について知ろう!」とか「東京の暮らしってどんな感じ?」とか、なんかそういうスコープがある感じではなさそうなのだ。ただシンプルに「150人の東京の生活、聞いてきました」という。それを読んでどう感じるかは、読む側次第である。その温度感というか距離感というか、物体としての本の立ち姿が好きなのだ。実際、分厚い分、立派に立つだろう。

さーて、値段は4600円ほど。

たっけぇ。これ1冊買うだけでおれの(もはや幻想と化している)5千円という毎月の本の予算がふっとぶ。だが考えてみてほしい。1200ページだ。1ページ4円だ。ひとりの話で8ページあると仮定すると、1話32円だ。30円ぽっきりじゃないか。150人の東京の人生、1話だけ聞くなら30円。でもごめんなさい、セット売りなの。だから150話で4600円。どうでしょう?そういうことだろうか。

買ったらちょびちょび読んで、半年くらい楽しめそうじゃないか。厚い、高い、ほしい。

欲本日記とは
ほしい本についての記録である。主テーマは「ほしい本」だが、関係のない話題にとぶこともある。「欲本」と書いて「ほっぽん」と読む。どうやら造語らしい。


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江里 祥和
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