文章書ける人は動画も撮れるって話。
文章を書いているライターやブロガーで、動画にも興味があるけど「自分は文章のほうが向いてるし」と思っている人がいるかもしれない。自分も、数年前、そのうちのひとりだった。
ただ、1年前、重い腰をあげてついにYoutube用に動画を撮りだしたとき、ライター時代のノウハウがすごく活きることに気づいた。それは結局、文章を書いていた頃に身につけた構成力、要するに「伝えるにはどういう順番にすればいいか」を考える力なのかなと思った。
といっても、「最高の動画がつくれるようになりました」という話をしたいわけではない。「優秀なライターでした」ということを言いたいわけでもない。ライターとして生計を立てていたわけではないし。
それでも、ひとりの読者を想定して、ひとつのメッセージをどうにかして伝えよう、と書いていた時期が役立った。
目次)
・伝えるツールが変わるだけ
・扱うデータ容量が増える
・機材が増えると、移動が大変になる
・動画機材はお金がかかる
・といっても色々な撮り方がある
・文章力と動画制作力の相互作用
・まず真似することからはじめる
伝えるツールが変わるだけ
「動画を撮る」というのは、単に伝えるためのツールがキーボードからカメラに変わったにすぎない。編集方法も、キーボードから編集ソフトに変わったにすぎない。「なにか伝えたいことがある」ということについては、文章を書くことも、動画をつくることも同じだ。
記事を書くのであれば、執筆環境(ノート、パソコン、ソフトウェア)、取材をするのならメモ帳やボイスレコーダーが必要かもしれない。一方で動画は、音がはっきりと聞こえることが(すごく)重要なので、外付けのマイクや風対策のウィンドスクリーン、場合によってはピンマイクが必要になることはある。三脚だって必要だし、広角レンズや単焦点レンズがあると便利なときもある。
それぞれ扱うツールは違えど、記事を1本書くことも、動画を1本つくることも、タイトルをどうしよう?読者(視聴者)が読む(見る)理由は?どういう構成にする?文体(編集スタイル)はどうする?どれくらいの文字数(尺)にする?どんなサムネにする?と、考えるべきことはそこまで大きくは変わらない。
扱うデータ容量が増える
伝えるツールとして文字と動画を比べたとき、撮ってみて実感したのは、単純に、動画はあつかうデータの容量が増えるためか、食材(撮影カット)の量に比例して、編集にかかる時間と、保存のスペースが増えるということだった。
記事を書くときは、下準備(リサーチ)に時間をかけたとしても、どの食材を使うかの判断は、書きはじめるときには決まっているし、使う食材を特定する時間はスキル次第で早くもなる気がする。
一方で、動画の場合は、撮る前にある程度構成を考えておかないと、編集するときに食材の量が多すぎて、どれを採用するか決めるのにすごく時間がかかる。早くする方法はゼロではないにしても、60分の撮影カットがあれば、60分に近い時間を費やすことになる。それでも、多めに撮っておくことは大事で、1時間分の撮影カットが10分の動画になった、なんてことはよくあった。
また、撮影した映像や完成した動画のバックアップをとっておきたいなら(必要だと思う)、外付けのハードドライブが必要になってくる。僕は1年間に120本くらいの動画をつくってきて、2TBくらいのバックアップデータがある。クラウドサービス(Dropboxなど)だと、使うときのコスト(ダウンロードする時間)がかかるので、やっぱり外付けドライブが最適だと感じた。
機材が増えると、移動が大変になる
動画撮影には、カメラ、マイク、ピンマイク、レンズなどが機材としてあると書いたけど、この数が増えれば、移動する負担もどんどん増えていく。
撮影が楽しくなって、レンズを2個追加して、専用のバッグも買って、撮影してみて実感するのは、機材が多ければいいという話ではないということ。現状で僕は、カメラ、マイク、単焦点レンズ、広角レンズ、三脚、バッテリー6個など、機材があるけど、これを全部かかえて撮影するのはけっこう大変。
さらには、映像にこだわるようになると、「ドローンもほしい」「スタビライザーもほしい」となってくる。このあたりは、単体でケースに入れて保管する機材になってくるので、もうここまでくると「いっそのこと車で移動したい」となる。というか、電車で移動する気になれない。
動画機材はお金がかかる
あと動画の機材はお金がかかるというのはある。僕は一度カメラを買い換えていて(今はCanon 80D)、総額20万円ほど使っている。カメラは3年ローンで、まだ払い終えていない。
なので、写真好きで動画機能つきのカメラをすでに持っている人は、まずはそれを活用することをおすすめする。僕も最初はそうしていたし、言ってしまえばiPhoneでも十分だと思う。
といっても色々な撮り方がある
文章を書くといっても、ニュース、インタビュー、ハウツー、イベントレポート、エッセイ、コラムと様々なパターンがある。動画でも一緒で、日常(VLOG = ビデオブログ)、ニュース、ハウツー、ショートフィルム、商品紹介、コンセプト動画など、どのスタイルかで必要な機材は変わってくる。
僕は、最終的に短編映画のようなものが撮りたいと思っているので、そうなるといつかドローンやスタビライザーは必要になってくるな、と思っている。
Youtuberで多いのが、家の中だけで撮るパターンで、これなら機材はカメラとマイクだけでいいし、機材を運ぶ必要もない。はじめは、そういう最小限の機材で撮れる動画からはじめて、少しずつ機材を増やしていくのがいいと思う。
文章力と動画制作力の相互作用
数日前、スマート新書『あたらしい文章入門』を読んで、はっとした。著者の古賀さんによると、文章を書くことは、カメラワークを考えることらしい。
カメラはいまどこに置かれ、どんな順番で、なにをとらえているのか。対象との距離感はどれくらいなのか。同じ距離、同じアングルばかりが続いていないか。場面(論)が転換する際に、それを知らせる遠景のショットは挿入したか。カメラを意識するようになると、文章と文章のあるべき順番も理解できるようになります。そして文章全体にメリハリがついて、リズムもよくなります。
プロのライターは、そんなことを考えているのかと驚いたし、言われてみると、確かにそうだとも思い、勉強になった。
動画撮影が楽しくなってきたとき、映画の見方が変わってきて、ひとつひとつのカットを意識したりして、どちらかというと勉強のための鑑賞に変わっていった。「勉強になるし」と言い訳して、大好きな映画を鑑賞できるのも、なんだか気分がよかったけど。
とにかく、文章力と動画制作力は相互に作用しているんだなと思った。僕自身は、文章力のベースが多少あって、動画制作に活きたけど、逆のパターンもあるのかもしれない。
実際、1000万人以上の登録者を抱えるYoutubeスターである、PewDiePie、Shane Dawson、Lilly Singh(llSuperwomanll)は、本を書いているし、Lilly Singhの書いた本『How to Be a Bawse』は、ニューヨークタイムズのベストセラーズランキング1位を獲得している。
まずは真似することからはじめる
記事を書くことと共通するものはあれど、誰でも初めての動画制作は、手探りであることは変わらない。僕がYoutubeを始める前に、スムーズに撮影のイメージがわいたのは、日々Youtubeを見ていて、好きなユーチューバーがいたからだった。
複数人いて、例えば、VLOGであればCasey Neistat、ショートフィルムであればKat Napiorkowska、という風に「こんな動画をいつかつくりたい」というお手本があった。
だから、「守破離」という言葉があるように、まずは誰かのスタイルを真似することからはじめると、路頭に迷わずにすむと思う。僕は120本の動画をつくってきて、やっと「自分なりのスタイルをつくっていきたい」と少しずつ思えるようになってきたところだ。
一方で僕は、またこうしてnoteで記事を書きはじめて、「動画制作のスキルが活きてるかも」と感じていたりもする。
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この記事は、数年前、動画をつくることに尻込みしていた僕へのメッセージでもある。文章が書けるのなら、動画だってつくれるよ、と伝えてあげたい。
最終的に、自分自身の主戦場がテキストなのか、動画なのか、はたまた音声なのか、色々やってみて元のフィールドに戻ることがあるかもしれない。それでも、ひとつのコンテンツを必死に考えてつくったことがあるなら、形式関係なく、まずはやってみるのがいいと思う。