ハゲとパティシエについて考える
ハゲてきた。
気のせいかと思っていたが、おでこが少し後退してきていることをはっきりと確信してしまった。
私が最も恐れていたことの一つで、パティシエをしている限りいつかハゲるかもしれないとは思っていた。
なぜなら、パティシエという仕事は糖分、脂肪分を毎日過剰に摂取しているし、仕事中は常に防止着用、更にはプレッシャーや厳しい職場環境によるすさまじいストレスを毛根に与え続けている職業だからだ。
パティシエが夢のような仕事?そんなことはない。少なくとも毛根に関しては悪夢のような仕事だ。
目の前が真っ暗になった。
今まで積み重ねてきたものが音を立てて崩れ去っていくような感覚がした。
まあ積み重ねてきたといってもこうなることを見越して若い時からスカルプ系のシャンプー、リンスを使ってきたというだけではあるが。
もう駄目なのか、そういう思いで藁にもすがる思いでネットでハゲについて調べまくった。
うさん臭く、科学的根拠に乏しいものも多く散見されたが、
結論としては「まだ間に合うかもしれない」という物だった。
ミノキシジルが効くらしいという情報を得た私は、さっそくアマゾンで5%ミノキシジル配合の物を購入した。
そして毎朝毎晩(たまに忘れていたが)生え際に塗りたくった。
3.4カ月経った。
駄目だった。
私の生え際は以前に増して光沢を増し、そこには以前あったはずの産毛すらなくなっていた。
もうだめなのか、、、
私はパティシエとしてどんなに劣悪な職場環境でも、どれだけ体に負担をかけようともやりぬく気持ちでいたが、ストレスでハゲになってしまうくらいならパティシエをやめよう、転職しよう、とすら考えていた。
そんな自分がAGAという病にかかり、なすすべもなく髪の毛を失ってしまったのだ。
この絶望的な気持ちが分かるだろうか。
もうバラエティ番組でハゲに対するイジりを笑えなくなったのだ。
私は当事者となったのだ。
今まで愛おしく感じていたスイーツ達、過去の過酷な職場のを恨めしく思った。
パティシエは素晴らしい職業だ。
しかし、ハゲでデブが多い。(私の体感だが)
それは仕方のない事なのかもしれない。
甘く、ジューシーでクリーミーなお菓子たちは、あまりに強く我々を誘惑してくる。
口に入れたとき、人間は快楽を覚える。
パティシエとは、仕事と称して誘惑の果実をかじり、快楽を前借りしている人間の集まりなのだ。
そして、まごうことなく私もその一人だったのだ。
続きはまた今度書こうと思う。
ここまで読んで頂き、ありがとうございました。