おいしいラーメンの楽しみかた
我が家ではお金を使うとき、その価値について考える。クオリティやお得感などは言わずもがなとして、「時間」や「付加価値」なども加味することがある。
例えば「時間」。時短に投資することで別のところに時間をさけるという考え方だ。共働きの家庭がルンバを購入するとか、ホットクックを購入するとか、そういうイメージ。
そして「付加価値」。こちらは意外とスルーされがちなのではないかと思う。作り手がどれだけ考え、試行錯誤して品物を世に出したか、そこにお金を払うという考え方だ。サービスにお金を払うようなものだろうか。
このどちらにもお金を払っているのが、我が家にとってはラーメンだ。
お気に入りのお店で例えると、埼玉にある「煮干乱舞」というラーメン屋は、麺とスープ、チャーシューと刻み玉ねぎという、文字で見ると実にシンプルなラーメンである。そんなシンプルなラーメンが1000円と聞くと、普段ラーメンをお店で食べない人達からすれば「えっ高い!」となるかもしれない。しかしである。
見ていただけばわかるだろうか。スープ、麺、チャーシューと、こだわりが詰まりまくっているのだ。お店の人がどれだけ試行錯誤してこのスープを作り、麺を選び、チャーシューを仕込んでいるか、どれだけの時間と材料費がかかっているのか。そんなことを考えながらラーメンを食べる。そうすると「えっこのラーメンが1000円…?安い!」となるわけである。これが私の思う「付加価値」にお金を払うということだ。
別の店では、一杯3000円というとんでもないラーメンを出すところもある。これもまたこだわりのつまりまくったラーメンで、気持ちよくお金を払える価値のある一杯だと私は思っている。
ちなみに外食やテイクアウトなどをするとき、夫は時々金額の内訳を聞いてくる。売り手からすればいやらしい話だと思う、要するに「これ家で作った方が早いんじゃね?」と言っているのだ。
結論から言うと、作れるけど、作れない。
いわゆる費用対効果というやつだ。時間とお金をかけて自宅で作るよりは、お店にお金を払った方がコスパがいい。料理が出てくるまでの時間をお喋りしながら待ち、食べて、ありがとうとお金を払って店を出る。
コスパがいい、なんて言うとちょっといやらしいかもしれないが、それが外食の「付加価値」なのだ。多分、主婦の皆さんは全力で肯定してくれることと思う。あ、余談だがテイクアウトだとまた話が違うので、このnoteが既婚男性の目に触れることがあれば、是非覚えて帰ってほしい。奥様の性格にもよりますが、今日のご飯テイクアウトにしよ!より、外食しよ!の方が段違いで喜ばれる。理由は各自で考えてください。
話を戻すが、この「時間」と「付加価値」にお金を払う考え方は、勿論ラーメンに限ったことではない。例えば母の知人で、アマチュアのフルート奏者がいる。彼女は会社員の傍ら時々ミニコンサートを開くのだが、母と私はそこに連れ立って参加する。チケットは3,500円くらいで、往復交通費と食事代、差し入れ代なども入れると、一人当たり軽く10,000円は吹っ飛んでしまう。そのくらい出せばプロオケの演奏会に行けちゃうんじゃね?と思うだろう。それでも彼女の演奏会に行くのは、「応援したいから」である。勿論、身銭を切って通うようなことはしない。タイミングとお金が合えば足を運ぶ。知人である「彼女の演奏」を、「二人で」聴きに行くことに価値があると考えている。
コロナ禍で我が家は幸いにも減給の憂き目に遭わなかった。リモートワークの成立する夫はむしろ忙しいくらい働いている。そんな中支給される給付金は、我が家にとって「使う価値の試されるお金」になった。通販の緩衝材に使われた紙のシワを丁寧に伸ばして、私はペンを取った。
ほとんど食べ物じゃん、というツッコミは置いておいて。県外への移動が制限されている中、旅行で訪れることが叶わない地域のグルメを取り寄せたり、近所のお気に入りのカフェでテイクアウトをしたりして、僅かでも支援ができればと思っている。ちなみにラーメンに関しては既にお土産麺の通販を何度も利用して、すっかり家ラーメンのセミプロくらいは自称できるようになった。難点はお店の味が益々恋しくなることだ。
堂々と足を運べる時まで、頑張ってお店を続けてください、という投資にお金を使う。お、なんかカッコいいね。