【百年ニュース】1921(大正10)10月7日(金) 皇太子裕仁親王(20)が華族会館の御帰朝奉祝会に出席。能楽堂で「安宅」を鑑賞後,会員らと親しく歓談。華族会館館長の貴族院議長,徳川家達(58)が長途の欧州訪問からの無事帰朝を祝う言上。万歳三唱で散会。華族会館は現在の霞会館。
先月欧州訪問を無事に成功させ帰国した皇太子裕仁親王(20歳)が華族会館が主催する御帰朝奉祝会に出席しました。会館内の能楽堂で『義経記』などに取材した能楽作品「安宅」を鑑賞したあと、会員らの華族と親しく歓談をしました。
当時の華族会館館長は貴族院議長でもあった徳川家達(58歳)でした。徳川家達は長途の欧州訪問からの無事帰朝を祝う言上をあげ、万歳三唱により散会しました。
この華族会館は現在の一般社団法人|霞会館《かすみかいかん》として受け継がれています。霞会館は、華族制度廃止後の旧華族の親睦を目的として設立されたため、現在でも正式な会員資格も元華族の男性当主と、成人に達した直系の息子に限定されており、約650家の740人が加入しているとされます。
午後1時40分御出門,華族会館における御帰朝奉祝会に行啓される。御到着の際,会館入口より廊下に整列する会員一同に御会釈を賜う。まず能楽堂において能楽を御覧になり,ついで会員の集合する臨時食堂にお出ましになる。館長公爵徳川家達より,長途の旅行よりの無事御帰朝を奉祝し,会館への行啓を光栄として感謝する言上を受けられ,これに対し左の御詞を述べられる。「この度余が欧州より帰朝したるにつきて祝賀会を開かれたるは余の満足するところである。余は本館の永く隆昌なるとともに華族間の交誼のますます深厚ならんことを望む次第である。」それより茶菓を召され,この間海軍軍楽隊の奏楽あり。終わって館長の発声による万歳三唱を受けられる。次に階上広間に移られ会員と御歓談になり,4時50分御退出,御帰還になる。
宮内庁『昭和天皇実録第3』東京書籍,2019,489頁
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