【百年ニュース】1921(大正10)8月28日(日) 米国で映画『平民宰相(Disraeli)』が公開される。19世紀初頭の英国政治家ベンジャミン・ディズレーリを演じたのはジョージ・アーリス。日本では3年後の1924(大正13)年7月8日に公開されるも4日後に上映不許可となる。一部場面をカットのうえ24日に上映再開。
米国で映画『平民宰相』が公開されました。現題は『ディズレーリ(Disraeli)』。19世紀初頭の英国政治家ベンジャミン・ディズレーリの生涯を映画化したものです。主役のディズレーリを演じたのはベテラン俳優のジョージ・アーリス。このベンジャミン・ディズレーリは英国では大変尊敬されている人物で、ユダヤ人でありながら英国の保守党で党首に登りつめ、2期にわたって首相をつとめました。
この映画の日本公開は3年後の1924(大正13)年7月8日になりますが、上映開始後に映画の一部分が問題視され、7月12日に上映不許可となるハプニングがありました。当時の映画の検閲は所轄警察署が行っておりました。どの場面が問題視されたのか興味があるところですが、私が調べたところでは史料が見つけられず、よくわかりませんでした。
いずれにしても映画会社側は問題部分をカットし24日に再度上映が認められることとなりました。所轄警察署による映画検閲は,上映の可不可に関して地域にばらつきが出ること、検閲のための費用を負担する映画会社側に不満がたまったことから、翌1925(大正14)には映画会社の要請により、全国統一の内務省「活動写真検閲規則」施行され、全国一律で検閲が行われることとなりました。
なお第二次世界大戦後は、戦前の国家による過度な検閲への反省から、映画製作者の連合会が独自の倫理規定を定めて、業界の自主的運営による審査を行うようにました。現在は一般財団法人「映画倫理機構」が、映画界の自主的な自立機関として、第三者の倫理員会をもうけて、言論・表現の自由と、社会への影響のバランスを考慮しながら、公開前に映画を審査しています。
なおジョージ・アーリスの生涯とキャリアに関しておそらく最も知識のある人物であるロバート・フェルズが、アーリスの1921年の映画 『ディズレーリ』の映画化の経緯をまとめています。
Robert M. Fells『The 1921 "Lost" DISRAELI: A Photo Reconstruction of the George Arliss Silent Film』(2013)