【小説】あったらイイナを具現化!モノづくりについて 僕たち若手が語ってみた。vol.07
1日目:容器の歴史について Part.4
『金属〈缶詰〉容器の歴史』について
(金子)
次は『金属〈缶詰〉容器の歴史』について
話します。
ナポレオンと縁が深い缶詰の歴史について話します。今では、色んなものに使われている缶詰は、いつ頃に作られたと思う?
(徳馬)
明治時代ぐらいかな。
130年くらい前じゃない?
(金子)
いや!缶詰の歴史はとても古く、初めて缶詰が作られたのは今から約200年前のことなんだよ。最初に考案されたのは瓶詰めであり、缶詰と同じ原理による製造法だったらしい。
(須崎)
写真が出ているけど、
ナポレオンが関係しているの?
(金子)
そうなんだ。19世紀初頭ナポレオンは、たびたび軍を率いて外国遠征に出ていたが、常に兵士たちの食料確保に悩まされていた。そこで総裁政府を通して、食料を長期保存する方法を公募。その時に採用されたのが1804年にフランス人、ニコラ・アペールが考案した、瓶詰めによる食品保存法だったんだ。
(宮地)
どんな物だったの?
(金子)
瓶の中に調理済みの食品を詰めて、瓶ごと加熱殺菌した後に蓋を閉めるというアペールの方法は、ナポレオンにより絶賛されて多額の賞金を与えられたそうだよ。
(宮地)
保存食だね。
(金子)
当時の主な食品保存法は塩漬けや酢漬けなどであり、長期保存するのは難しかったらしい。瓶詰め保存法が考案されたことで食品を美味しく保存でき、しかも軍の食料確保が確実なものとなり、おかげで軍の士気も上がったと伝えられているんだよ。
(徳馬)
それはすごいね!
(金子)
6年後の1810年に、イギリスで瓶に変わりブリキ缶で食品保存する「缶詰」が誕生したんだ。その後、アメリカで本格的に缶詰が工場生産されるようになり、1861年の南北戦争の時には、軍の食料用に缶詰の需要が増え、一気に缶詰が広まったと言われているんだ。
(須崎)
ブリキ?缶のこと?
(金子)
幕末の横浜開港の頃、外国人居留地を造る際に煉瓦(レンガ)が使用されていた。日本国内では、煉瓦を製造していなかった為、錫(スズ)をメッキした鉄製の箱に煉瓦を入れて輸入していたらしい。外国人技師が箱に入ったままの煉瓦を“ブリック”(英語で“煉瓦”を意味する)と言ったのを、日本人大工が箱のことを”ブリキ”だと思ったことが語源とされているんだ。
(みんな)勘違い(笑)
(金子)
“ブリキ”とは缶の材料で、錫を被覆させた低炭素鋼板です。要するに錫をメッキした鉄板のこと。耐食性があり、丈夫で外観が美しく、溶接もできるため様々な用途に用いられているんだよ。
(須崎)
ブリキ缶は、いつ頃できたの?
(金子)
ブリキ缶は、缶詰法の発見とともに登場してきた。さっきも言った通り1804年、フランス人ニコラ・アペールがガラス瓶とコルク栓を使用した食物保存法を完成させた。これが缶詰の原理の誕生だと言われているんだ。
その後、1810年にイギリス人ピーター・デュランがブリキ缶などの容器について特許を得て、缶詰が誕生したんだよ。
そして、この特許を使用して1812年にイギリスで世界最初の缶詰工場(※参考資料)が設立された。製缶技術としては、1847年の打抜缶の発明、1877年の缶胴接合の機械考案などによって製缶作業の機械化、量産化が進み出したらしい。
※【参考資料】
世界初の缶詰工場
(ハンダ付けで缶詰生産)手作業で、はんだ付けして蓋を閉めていた→1日に60~70缶しか生産不可。
(ハンマーで開ける缶詰)
時の缶詰は、ブリキ板が厚いため 「のみとハンマーで開けてください 」 と書かれていたそうです。
しかし、1860年代にはブリキが発明され、これにより簡単に開けれる缶切りが登場するようになった。
(徳馬)
日本の缶詰は、いつ頃から?
(金子)
日本では1871年、松田雅典により初めて缶詰が作られたんだよ。松田は長崎で語学学校に勤めていたけど、そこであるフランス人に出会う。そのフランス人が持ち込んだ牛肉の缶詰は、数ヶ月前に作られたものにもかかわらず美味で腐敗しておらず、松田はすぐに缶詰の素晴らしさに魅了され、彼はフランス人指導のもとに缶詰作りを始め、日本で初めてイワシの油漬け缶詰を完成させた。なぜイワシの油漬けだったかというと、缶の中を油で満たすことで簡単に空気を抜くことができるからだそうだ。
【参考資料】
1877年には、北海道に北海道開拓使石狩缶詰所が作られ、日本で初めての缶詰工場として生産を始めている。その後各地に缶詰工場が作られていき、缶詰生産大国として現在の日本の基礎ができていった。
(宮地)
日本でも古くから缶が作られていたんだね。
(金子)
1860年代初めに京都の竜文堂安之助が、当時輸入した品物の容器であるブリキ缶を利用して茶缶などを製造したのが日本におけるブリキ缶製造の起源であろうと考えられているとのこと。
(須崎)
その後は、色んなところで作られるようになったのかな?
(金子)
その後、各地でブリキ缶が作られたようなっていったが、いずれも手作業で少量の製品を作っていたらしい。
缶詰製造業の発展と共に製缶技術も発展し、作業の機械化が進んでいったんだ。特に戦後1950年以降は、食品缶、菓子缶、茶缶、塗料缶などの需要が増加して製缶業が発展していったんだ。
(徳馬)
缶は常温で長持ち、缶は保存食というイメージ!
(金子)
食品や飲料を缶に入れ、蓋をして密封するので、外から菌が入れない。中の食品や飲料は、加熱殺菌やレトルト(加熱加圧)殺菌などにより菌がいなくなるから、腐らず、常温でも長持ちするんだよ。
(宮地)
缶は栄養を保つ。
美味しさは、長持ちさせている?
(金子)
缶は、酸素も光も通さないので、保存料を使う必要がない。そして栄養が逃げにくく風味も残りやすいので、美味しい状態を保てるんだ。
(須崎)
アルミ缶の凄さが分かるね。
缶はリサイクル出来るってイメージが強い。
(金子)
アルミ缶のリサイクル率は、90%以上(2015年度)、そのうち7割位がアルミ缶に再利用されている。原料のボーキサイトからアルミ缶を作るには、たくさんの電気を使う。アルミ缶をリサイクルすれば、元の3%の電気で缶を作ることができ、アルミ缶1缶で液晶テレビが2~3時間見られる電気が節約できるんだよ。
(徳馬)
アルミ缶はすごいけど、スチール缶は?
(金子)
スチール缶のリサイクル率は、93%くらい(2015年度)で、資源ごみでトップクラスのリサイクル率。原料が鉄だから、スチール缶をはじめ、自動車や家電、ビルの鉄骨など、色々な物に何度でも生まれかわる。日本では1年間に約45万tのスチール缶がリサイクルされてる。
(宮地)
最近多い飲料の缶はどうなの?
(金子)
缶飲料は1958年にビール、1959年にトマトジュース、1960年には炭酸飲料が相次いで発売され、1963年にコカコーラが登場してから本格的な飲料缶の時代に入ったんだ。
現在、スチール飲料缶の主力である「缶コーヒー」が登場したのは、1969年から。2016年に作られた飲料用スチール缶は、約68億缶で、国民一人が1年に54缶飲んだ計算になるそうだよ。
(金子)
最後にまとめるね!
・缶詰の歴史はとても長く、200年ほど前
から存在する食品保存法である。
・最初は、瓶詰めによる食品保存法が発明
され、後にブリキ缶を使用する方法に
転用された。
・日本では1871年に初めてイワシの油漬け
缶詰が作られた。
・その後工場で本格的に生産されるように
なり、現在の缶詰生産大国としての基礎
が作られた。
・缶詰工場は原料の生産・調達地近くに
立地している。
・機械化が進んだこともあり、原料の鮮度
が落ちないうちに素早く調理・加工され
、質の高い缶詰が作られている。
・現在では自販機の普及もあり、飲料缶も
数多く利用されている。
・キャップができるボトル缶なども生まれ
、これからまだまだ付加価値を付与する
開発が進み、新技術により更に便利な
世の中になっていってほしいと願う。
(宮地)
金子、お疲れ!もうお腹いっぱいだよ。
今日は、これで終えて飲もう!また明日。
(徳馬)
明日は2回目(2日目)として、宮地の家に
午後一で集合しよう。
★次回:2日目容器の素材(材料)について
ガラス容器の素材(材料) vol.08へつづく。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?