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【キングオブコント】なぜ準決勝でウケて決勝でウケないことがあるのか?〜東京03のコントで解説〜


東京03のコントの魅力は?と聞かれれば、「演技力」と答える。
そりゃそうでしょ、3文字で済ますなよ、と思われてしまうかもしれないが、DVD化されているものは全部コントを見た上で、
この結論に至っている。

1.ウケるコントは世界観と視点を会場に作り出す
2.世界観を作り出すには、演技力や表現力が必要
3.具体的なコントでいうと…?
4.【結論】この世界観作りと視点作りを、同じ台本でもミスることがある

1.ウケるコントは世界観を会場に作り出す

10/2のキングオブコント決勝に向け、
2012年以降の作品がTverで公開されている。
2015年から審査方法が変わっているが、やはり優勝作品は圧倒的に面白い。
もちろん、台本・構成自体が面白いことは大前提だが、
優勝作品は、空気を作るのがうまい。
すなわち、コント上で設定した世界観を作り出せていると思うのだ。
そして、この世界を、誰視点で見たら一番面白いのか?
を、ちゃんと冒頭で教えてくれている。

2.世界観を作り出すには、演技力や表現力が必要

この世界観を作り出すために必要なのが、
『演技力』や『表現力』だと思っている。

(無論、ネタが面白くなかったり、構成が破綻していれば、
そもそもこの世界観は成立しない。
今回は、それが成り立っていることが前提に、いかに面白くできるか、
キングオブコントで優勝レベルまで持っていけるかを考える)

2009年の優勝者として知られる東京03の場合、
『演技力』で世界観と視点を作り出していると思うのだが、具体的なコントで説明してみる。
https://www.youtube.com/watch?v=cNS4d5T6anA

画像1

(チマチマ画像付きで解説していきますが、読むよりコント見た方が速いので、ぜひ見てください)

00:00〜1:00
飯塚さん(右)の離婚報告から場面が始まる
3人は学生時代からの友人で、角田さん(左)も実はバツイチ
豊本さん(中央)だけ彼女がいる状態で、サイドの二人から羨ましがられる

画像2

この時点では、視聴者は、誰が主役なのだかわからない
コントタイトルが「めんどくさい友人」になっているのだが、
前述の通り、3人とも友人関係なので、誰が「めんどくさい」のかわからないのだ。

1:00〜3:00
しかし、豊本さんも難を抱えていた
実は彼女と連絡が取れていなかった

画像3

この『聞く演技』すごくないか??
角田さんは、じっくり豊本さんの目を見ながら悩みを聞き、
飯塚さんは、あまりの状況の深刻さに、目を逸らしながら聞いている。
誰もが体験したことある、仲良い友人の深刻な悩み相談を聞いている場面
この二人の演技がうますぎて、
だんだん視聴者も豊本さんの悩み相談を聞いている気になってくる。
豊本さんの悩み相談が、ただの設定の説明ではなく、
視聴者の視点の移動のきっかけになっている。

(画像では表せないが、このあとの豊本さんへ体を向け直す飯塚さんの間の取り方もすごい)

視聴者の視点が、だんだんこの二人に移ることによって、『友人』が豊本さんだけに断定されていくる。つまり、今回「めんどくさい」ことをするのは豊本さんと、視聴者は無意識に理解してくる。


3:00〜3:20
落ち込む豊本さんに、「別れよ」と勧める

画像4

3:20〜
「じゃあ、今別れよってメールをする!」と急に立つ豊本さん
(え…?今?)と戸惑う2人

画像5

この戸惑う顔から、程よい間が開いた後の、角田さんの
「辞めな〜」
ここで笑わせられるのが、東京03の実力だと思う。
急に立つ豊本さんの明らかに、「めんどくさい感」
「めんどくさい流れになってしまった…」と勘付く二人。
この二人の気持ちを視聴者が理解できるのは、紛れもなく、
視点が二人2人サイドになっているからに他ならない。

この後、豊本さんのめんどくささは増してくる。
まるで脅しのように、二人のアドバイスを鵜呑みにしてくる。
会場全体が、「めんどくせ〜こいつ」と思っているので
この暴走も違和感なく笑うことができる。

4.おさらい
このコントで作り出された世界観と視点は
「友人の言うことを鵜呑みにする奴をめんどくさがる場面」を
「めんどくさがる友人」という視点で見ていることになる。

東京03のような、あるあるコントは、
世界観自体は面白くない。
(バイキングの「なんて日だ!」のコントは、「娘が性転換して帰ってきた」と言う世界観自体が非日常のため、どちらかの目線になることもなく、
その世界に入った時点で、もう笑ってしまう
ピースのハンサム男爵なんて、出てきただけで面白い)
でも、東京03のコントは、世界に入ったところで、視点がわからなくなると、視聴者がつまらない世界で迷子になって終わってしまうのだ。
だから、目線を間違うと、一気に面白くなくなる。

準決勝ではあれだけウケていたのに、決勝ではウケない現象が生じる問題は、結局この世界観と視点誘導ミスによるものだと考えている。

ほとんどのコンビが同じ台本で決勝を迎えてるのにも関わらず、
準決勝と決勝の受け方が逆転したりするのは
・本人たちの緊張による演技のミス
・ネタ順(こればっかりは仕方ないが、2015年は明らかに天使だの悪魔だのが続きすぎた。あと、2015,2017のアキナのネタ順は悪すぎる笑)
などがあるのかもしれない。無論、劇場とスタジオ、という会場の問題もある。

4分は、コントに取っては短い。
伏線をはりすぎると笑いどころが少なくなるし、
はらないと視聴者を置いていくことになる。
2017年のGAGの「高齢者の三角関係」に対する三村さんのコメントが、
まさにそれだと思う。
「本当にこんなことあるのかな?って思いながら見ていた」
これは、どの目線で見ていいのかわからなかった、ということなんだと思う。

笑いどころ以外にも、いろんな秘訣が隠されている。
コントって奥深い!


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