「デジタル生存競争」 ダグラス・ラシュコフ 著 ボイジャー
著者の考えによれば、少数の富裕層やデジタルエリートたちは、世界の富のほとんどを所有しています。彼のマインドセットは、指数関数的な成長を信じ、壁にぶつかったらそれを乗り越える技術が生まれると信じているように見えます。
AIがいろいろな問題を解決してくれるかもしれません。でも、AIには莫大な電力が必要なのです。
しかし、例えば、「電力の大部分を再生可能エネルギーによって賄うためには、風力発電や太陽光発電を今の20倍に増やす必要がある(p.318)」のですが、「地球上に存在するレアアース金属は、それだけの発電システムを設置して、さらに数十年ごとに交換するのに十分な量ではない(p.318)」のです。
では、原発をたくさんつくればいいのかというと、反対する人も多いでしょう。じゃあ、メルトダウンの心配のない核融合炉を開発すればいいじゃないかと主張する人もいるかもしれません。でも、それもいつ実現するかわかりませんし、トリチウムの採取が非常に困難です。
一方、成長には限界がある、あるいは、指数関数的な成長は現実的ではないと言う考えがあります。
著者のダグラス・ラシュコフは、その考えを支持しています。そして、成長に依存しない循環的な経済を構築することを提案しています。
その原理は、
「資源と収益をコミュニティーの中で循環させ、労働者階級が利用できるようにします。相互扶助の力を活用して、コミュニティーメンバー一人ひとりを、それぞれの必要に応じてサポートし、生活の改善を助けます。他の労働者との協同組合として事業を運営することによって、大企業や関心のない投資家からの独立を維持します。(p.414)」
「最も簡単にできるのは、彼らの企業および彼らが推奨する生活様式を支持するのをやめることです。行動を控えて、消費を少なくして、移動を少なくすることができます。(p.417)」
「地元の物を買って、相互扶助に参加し、協同組合を支援しましょう。独占禁止法を使って、反競争的な巨大企業を解体しましょう。環境規制を使って、廃棄物を減らしましょう。労働組合を使って、非正規労働者の権利を拡大しましょう。税制を改革して、財産によるキャピタルゲイン(資本利得)を得ている人々に、収入を得るために体を動かして働いている人々よりも税金を多く払うようにさせましょう。(p.417)」
ん〜、言うはやすし・・・のような気もします。成長には限界があるということは同感ですが、別な方法もいっぱいあるでしょう。
世界の人口も今世紀で頭打ちになるという予測もあります。それに伴い、「安全に幸せに縮む」方法が、これから色々と提案されてくるだろうと考えています。そのキーワードは、「利他」だと思います。
超富裕層が宇宙旅行に行ったりしていますが、これは、テクノロジーの勝利で人類が自由に宇宙に行けるような夢の世界が実現したのでしょうか?それとも世界中の人たち80億人が働いた成果をかき集めて、ごく少数の人たちを宇宙に行かせることができたということなのでしょうか?