「エロティック・キャピタル」 キャサリン・ハキム 著 共同通信社
感想を書くのが難しい本です。評価が分かれる本でしょう。
人の個人資産としては、エコノミック・キャピタル(経済的資産)、ヒューマン・キャピタル(人的資産)、ソーシャル・キャピタル(経済的・社会的価値)の3つがこれまで議論されてきました。
社会学者である著者は、それに加え、美しさ、性的魅力、自己演出力、社交スキルを合わせた個人の資産であるエロティック・キャピタルを提案しています(p.11)。
著者は、特に女性にとってエロティック・キャピタルが労働市場や社会的地位の向上において強力なツールであると主張しています。彼女はまた、現代社会において、エロティック・キャピタルが従来の資本と同等に重要視されるべきであると論じており、女性が自らの魅力を最大限に活用することが正当であり、むしろ奨励されるべきであると述べています。この辺りの論理展開については、批判もあるようです。
ハキムの理論が女性に対して過度に外見やセクシュアリティに依存することを推奨しているとして批判されています。
面白いと思ったのは、男性の方が性的欲求が強く、女性はそこまでではないということです。だとすれば、女性が例えばエロティック・キャピタルを利用した「ツンデレ」作戦をとると、男性よりも女性が優位に立てるということになります。
そうは言っても、性産業などをめぐる問題がたくさんあります。女性がエロティック・キャピタルを使用したら、男性はエコノミック・キャピタル(経済的資産)とソーシャル・キャピタル(経済的・社会的価値)を総動員して女性をコントロールしようとするかもしれません。「俺の言うことを聞かないと、この世界で生きていけなくなるぞ」的な脅しです。でもそうした脅しも男女平等の世界が広がってくれば、通用しなくなるでしょう。
僕らは、ハキムが投げかけた問いかけを考えていくのがいいかなと思います。ハキム教になるのも、アンチハキム教になるのいかがなものかなと思います。
あと、帯でオスカー・ワイルドの言葉を載せるのはどうかな?誤解を招くかも。
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