「お探し物は図書室まで」 青山美智子 著 ポプラ文庫
どこかでだれかと知らないうちに繋がっているかもしれないと感じさせる短編集です。
それぞれの短編の主人公たちの人生は思い通りになっていません。東京に出てファッション業界で働いていると地元の友達に言っていながら、実はスーパーの婦人服売り場で働いている藤木朋香、出産を機に編集の担当から外され資料室に異動することになった崎谷夏美、真面目に家具メーカーの経理として働いているけれど社長の姪の部下の女性に当たり前の指導をしたらハラスメントだと訴えられてしまった浦瀬諒などなど・・・、みんな人生につまづいています。
彼らは、ちょっとしたきっかけで、希望を見出していきます。人生に希望をもたらすのは、誰かとの「繋がり」を発見したときの喜びなのかもしれないなと思いました。
そして、それは、言葉になる前の微細な感覚の世界に身を委ねているときに、ふと気づくものなのかもしれません。
本は言葉による表現でできているのですが、その言葉たちのどれかが、微細な感覚の世界の入口なり得るのかもしれないですね。
この本の全ての短編に登場する図書室司書小町さゆりが言うように、「そこに書かれた幾ばくかの言葉を、読んだ人が自分自身に紐づけてその人だけの何かを得るのです(p.265 )」ということなのでしょう。