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「教養としてのインテリジェンス」 小谷賢 著 日経ビジネス人文庫
インテリジェンスとは、国家の外交・安全保障政策に寄与するために情報を収集・分析・評価する組織です。有名なのは、イギリスのMI6、アメリカのCIA、イスラエルのモサド、旧ソ連のKGBなどです。
情報部門の予算規模は、軍事予算全体の3〜10%ほどで、かなり大きな額になります。
主な情報収集の手段としては、公開情報(Open Source Intelligence、「オシント」)、スパイなどの人的情報収集(Human Intelligence、「ヒュミント」)、通信傍受情報(Signals Intelligence、「シギント」)、地理空間情報(Geospatial Intelligence、「ジオイント」)などがありますあります。
インテリジェンスについて最初に書かれた書物は、紀元前500年前の「孫子の兵法」です。当時の戦争は占いによって戦略が立てられるものでしたが、孫子の兵法を書いたとされる孫武は、占いに頼らず情報の有効活用について記しています。
ガイウス・ユリウス・カエサル(紀元前100~同44)の時代も、作戦は占いによって立てられるのが普通でしたが、カエサルは占いにはたよらず情報から判断しました。さらに、「シーザー(カエサル)暗号」と呼ばれる暗号も開発しました。
孫武の頃から現代に至るまで、情報は戦いの重要な要素で、情報を軽視したものには敗北が待っています。
情報活動で陥りやすいのは、英語表現で 「部屋の中の象」(the elephant in the room)と表される状況で、「誰も口には出さないが、皆どのような結論を導かなければならないかは分かっている」というもので、日本語の「忖度」の意味に近い(p.218)と言えます。要は、上司にウケの良い作戦ばかり提案することですね。インパール作戦などは失敗するのが見えている作戦だったのですが、まかり通ってしまい、膨大な数の犠牲者を出しました。そもそも、日米開戦も「部屋の中の象」によるものでしょう。
イタズラに勇ましい作戦を、紀元前400年ごろの孟子は、「匹夫の勇」と言いました。匹夫とは「いやしい男、とるに足らない男」というもので、見せかけだけのハッタリの勇気のことです。「部屋の中の象」現象が起こると、「匹夫の勇」が幅を利かすようになるのです。
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